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【17-14】日立造船の下水処理システム広東省で実証試験

2017年 6月12日  小岩井忠道(中国総合研究交流センター)

 日立造船は8日、中国広東省内の下水処理場で同社の汚水処理システムの実証試験を行う、と発表した。

 実証試験は、広東省科学技術庁と関西・アジア環境・省エネビジネス交流推進フォーラムが実施するモデル研究事業として採択されたことによる。同社の高速繊維ろ過装置「まりも」を使った汚水処理設備を広東省内の下水処理場に設置し、2019年2月まで継続的な運転を行いさまざまなデータを得る。広東省側から、広州擎天材料科技有限公司と中国電器科学研究院有限公司が実証試験に加わる。実証試験全体の費用はまだ確定していないが、広東省から100万元(1元は約16円)の補助金が出る。

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高速繊維ろ過装置「まりも」(イメージ図)

(日立造船提供)

 下水処理など水環境の向上は、中国政府の重要政策の一つ。下水処理水の水質基準値の厳格化、地方都市の施設整備など意欲的な取り組みが進んでいる。一方、海外事業の比率を将来50%以上にする目標を掲げる日立造船にとっても、水処理事業の市場拡大は重要課題。今回、使用される高速繊維ろ過装置「まりも」の処理能力は、通常のろ過装置の3~5倍に相当する1日1,000メートル。同社は、今回の実証試験で得られるデータなどを活用し、広東省だけでなく中国国内、さらには東南アジアに汚水処理技術の普及・拡大を図る、としている。

 広東省と関西・アジア環境・省エネビジネス交流推進フォーラムの協力プロジェクトは、2016年3月に広東省広州市で近畿経済産業局と広東省科学技術庁が締結した政府間協力文書(MOU)に基づく。関西・アジア環境・省エネビジネス交流推進フォーラムは、関西地域とアジア地域との環境・省エネ産業のビジネス交流などを目指し2008年に発足した関西企業の連合組織。同フォーラムの会員企業を軸に広東省と環境・省エネ分野に焦点を当てた取り組みを進める枠組みができた。

 協力案件については、日中双方の専門家による検討委員会が審査し、広東省の環境問題を解決するプロジェクトに対して、中国側から1件当たり50万~100万元の補助金が出る仕組みができている。