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【17-21】上海の再生医学研究棟を省エネルギー化 NEDOが実証事業開始

2017年 7月25日  小岩井忠道(中国総合研究交流センター)

 上海市に完成したばかりの「幹細胞再生医学研究棟」に日本の省エネルギー技術を設計段階から導入し、高度な省エネビルとする実証事業を新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が始めた。20日、現 地で竣工式が行われた。実証事業には安井建築設計事務所、パシフィックコンサルタンツ、三機工業の日本企業3社が協力する。

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上海高等研究院「幹細胞再生医学研究棟」(NEDO提供)

 「幹細胞再生医学研究棟」は、中国科学院と上海市が共同で設立した上海高等研究院が上海・浦東地区に建設した。動物飼育室などの空調設備に、「24時間連続運転」や「全外気運転」な ど研究施設特有の機能が必要になるため、一般事務所ビルよりもエネルギー消費量が多くなる。実証事業では、省エネルギー・高効率化技術を実装した設備機器を総合的に管理運用することで、空調・照 明エネルギーを約40%削減することを目指す。

 エネルギー消費量が世界一の中国は、製造分野だけでなくサービス産業などの建築物に対する省エネ化の要請が高まっている。NEDOは、来年3月までに得られる運用データを蓄積し、技 術の有効性を検証する予定。さらに「幹細胞再生医学研究棟」を省エネルギービルのモデルケースとし、中 国各地で計画されているスマートシティー開発計画などに中国科学院と共同で参画していくことを目指すとしている。

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竣工式に参加した日中関係者たち(NEDO提供)

 20日に行われた竣工式には、中国側から邱華盛 元中国科学院国際合作局副局長、瞿栄輝 中国科学院上海分院副院長、黄偉光 上海高等研究院副院長らが参加した。土屋宗彦NEDO理事は、「 今回の実証事業で得られるデータを活用し、今後も日中の協力関係の下、高効率な省エネルギービルが多数普及していくことを期待する」とあいさつした。

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竣工式であいさつする土屋宗彦NEDO理事(NEDO提供)

 事業に協力する日本企業のうち、安井建築設計事務所は「構造杭を利用した地中熱の活用」と「国際通信規格IEEE1888を用いた次世代ビルエネルギー管理システム(Building Energy Management System)」を担当する。パシフィックコンサルタンツは、「人の動きを感知するセンサーと連動した高効率の発光ダイオード(LED)照明の無線調光制御」と、「 コンセントを個別に制御して待機電力を削減するスマートタップ」を担う。三機工業の役割は、「高効率インバーターターボ冷凍機と変流量システムによる冷房エネルギーの削減」と、「 排熱を回収して加熱熱源として利用するヒートポンプ式温水機の導入」などとなっている。

 NEDOは、これまで日本の省エネ・創エネ技術を活用し、省エネビルを実現する実証事業をフランスのリヨンや米国ニューヨークなど世界各地で実施している。