【17-08】イノベーティブな国立研究機関トップ25に日本4、中国1機関
2017年 4月 5日 小岩井忠道(中国総合研究交流センター)
国際通信社ロイターは日本時間9日、イノベーションをリードする世界の国立研究機関「Top 25 グローバル・イノベーター:国立研究機関」を発表した。日本から4位の科学技術振興機構(JST)をはじめ4機関、韓国からKAIST(Korea Institute of Science & Technology、6位)、シンガポールからシンガポール科学技術研究庁(10位)、中国から中国科学院(11位)とアジアから7機関が入った。
JST以外の日本の国立研究機関は、産業技術総合研究所(5位)、物質・材料研究機構(12位)、理化学研究所(13位)となっている。
Top 25 グローバル・イノベーター:国立研究機関(日本の機関を含む25機関)
(クラリベイト・アナリティクス社発表資料から)
選出法は、クラリベイト・アナリティクス社の保有する2009~2016年の特許データを基に、「特許数」「成功率」「グローバル性」「引用数」「1特許当たりの平均引用数」「引用率」と、同じく学術論文データを基に「論文数」「特許からの引用平均回数」「企業の発表論文からの平均被引用回数」「企業との共著論文数の割合」を合わせた計10項目について評価した。
研究、教育、特許などに関わるさまざまなデータを分析して大学や企業を順位付けする種々の国際ランキングが毎年、公表されている。科学と技術の発展にどれだけ貢献したかで国立研究機関を順位付けした「Top 25 グローバル・イノベーター:国立研究機関」について、クラリベイト・アナリティクスは、機関から発表された論文が企業とどのように関わりを持っているかを重視しているのが特徴と言っている。
同ランキングが公表されるのは、昨年に続き今回が2回目。1位から4位までの顔ぶれは昨年と変わらないが、4位だった米国保健福祉省(今回の名称はHealth & Human Services Laboratories)が1位となった結果、3位だったJSTを含む3機関が一つずつ順位を下げている。米国保健福祉省は傘下に国立衛生研究所(NIH)など大きな研究所を持つ。
棚橋佳子クラリベイト・アナリティクス取締役から
トロフィーを授与される濵口道成JST理事長(左、JST東京本部で)
5日、クラリベイト・アナリティクスの担当役員からトロフィーを授与されたJSTの濵口道成理事長は、「日本の研究力はこの10年でかなり低下しているが、特許中心の分析ではまだまだ活力があるという評価は心強い」と感想を述べた。
同時に中国科学院だけしか入らなかった中国が近年、特許に関しても質量共に目覚ましい伸びを示しているのに対し、むしろ日本の特許制度が国際競争力を維持していくためにふさわしい制度に対応できていない、と指摘して、危機感を示した。
クラリベイト・アナリティクスは、ロイターのグループ企業であるトムソン・ロイターのIP&Science事業部が、昨年、分社化して新発足した。
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