【17-23】高被引用論文数中国2位 日本は9位に低下
2017年 8月 9日 小岩井忠道(中国総合研究交流センター)
この10年間で中国の論文数が質量ともに向上した一方、日本は質量ともに低落していることが、9日、文部科学省科学技術・学術政策研究所が公表した「科学技術指標2017」であらためて明らかにされた。
同指標には、2003~2005年と2013~2015年のそれぞれ年平均で比較した論文数と注目度の高い論文数の国・地域別順位が載っている。日本は論文数で67,888から64,013に減少し、順 位も米国に次いで2位だったのが、米国、中国、ドイツに次ぐ4位に落ちた。中国は論文数で51,930から、4.2倍の219,608に急増している。順位も4位から2位に上がった。ト ップの米国は221,367から272,233へと着実に増やしているが、中国の急迫ぶりが分かる。
論文数上位10カ国・地域
(科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2017」から)
注目度の高い(他の論文に引用される数が多い)論文についての比較でも、中国の躍進と日本の低落はさらに顕著だ。被引用数がトップ10%に入る論文数では、中 国は2003~2005年の年平均で3,599と米国、英国、ドイツ、日本、フランスに次ぐ6位だった。しかし、2013~2015年の年平均では5.8倍の21,016に増え、順 位も39,011の米国に次いで2位に浮上している。
被引用数トップ10%論文数上位10カ国・地域
(科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2017」から)
これに対し4位だった日本は、4,601から4,242に減少し、順位も米国、中国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、カナダ、オーストラリアに次ぐ9位まで低下した。被引用数トップ10%より、さ らに注目度が高い被引用数トップ1%の論文数で比べるとどうか。中国は283から1,954と6.9倍も増えており、順位も7位から2位に上がった。日本は365から335に減り、順 位も4位から9位に落ちている。
被引用数トップ1%論文数上位10カ国・地域
(科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2017」から)
研究開発費総額でみても、中国の急増ぶりが目立つ。OECD(経済協力開発機構)購買力平価換算値で2015年は41.9兆円と、米国の51.2兆円に次いで多い。日本は17.4兆円で、2 009年に追い越されて以来、中国との差は開く一方となっている。対GDP(国内総生産)比で見ると、日本の0.65%に対し、中国は1.02%とこちらも大きな差がある。
一方、特許出願に着目すると日本の技術レベルの高さがうかがえる。2カ国以上への特許出願数を示す「パテントファミリー」では、1990~1992年の年平均は米国が23,537で1位。日 本は22,051で2位だった。しかし2000~2002年に米国を抜き、2010~2012年にも引き続き1位を維持している。これは、日本から複数国への特許出願が増加したことを示す。2 010~2012年の年平均数64,273は、世界シェアで29.8%を占める。
中国は、2010~2012年の年平均数16,144と日本の3分の1で、順位も日本、米国、ドイツ、韓国に次ぐ5位。しかし「着実にその数を増やしている」と「科学技術指標2017」は指摘している。
関連サイト:
- 科学技術・学術政策研究所「 『科学技術指標2017』及び『科学研究のベンチマーキング2017』の 公表について」
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