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【18-01】広東省のアルミ、紡績工場で日中協力の省エネ実証事業

2018年1月4日 小岩井忠道(中国総合研究交流センター)

 エネルギーを大量に使う中国広東省のアルミ製品工場と紡績工場で、生産効率を高めながら省エネを実現する日中協力の実証試験がスタートする。

 昨年12月24日、東京で開催された「第11回日中省エネルギー・環境総合フォーラム」で、中国国家発展改革委員会の張勇副主任と新エネルギー・産 業技術総合開発機構(NEDO)の古川一夫理事長が人的交流、技術交流など具体的な協力の枠組みを定めた覚書に調印した。

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張勇 中国国家発展改革委員会副主任と古川一夫NEDO理事長(NEDO提供、第11回日中省エネルギー・環境総合フォーラム会場で)

 エネルギー消費量が世界第1位となった中国は、国家発展改革委員会が国家政策として広東省をはじめとする各省のエネルギー多消費産業を対象に高い省エネ目標を課している。対象となるのは石油化学、製紙、紡 績などの重化学産業のほか、電機、自動車など製造業の工場、さらには病院などの業務用ビルも含まれる。

 一方、NEDOはさまざまな国の政府・公的機関と協力してそれぞれの国の環境に合わせたエネルギー技術・システムの実証事業を展開している。日本企業が得意とするエネルギー技術・シ ステムを海外に普及させることが狙いだ。今回、実証事業を実施するのは広東省の紡績トップ企業である互太(番禺)紡織印染有限公司と、同 様にエネルギー多消費産業であるアルミ製品製造企業の広東華昌鋁廠有限公司の工場。一部既存設備を省エネ設備に更新するとともに、エネルギー需給を高度に制御し、生 産効率を高めながら大幅な省エネを実現するエネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入し、その有効性を検証する。

 再生可能エネルギーの導入拡大をはじめとする電源多様化が進む中で、デマンドレスポンスと呼ばれる電力需給調整システムを電力供給系統に取り込むことが各国の大きな課題となっている。電 力系統の信頼性低下時などに需要者側が電力の使用を抑制するよう電力消費パターンを変化させる必要が高まっているからだ。実証事業では、今後、中国でも実施される予定の電力需給調整に対して、2 工場のエネルギーマネジメントシステム(EMS)を連携し、各工場の生産効率の最適化を目的とした高度なデマンドレスポンスの実現可能性も検証する。

 実証事業には、日本側から横河電機、日本総合研究所、東京電力ホールディングスの3企業が加わり、中国側は互太(番禺)紡織印染有限公司、広 東華昌鋁廠有限公司のほか送配電会社である南方電網総合能源有限公司が2工場のとりまとめ役として参加する。2020年度末までに、システム・設備の設計・製作、輸送、据え付け、試運転などを実施する予定。設 置完了後、システム・設備の実証運転を行い、技術の実用性や有効性を検証し、さらに中国国内への普及を図るためにセミナー開催などの普及活動を進める。