【20-17】eスポーツで戦略パートナーシップ締結 世界展開目指し国際団体と電通
2020年6月24日 小岩井 忠道(中国総合研究・さくらサイエンスセンター)
広告業をはじめ多様な事業を展開する電通とeスポーツ(エレクトロニックスポーツ)の国際団体「Global Esports Federation」が6月22日、eスポーツ事業の世界展開を目指し戦略パートナーシップを締結した。Global Esports Federationは、中国の3大IT・ネットサービス企業の一つ「テンセント(騰訊)」がファンディンググローバルパートナーとなり、昨年12月にシンガポールで設立された。eスポーツは米国、欧州、中国で特に急速に普及・発展している。eスポーツの国際団体と日本最大の広告代理店が手を組んだことは、日本のeスポーツ界にとっても強力な追い風になるとみられる。
(Global Esports Federationホームページから)
Global Esports Federationは、eスポーツの信頼性、正当性、名声を確立する目的で設立され、eスポーツ関係の団体だけでなく、伝統的なスポーツ団体やアスリートも参加している。日本からも一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)が3月に加盟し、岡村秀樹会長が理事に就任している。Global Esports Federationは、情報通信技術(ICT)に特化した国連機関である国際電気通信連合(ITU)にも加盟し、eスポーツのさらなる魅力向上と国際標準化に向けての動きも強化している。
電通は、今後Global Esports Federationと新たなマーケティングプログラムやeスポーツイベントなどの開発に取り組み、さらに日本eスポーツ連合とも連携しながら、さまざまなゲーム企画・宣伝広報・販売会社、スポンサー、国際団体などとも協働してeスポーツのさらなる世界的な普及を目指したいとしている。
Global Esports Federationによると、eスポーツは、4億5,000万人以上の視聴者を獲得、年間収益は10億ドルを超えるまでに急成長している。収益の伸びも年間20%をはるかに超える。日本eスポーツ連合が3月に公表した「eスポーツを活性化させるための方策に関する検討会」報告書によると、2018年時点でeスポーツの国内直接市場規模(スポンサー、放送・配信権、広告など)の推定値は44憶円。これが2022年には91億円に、2025年には600~700憶円に拡大するという予測値と試算値も示されている。
日本eスポーツ連合の報告書は、直接市場規模のほかに、イベント興行を中心としたビジネス(観戦、視聴、機器購入、建設事業、イベント開催など)での経済効果と、イベントの集客力などを活用したビジネス(飲食サービス、小売、情報通信など)への波及効果もそれぞれ試算している。これらを含めると国内総市場規模は2018年時点で338億円、2022年には695憶円、2025年には2,850憶~3,250憶円に膨れ上がるという試算値も示している。
eスポーツの国内市場規模予測
(日本eスポーツ連合「『eスポーツを活性化させるための方策に関する検討会』報告書」から)
日本eスポーツ連合の報告書は経済産業省の委託を受けたものだが、eスポーツに対しては文部科学省スポーツ庁も大きな関心を示している。2018年11月に鈴木大地スポーツ庁長官から日本学術会議に対して出された「科学的エビデンスに基づく『スポーツの価値』の普及の在り方に関する審議依頼」の中でも、身体を動かすのを基本とする伝統的スポーツだけでなく、eスポーツに関する検討も求めている。具体的には、科学技術の進展と情報技術環境の変化が「スポーツの価値」にどのような影響を及ぼすかを審議してほしいという注文だ。
この審議依頼に対する日本学術会議の回答が6月18日に鈴木長官に手渡された。その中でeスポーツは、「スポーツに対する見方を変え、身体運動を超えた新たな価値を提供している」と評価された。米国、欧州、中国を中心に、eスポーツ世界大会をプロスポーツと認定する動きや、学校教育で体育プログラムの一環として扱う動きも出ており、既に競技人口が3億人とも言われる中国では、国家事業として選手育成も進められている、という現状も紹介されている。eスポーツの世界市場規模については、2021年に16億ドルを超えるという数字が紹介されている。
(日本学術会議の渡辺美代子副会長から回答を受け取る鈴木大地スポーツ庁長官(右)。中央はオンラインで手交式に参加した山極壽一日本学術会議会長(日本学術会議)
関連サイト
電通ニュースリリース「電通、Global Esports Federationと戦略パートナーシップを締結」
Global Esports Federationニュースリリース「Global Esports Federation joins ITU to launch global dialogue on esports」
日本eスポーツ連合ニュースリリース「経済産業省委託事業『eスポーツを活性化させるための方策に関する検討会』報告書を公開」
日本学術会議回答「科学的エビデンスに基づく『スポーツの価値』の普及の在り方」
関連記事
2020年02月04日 客観日本「日本学术会议研讨会:ICT改变体育运动」(中国語)
2019年10月21日 客観日本「提高体育界的社会贡献意识,日本讨论体育运动的价值」(中国語)