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【19-01】黒竜江省で放鳥のナベヅル四国にも飛来 同一個体が鹿児島、徳島、高知3県で観察は初

2019年1月18日 小岩井忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)

 中国黒竜江省大慶市で放鳥されたナベヅルが、昨年11月から12月にかけて高知県四万十市、徳島県阿南市、鹿児島県出水市に飛来したのが観察された、と公益財団法人山階鳥類研究所が17日発表した。同 じナベツルが高知県、徳島県、鹿児島県と移動したのが連続して確認されたのは初めてという。

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中国からの渡来が確認されたナベヅル。赤い色足環に354という番号が刻印されている
(上・中:2018年11月5日、高知県四万十市で有田修大氏撮影。下:同 11月12日、徳島県阿南市で西川清氏撮影。3羽のうち首が茶色で額に赤い斑がないのが子どもで額に班がある2羽が親鳥=山階鳥類研究所提供)

 山階鳥類研究所によるとナベヅルはツル科の鳥で全長は約1メートル。東シベリア南部とロシア極東南部のアムール川、ウスリー川、レナ川流域で繁殖し、中国南東部の長江下流域と朝鮮半島南部、日 本で越冬する。鹿児島県出水市で越冬する数は世界中のナベヅルの8~9割に上る。

 今回、11月から12月にかけて四国2県と鹿児島県を移動したのが確認されたナベヅルは、左脚のすねに装着されていた赤い色足環から黒竜江省大慶市林甸県で郭玉民さんによって放鳥されたことが分かった。2 012年4月10日に足環を付けられて放されたこのナベヅルは、その年の越冬期(2012~2013年)に出水市で確認され、その後も毎年、出水市に飛来していた。今 冬は2018年11月5日に高知県四万十市森沢でまず観察され、11月12日は徳島県阿南市中林町で、11月16~23日には再び、四万十市森沢で確認された。足 環をつけたナベヅルはつがいと子供の親子3羽連れだった。出水市では11月25日になって初めて確認された。

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今回のナベヅルの足環装着場所と飛来地(山階鳥類研究所提供)

 ナベヅルは、国際自然保護連合(IUCN)のレッドリスト(絶滅の恐れがある野生生物のリスト)で、「危急種」(VU=Vulnerable)に、環 境省のレッドリストで絶滅危惧II類にそれぞれ指定されている。いずれも絶滅の心配が高い方から3番目のランクだ。越冬地が出水市だけに過度に集中している現状は、も し伝染病などの発生した場合などに大きな打撃が懸念される。越冬地が増えることはそうした危険の軽減、解消につながることから、今回の観察結果は有意義だ、と山階鳥類研究所は言っている。

 四国では高知県の四万十川流域などを中心に少数が不定期に飛来することが知られていたが、2015~2016年の越冬期に四国全体で約300羽が飛来し、100羽以上が長期滞在した。こ の結果を重視した日本野鳥の会、日本自然保護協会、世界自然保護基金ジャパンなど5団体は、2016年10月、国土交通省四国地方整備局長、農林水産省中国四国農政局長あてに「 銃声に驚いて飛去してしまうので飛来地域周辺での銃猟は控えてほしい」など複数の保護対策を列挙した要望書を出している。

 翌2016~2017年の越冬期は約50羽、次の2017~2018年の越冬期は8羽に減っていたが、今期は四万十市森沢で98羽が有田修大氏によって観察され、阿 南市中林町でも11羽が西川清氏によって観察されている。

関連リンク

  • 山階鳥類研究所プレスリリース「中国黒龍江省から四国への絶滅危惧種ナベヅルの渡りが確認されました」
    http://www.yamashina.or.jp/hp/p_release/images/20190117_prelease.pdf

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