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【22-15】「危機」を「チャンス」に変え企業の効率向上をサポート 厦門タイマツハイテクパーク

符暁波(科技日報記者) 2022年08月10日

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画像提供:視覚中国

32プロジェクト
 厦門(アモイ)タイマツハイテクパークは今年に入り、効果的に投資を拡大し、リーディングカンパニーをめぐる川上・川下産業チェーンの投資誘致を展開し、経済発展のために力を蓄えている。今年1‐5月、同パークの実行ベース外資導入額は31億2000万元(1元は約20.4円)に達し、32の重点プロジェクトの契約に調印し、計画総投資額は549億7500万元に達している。

 新型コロナウイルスが世界の経済に大打撃を与えているが、厦門市のハイテク企業の主な実行主体としての厦門タイマツハイテクパークは、国務院が発表している財政政策、金融、投資・消費といった6分野・33項目の経済安定策の実施案の要求を徹底し、「効率、効果を向上させ、効果・利益を高める」行動と結び合わせて、「大々的な訪問、調査、研究」を通して、企業にサービスを積極的に提供し、救済、保障を強化し、的を絞った政策の実行を推進し、一連の政策の効果を最大限発揮させ、企業が困難に立ち向かい、安定して前進し、勢いよく発展できるよう十分な原動力を提供している。

積極的に行動して企業の悩みを解決

 厦門天馬微電子有限公司の関係責任者は、6月中旬に、「厦門タイマツハイテクパークは、商務当局や公安当局と調整を行って、当社の問題を解決してくれ、資源の浪費を避けることができたほか、天馬武漢拠点の問題をも解決してくれた」と感謝している。新型コロナウイルスの影響を受け、同社は生産の過程で使用する高価な重要材料が使用期限切れになりそうになった。浪費を避けるために、同社は内部調達の方法を採用し、これらの材料を武漢拠点へと輸送することにしたものの、輸送方法がなく困り果てていた。

 同責任者によると、その材料は特殊な物質を含んでおり、厳格なクローズドループ管理をするよう国が規定しているという。それを知った厦門タイマツハイテクパークはいち早く厦門市商務局や市公安局と連絡を取り、最終的に関係当局のサポートを受けることができた。そして、わずか1週間後に、その材料が無事天馬武漢拠点に輸送され、企業は胸をなでおろすことができたという。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、厦門タイマツハイテクパークは、上から下までもが責任を全うするよう取り組み、積極的に行動して、第一線に立ち、パーク内の企業との間の架け橋の役割を果たし、的を絞ったサービスを提供して、企業が生産や経営の過程で直面している課題、難点、ボトルネックを解決している。

 パーク内にある企業、厦門光莆電子股份有限公司は近年、新型コロナ対策の一環であるスマート消毒の分野を深く追求している。その製品は、物流やコールドチェーン、路線バス、エレベーターといった複数のシーンで応用でき、見通しは明るい。ただ、スマート防疫は新興分野であるため、市場開拓の過程で、知名度、受け入れ度が低いといった多くの課題に直面している。同社の管小波最高財務責任者(CFO)は、「厦門タイマツハイテクパーク管理委員会は、当社がターゲット市場を正しく見定め、ブランドの特色を構築するようリードする一方で、クライアントに積極的に関連の防疫商品を推薦し、公共の場所で広く使用するよう調整してくれている。同委員会などの当局が、的を絞ってターゲットクライアント群とマッチングできるようサポートし、当社の商品の応用が進むよう推進してくれている。当社の取扱量増加の面で積極的な役割を果たしてくれている」と話す。

 企業が新型コロナウイルス感染拡大の影響を克服し、共に困難な局面を乗り切ることができるようサポートするために、厦門タイマツハイテクパークは今年に入り、効果的に投資を拡大し、リーディングカンパニーをめぐる川上・川下産業チェーンの投資誘致を展開し、経済発展のために力を蓄えている。今年1~5月の、同パークの実行ベース外資導入額は31億2000万元に達し、32の重点プロジェクトの契約に調印し、計画総投資額は549億7500万元に達している。

よい政策を現実のものに

 厦門宝鋼精密鋼材科技有限公司(以下「厦門宝鋼」)は6月上旬、付加価値税控除留保税額の還付金(残存分)として約360万元余りを、付加価値税控除留保税額の還付金(増加分)として950万元を受け取った。同社は今年4月にも、付加価値税控除留保税額の還付金(増加分)として約500万元余りを受け取ってから、再び「還付金ボーナス」を獲得した形となった。同社の袁煥社長は、「控除留保税額の還付金はまさに『恵みの雨』で、キャッシュ・フローの補充として使うことができた」と語る。

 今年4月から実施されている付加価値税控除留保税額の還付は、企業が困難な局面を乗り越えることができるようサポートするために、中国政府が打ち出した新たな組み合わせ式の税金サポート政策の目玉で、条件を満たしている企業は、増加分の付加価値税控除留保税額還付を受けることができるだけでなく、前年度の残存分の付加価値税控除留保税額の一括還付を受けることができ、未曽有の規模となっている。そのような素晴らしい政策をすぐに活用できるようにと、厦門タイマツハイテクパーク税務局は直ちに新たな組み合わせ式の税金サポート政策を細部に至るまで実行し、ニーズがあった場合スピーディーに対応するメカニズムやビッグデータを活用した高精度指導メカニズムを打ち出し、企業が税金の還付を受けることができるよう出張サービスを提供した。

 厦門首能科技有限公司の王忠最高技術責任者(CTO)は、「新たな組み合わせ式の税金サポート政策が打ち出されると、税務指導員がすぐに指導してくれたので、税金の還付や減税に加えて、税や費用の納付猶予制度を活用し、キャッシュ・フローとして約300万元以上確保できた。新エネルギー市場のポテンシャルを有望視し、当社は近年、新エネルギー電池における先見的な機能材料の研究開発に、多額の資金を投じており、資金ニーズが高い。その資金があったので、カギとなる時期に、当社は研究開発への資金投入を強化し続けることができ、生産能力を増強し、市場におけるシェアを拡大することができた」と語る。

 厦門タイマツハイテクパーク税務局・税源管理一科の蔡海濱科長によると、非常に時宜にかなった税金の還付サポートのほか、厦門タイマツハイテクパーク税務局は「税収体験」を定期的に展開して、各企業に合わせたオーダーメイドの「税務ビジネス成長計画」を制定し、企業が税金に関わる事項の意思決定メカニズムやリスク管理メカニズムを整備し、将来的に上場できるよう、最も時宜にかなった税収サービスを提供している。

「絵に描いた」対策ボーナスを実際に「現金化」し、企業に活力を注入している策には、家賃減免策もある。厦門タイマツハイテクパークの国有企業は、賃貸を利用する企業を対象に3ヶ月分の家賃を減免した。統計によると、厦門タイマツハイテクパーク投資誘致センターは、企業180社の家賃、金額にして1205万8800元を減免したほか、起業センターでも、企業413社の家賃、3186万3900元を減免、厦門軟投情報技術有限公司は、企業180社近くの家賃、約1470万元を減免した。うち同社は特別活動グループを立ち上げ、「審査なしですぐに享受」、「申請後すぐに享受」できるようにするという要求に基づいて、関連企業の費用を直接減免したほか、空調設備の電気代半額、不動産管理費の減免といった多くのパーク優待策を制定した。

 それだけでなく、厦門タイマツハイテクパークは、「企業の申請免除」を積極的に推進し、各種政策の現金化をスピードアップさせ、政策を活用して経済を安定させる良い効果を生み出した。2022年、ハイテク企業認定奨励や技術革新差額補給、零細企業向けの短期運転資金貸付「税易貸」を含む「企業の申請免除」プロジェクト7項目の現金化が行われ、企業322社に1億2000万元以上が支給された。

「危機」を「チャンス」に変え、企業のスマート化へのモデル転換をサポート

 6月中旬のある日、厦門タイマツハイテクパークの「スマート製造サービスプラットフォーム」と名付けられる会議室内で、厦門鑫錦成電子有限公司(以下「鑫錦成電子」)の鄒雨兵副社長は、同社の新生産ライン建設をめぐり、専門家に対して、「当社の今の設備ではこの製造方法はかなり難しいので、他の方法はありませんか?」と問い合わせていた。

 近年、電子機器のモデルチェンジ、アップグレードが非常に速いため、製造業もよりレベルの高いスマート化を余儀なくされるようになっている。鑫錦成電子は2年前、スマート化改造を通して、競争力を増強することを検討していた。しかし、新型コロナウイルス感染症に直面し、状況が難しくなり、改造のために多額の資金を投入することに尻込みするようになった。同社が決定に迷っていた時に、厦門タイマツハイテクパークがスマート製造サービスプラットフォームを立ち上げ、企業の設備のスマート化に対して10%、産業ソフトウェアに対して40%の補助金を支給するという、スマート化改造補助策を打ち出した。

 鄒副社長は、「厦門タイマツハイテクパークのこの補助策ができ、当社は生産ラインをアップグレードして改造するという、大胆な決定を下すことができた。当社は昨年、同パークスマート製造サービスプラットフォームのサポートの下、生産ライン3本を新設し、生産ライン2本のアップグレード、改造が完了した。今年は、新しい生産ラインを建設し、カーエレクトロニクスの分野に進出する計画」と説明する。

 新型コロナウイルス感染症が発生して以来、製造業は操業再開が難しく、コストが高いといった問題に直面し、デジタルトランスフォーメーションの必要性と緊急性を身に染みて感じるようになった。その一方で、生産、経営の圧力も大きく、デジタル化改造に必要な各種資金を投入することを、そう簡単に決めることはできないというジレンマに陥った。それに対し、厦門タイマツハイテクパークは、製造業企業のスマート化やデジタルトランスフォーメーションというキーポイントにしっかりと注目し、サポート政策を積極的に打ち出し、スマート製造サービスプラットフォームを構築して、製造業企業のモデル転換・高度化をサポートし、「危機」を「チャンス」に変えてきた。同プラットフォームを通して、新技術を高度化し、生産の質と効率の向上を図る企業が今、ますます増えている。

 友達光電(厦門)有限公司のスマート化された工場に入ると、自動搬送車両やロボットアームが、一部の作業員の代わりに作業を行い、AIカメラを通して、随時作業員の操作ミスを修正していた。同社の李行賢社長によると、スマート工場の稼働が始まって以来、生産効率が40%向上した。そして、同社はアフターコロナ時代において、速やかに操業・企業活動の再開ができ、市場の機先を制した。

 厦門タイマツハイテクパーク・スマート製造サービスセンターの責任者・陳仁欽氏によると、同プラットフォームには、友達智匯や厦門興松機器人といった、スマート製造優良サプライヤー247社が集まっている。パーク内の企業は、プラットフォーム上に、改造をめぐるニーズをアップすると、適切なサプライヤーを速やかに見つけて、マッチングし、商談を進めることができる。プラットフォーム立ち上げから1年半の間に、製品、サービス224件が発表され、企業のスマート化をめぐるニーズ347件が掘り起こされ、134件がマッチング、実施にこぎ着けた。「今年、ハイテクパークの無料診断策を活用して、重点工業企業30社を厳選し、政府調達の形で、企業に無料の診断サービスを提供し、点から面に拡大させながら、ハイテクパークの企業がスマート製造モデルの転換・高度化を進めるよう推進していく」という。


※本稿は、科技日報「主動服務化"危"為"機" 厦門火炬高新区助企提質増效」(2022年6月28日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。