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【17-26】2017日中チベット医薬・漢方医薬学術シンポジウムを中国西寧で開催

2017年 9月27日  客観日本編集部

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 科学技術振興機構(略称JST)と青海省科学技術庁が共同企画し、青海省チベット医薬学会が主催した「2017日中チベット医薬・漢方医薬学術シンポジウム」が2017年8月19日から22日にかけて、中国青海省の西寧市で開催された。JST中国総合研究交流センターの伊藤宗太郎副センター長、慶応義塾大学環境情報学部・大学院政策研究科の渡辺賢治教授、金沢大学附属病院漢方医学科の小川恵子教授など日本人専門家13人と、青海大学チベット医学院の李先加院長、チベット医学院の貢却堅賛教授、青海省チベット病院の昂青才旦副院長、青海省チベット病院の南拉卡主任医師など中国人専門家8人がシンポジウムに参加した。

 伊藤副センター長ら日本側の学術交流団は8月19日に青海チベット医薬文化博物館で青海省科学技術庁や金訶チベット医薬集団、青海省チベット医薬学会など各関係当局の責任者と座談会を行った。青海省科学技術庁科学技術支援担当事務室の孫伝範主任は青海省科学技術庁を代表してJSTそして伊藤副センター長らの訪中に心から歓迎の意と感謝の気持ちを表すとともに、近年青海省とJSTとの提携交流について振り返った。また、青海省チベット医薬学会の艾措千会長は金訶チベット医薬集団の各事業及び青海省チベット医薬事業の発展状況を紹介した。

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 座談会終了後には、日本側の代表者たちは博物館チベット医学歴史展示館、天文暦計算館、彩色絵画大観などの展示館を見学した。さらに、青海省チベット医薬研究院多傑拉旦副院長の同行で、青海省チベット医薬研究院を見学した日本側の代表者たちは、その奥深さと神秘さに驚きを露わにした。また、青海省チベット病院の院長補佐万瑪拉旦氏と関係科室の担当者の同行で、青海省チベット病院製剤科や外科、保健センター、外来部を見学し、チベット医学の診断方法に対する初歩的な知識を得た。

 8月20日には学術シンポジウムが青海省チベット病院で開催され、青海大学チベット医学院の李先加院長がシンポジウムの司会者をつとめた。

 慶応義塾大学環境情報学部・大学院政策研究科の渡辺賢治教授は、「高齢化社会の日本における漢方医薬の現状」についてすばらしい発表を行った。渡辺教授は、「社会の高齢化現象はどの国でも直面する不可避な将来の発展トレンドであり、高齢化社会の加速に伴い、認知症は人々の生活及び社会の発展を一層脅かすだろう」と述べ、日本の漢方医学業界における認知症の治療と予防の現状及び高齢化社会への対策を紹介した。

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 金沢大学附属病院漢方医学科の小川恵子教授は日本の伝統医学の歴史及び形成、現段階では西洋医学が主流である医療環境の下における日本漢方医薬の伝承方式及び臨床研究現状、金沢大学医療団体の現状などについて紹介し、交流を行った。同大学医薬衛生研究地域(薬用植物園)の佐々木陽平准教授は日本産の漢方医薬の現状を紹介し、自分が漢方薬を栽培した時の経験と方法をシェアした。金沢大学付属病院の長瀬啓介教授は大学付属病院の全ての処方データを分析した漢方薬エキス剤処方のトレンドについての研究を報告し、大量のデータ対比や研究結論で漢方医薬エキス剤処方の活用トレンドをまとめた。

 東邦大学医学部東洋医学研究室の笛木司特別講師は「合成剤薬典」の「煮散法(漢方薬を粉にし、水を加入し煮る方法)」から生み出した新しい漢方薬の抽出方法を紹介し、大量の対比実験によって新しい「煮散法」は伝統的な薬成分抽出方法より抽出時間が短縮され、手順も簡単で、抽出コストが低く、抽出した有効成分が多いといったメリットがあるとした。

 中国側の貢却堅賛博士は、「チベット医薬国際化の経験シェア」をテーマに流暢な英語で発表を行い、近年チベット医薬の国際交流や提携などの分野において収めた成果と経験について紹介した。

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 青海省チベット病院の南拉卡主任医師は長年にわたり積み重ねた胃病の治療に関する重要な研究結果と経験を紹介し、胃部の腫瘍及び慢性病の治療におけるチベット医薬の効用に大きな自信を示した。副主任の昂智索南医師は「弁証法的に疾病の症状を分析するチベット医」をテーマとして、十五種の症状を例としてチベット医の独特な弁証法的な分析方法を紹介し、参加者から高い評価を受けた。

 青海省チベット医薬研究院の多傑拉旦副院長は「チベット医学の科学研究プラットフォームの構築」をテーマとしてチベット医学の科学研究プラットフォームの構築の背景や構想、目標、その内容及び役割、その管理制度及び運営メカニズムについて全面的に紹介した。青海大学チベット医学院の華欠桑多博士は青海大学チベット医学院を例としてチベット医学教育システムの発展、現状及びこれからの発展方向について紹介した。

 シンポジウムでは、代表たちが積極的に発言したり、踏み込んだ交流をしたり、意見交換を行い、疑問や踏み込んだ内容に積極的に質問して、非常に盛り上がりを見せた。

 シンポジウムの2日目、日中両国の代表たちは引き続きチベット医薬と漢方医学の各分野について深く交流し、様々な討論を展開した。

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 日本の東邦大学医学部東洋医学研究室の田中耕一郎講師は日本における漢方医学の教育現状を紹介。Moxafricaの伊田屋理事は艾灸で肺結核及びそれに関する病気を治療する成果を話し、簡単、便利、安いという特徴がある艾灸は肺結核などの病気の治療に非常に効果的であり、しかも副作用がないので、普及と応用の見通しが明るいとした。

 青海省チベット医薬学会の昂青才旦事務長は青海省チベット医薬学会を例として、チベット医薬学術の発展初期、現状、今後の計画、国際交流及び提携、海外交流及び見学などの面から全面的にチベット医薬学術プラットフォームの構築と学術の発展状況を紹介した。斗本加副事務長は『曼唐詳解』を日本語に訳した際の経験や出版までの流れ、本の学術レベルについて詳しく説明した。

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 学術報告会終了後、伊藤副センター長は日本側学術交流団を代表して挨拶を行った。伊藤副センター長は、「現代医学の発展と研究がボトルネックに遭遇した時、チベット医薬あるいは漢方医薬はその優位性と価値を示しており、チベット医薬などの伝統的な医薬の優位性を利用して、共同で現代医学発展の難題を解決すべきだ。例えば、高齢化社会などの典型的な問題を突破口としてもっと深い交流や提携を行うと同時に、整備された提携メカニズムを構築し、有効な提携方式を定め、チベット医薬事業の普及と応用のために共に努力し、よりよい健康サービスを提供しよう」と述べた。会議に出席した日本側の専門家たちも今回の得難い機会に感謝の意を表し、「JSTが組織したこのような活動は、今後日本におけるチベット医薬の普及に基礎を築き上げた」と口々に述べた。

 また何よりも忘れてならないのが、日中双方が互いに交換留学生の受け入れに合意した点だ。東邦大学は中国から技術者短期研修5人を受け入れ、慶応義塾大学は技術者2人をJSTの「さくらサイエンスプラン」の短期研修として受け入れることを明らかにした。また日本で『曼唐詳解』日本語版の発表記者会見を行うことでも合意に達した。そのほかに文化やケア、健康などの分野での提携にも非常に強い興味と意向を示した。

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 日中の代表団はそれぞれ、チベット医薬及び漢方医学というテーマについて一日半の学術交流や討論、見学を通じて医学分野の学術交流や提携の意向をさらに強め、両国の友好を促進し、日中伝統医学文化の伝播と発展を効果的に推進し、将来的に多分野における交流や提携の基礎をかためた。

写真/青海省チベット医薬学会

※本稿は「2017中日藏医药·汉方医药学术研讨会在西宁召开」(『客観日本』2017年09月12日)を日本語に翻訳した上でうえ転載したものである。
http://www.keguanjp.com/kgjp_jiaoliu/kgjp_jl_keji/pt20170912104537.html