取材リポート
トップ  > コラム&リポート 取材リポート >  File No.18-08

【18-08】博報堂と「百度」日本法人が市場活動支援で提携

2018年5月16日 小岩井忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 広告代理店「博報堂」と中国最大の検索サービス企業「百度」の日本法人「バイドゥ」が、日中両国の市場活性化と、中国市場をターゲットとする企業・団体に最適方策を提供することを目指す戦略的パートナーシップを14日、締結した。博報堂が持つ生活者データと中国百度の検索データを活用した先進的なデータマーケティングと最適なメディア対策の策定から広告配信までを一元化したサービスの実現を目標に掲げている。

 博報堂とバイドゥは、2月に「Hakuhodo ×Baidu Japan プラニングスタジオ」というデータ重視の市場活動支援チームを結成済み。膨大な数に上る中国の消費者について象徴的な顧客像をまず描き出し、その顧客像に基づいた広告出稿や配信法を企画し、検証作業を経て、行動計画として提供することを目指している。

 博報堂は、2000 年から世界の主要都市で「グローバル生活者調査」(Global Habit)を毎年、実施している。同じ人物(シングルソース)にライフスタイル、価値観からメディア接触、購入態度、さまざまなカテゴリーのブランド使用状況や意識を聞いているため、都市間の比較だけでなく同一都市の時系列比較も可能になっている。この調査を基に構築した「360度中国生活者データ」と、百度検索データ、さらに博報堂のオンライン行動データ、オフライン調査データ、テレビ視聴データなどを掛け合わせ、統計的手法で疑似シングルソース化する。百度検索データから得られる「検索する」という能動的行動と、検索ワードの内容を緻密に分析することで、中国生活者の商品やブランドに対する関心度を測ることができるという。

 さらにデジタルメディアだけでなく、テレビ媒体の接触状況を時間単位まで分析し、これに企業から提供される来店、購買データなどを掛け合わせることで、テレビ広告とデジタル広告の配信効果による販売寄与度を分析する。こうしたデジタルメディアの効率的かつ効果的な活用法の提供を通じて、日本・中国市場の活性化と日本企業の中国市場での成功を手助けしたい、と両社は言っている。

image

博報堂、バイドゥによるメディア活用法策定・提供イメージ例(博報堂・バイドゥプレスリリースから)

 博報堂とバイドゥによると、中国市場をビジネスチャンスととらえる日本企業は多い一方、中国市場の規模、スピード、慣習の違いに苦戦を強いられている企業が多いのが現状。デジタル広告のシェアが増加の一途で、2014年にはテレビ広告を抜いてトップになるなど中国社会のデジタル化は急速に進んでいる。検索サービスの使用率も急激に増えており、その中で、「百度検索」の使用率は82.9%( CNNIC=中国ネットワークインフォメーションセンターの 2018年1月データ)と圧倒的なシェアを占めている。

 博報堂がホームページで公表している「グローバル生活者調査」の報告書「Global Habit 2016年版」(調査時期は2015年5~8月)によると、調査を行ったのは世界37都市。中国は北京、上海、広州、香港など12都市を占める。調査対象は、各都市500~800人で調査項目は約900項目。会場での面接調査法による香港を除き、中国の各都市は全て個別訪問面接による調査法をとっている。すでにこの時点で「スマートフォンは香港、上海、北京、広州ではほぼ全員に普及している」、「パソコンの世帯保有率は、香港、上海、北京、広州で9割と非常に高い」など、マスメディア・広告メディアとしてインターネットが大きな位置を占めていることを示す結果が出ている。

 日本製品に対するイメージでは、「高品質」が各都市に共通しているほか、「カッコイイ/センスがいい」が広州で1位、「先端技術のある」と「安心/安全な」を北京、香港が、「活気や勢いを感じる」を上海が、「省エネルギー」を広州が、それぞれ上位3位以内に挙げているという結果も示されている。