【17-12】比類ないネットワーク持つ外国専門人材の窓口機関=改革開放後は人材交流にも力―中国外国専家局
2017年 5月 9日 中国総合研究交流センター編集部
中国国務院人力資源・社会保障部に属する国家機関である「国家外国専家局」(State Administration of Foreign Experts Affairs =SAFEA)の前身は建国直後に発足し、国内に不足している科学技術などの専門的な知識・能力について外国人専門家から協力を受けるための機関として長く活動してきた。毛沢東、周恩来、鄧小平ら党の歴代の最高指導層は国外からの専門知識・学識の導入を重視し、自ら外国人専門家らと膝を突き合わせて話をしたとされる。
この伝統を受け継ぎ1980年代には毎年春節(旧正月)前夜に党と国の指導者が外国人専門家とその親族を招き、新春の挨拶と祝辞を述べるとともに感謝の気持ちを表わす「友誼賞」授賞式に招待するなど、指導部が身をもって同局の政策に対する支持を示してきた。91年、国家外国専家局(以下、外専局)として正式発足し組織的な対応を強化することとなった。
「友誼賞」は外国人専門家に贈る最高の栄誉とされる。1950年代、周恩来首相・陳毅外相の時代に特に貢献の著しかった外国人に感謝状を贈りその労をねぎらった。その例にならって外専局発足の91年に表彰を再開、2016年までに70カ国・地域の外国人専門家1499人が受賞した。61周年に当たる2015年、訪中外国人専門家の人数は延べ62万人を突破(外専局2016年年報)。外専局は広い分野で国際人材交流および政府間メカニズムと協力関係の構築を積極推進し、世界でも例をみないネットワークを作り上げている。
外専局は教科文衛司、経済技術専家司、出国培訓管理司の3司を中心に事業展開しており、付属組織として 1)日本を含めた海外事務所を持つ「中国国際人材交流協会」、2)「中国国際人材交流基金会」、3)「専家局研修センター」―がある。さらに中国国内では各地方政府に下部機関である地方外専局があり、友誼賞の選考に向けた外国人専門家の推薦など各地における実務を分担している。
外専局の組織図(外専局ホームページより転載=2017年4月28日現在)
日本との関係では、友誼賞を受賞した歴代の日本人専門家の中で「63回も訪中して水稲の栽培技術を伝えた」とされる農業専門家・原正市氏と1980年代に内蒙古の沙漠への植樹事業を開始し97歳で亡くなるまで継続した農学博士・遠山正瑛氏が特に中国国内で知られており、ネットの百科事典「百度百科」にもその業績が大きく紹介されている。
原正市氏(「百度百科」)
http://baike.baidu.com/item/%E5%8E%9F%E6%AD%A3%E5%B8%82
遠山正瑛氏(「百度百科」)
http://baike.baidu.com/item/%E8%BF%9C%E5%B1%B1%E6%AD%A3%E7%91%9B
国際交流・協力関係をさらに強化へ
一方、中国の改革開放政策が始まってからは伝統的な海外人材の導入とともに、欧米や香港などへの自国専門家派遣を通じた国際的な人材交流・協力にも力を入れてきた。2015年の中国からの海外研修派遣数は3万1000人、うち55%が専門技術要員だった。主な派遣先は米国(29.8%)、ドイツ(15.72%)、英国(11.09%)。派遣分野別では専門技術関係(54.98%)が半分以上と圧倒的に多く、党・政府関係(28.52%)、企業管理関係(8.92%)と続く。
中国外専局の2016年年報によると、外専局は60カ国・地域以上、300以上の組織(政府機関や国際組織、大学、民間団体)と交流・協力関係を結び、「政府間の協力が日増しに強化されている」。
国別では欧米各国との外国専門家組織との協力をさらに強化するほか、「日本の民間科学技術、人材組織との交流業務をさらに整える」としているが、日本との提携はまだ限られている。上記のうち「経済・技術」分野を国別でみると、アメリカの13機関が群を抜いて多いが、日本はカナダ、フランス、ドイツなどとともに同年報の時点では2機関が協力関係を締結したにとどまっている。
国際人材交流大会を大々的に開催=ハイレベル専門家対象の「千人計画」約400人に
中国政府が2011年に発足させた「千人計画」ハイレベル外国人専門家プロジェクトにはこれまで累計400人近くが選ばれ、出入国、滞在、医療、保険、住宅など各方面で優遇を受けている。日本メディアによる報道では、「中国が外国人を選別」とネガティブな印象で紹介されたが、中国側の説明をそのまま読むと、高度な専門性を持つ外国人人材にビザ手続きの簡素化など優遇策を提供するとの意図が正面に打ち出されている。
「千人計画」に選出された専門家の活動エリアは北京72人(18.9%)、浙江省35人(9.2%)、上海35人(9.2%)などが多く、専門領域別では土木・素材科学(35.4%)、生命科学(15.2%)、情報科学(12.6%)、化学(11.5%)などにおいて多数が活躍している。
「千人計画」とは
正式名称: 海外ハイレベル人材招致「千人計画」
実施部門: 「中央人材工作協調チーム」(中国共産党中央組織部)
開始時期: 2008年
対象:
- 国籍問わず、原則上55歳以下、海外で博士号を取得している者。
- 当選された者は毎年中国での研究活動は6ヶ月以上であること。
- 以下の諸条件のいずれに該当する者:
- 海外の著名な高等教育機関、研究機関において教授またはそれに相当するポストに就いた者
- 国際知名企業と金融機関において上級管理職を経験した経営管理人材及び専門技術人材
- 自主知的財産権をもつ、またはコア技術を把握している;海外での起業経験を持ち、関連産業分野と国際標準を熟知する創業人材
- 中国が至急に必要とするその他のハイレベルイノベーション創業人材
出典:新華網 「海外ハイレベル人材招致"千人計画"」政策応答により作成。
深セン市で内外の1万7800人集め国際人材交流大会
「世界の知力を集め、共同発展を促す」をテーマに2001年に南京市でスタートした「中国国際人材交流大会」 は2007年以降広東省深セン市に会場を移し、17年までに15回開催された。2017年は4月15、16の両日に海外の72国・地域の4600以上の専門組織、研修機構、企業などから専門家や幹部ら約8500人を含む内外の1万7800人以上が参加、馬凱国務院元副総理(党中央政治局委員)が出席して基調講演を行った。入場者数は延べ8万3000人に上る巨大な大会に成長している。