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【22-18】イノベーションを強化した「テクノロジーによる内モンゴル振興」

張景陽(科技日報記者)/艷偉 張小燕(科技日報通信員) 2022年08月19日

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今年4月初め、オルドスハイテクパーク内の企業・オルドス市尚徳艾康薬業有限公司は抗がん剤のパイロット生産を開始。画像は尚徳艾康が開発したオリジナル新薬ACT001の原料薬 (画像提供は取材先)

 統計によると、内モンゴル自治区のオルドス国家ハイテク産業開発区(以下「オルドスハイテクパーク」)内には現時点で、自治区級の研究開発機関が30ある。うち、自治区級の企業技術センターが4つ、新型研究開発機関が1つ、重点実験室が1つ、企業研究開発センターが18、工学技術研究センターが2つ、企業工学研究センターが1つ、院士連携拠点が2つ、博士研究員連携拠点が1つとなっている。

 オルドスハイテクパーク科技人材局と財政金融局は、プロジェクト実施主管当局として、2020年度「テクノロジーによる内モンゴル振興」行動の重点特別措置の中期検査を3日間実施した。今回の中期検査を通して、プロジェクト主管当局は、プロジェクトの実施状況をさらに的確に把握し、各プロジェクト担当機関に対して、プロジェクトの実施過程で存在している問題に目を向け、専門家グループの意見と照らし合わせ、真剣に改善を実施するよう求め、プロジェクトの予定通りの検収に強固な基礎を築いた。

「テクノロジーによる内モンゴル振興」行動重点特別措置実施以来、オルドスハイテクパークの各プロジェクト機関は、「テクノロジーによる内モンゴル振興」行動を牽引力とし、イノベーションプラットフォーム構築やハイレベル人材の誘致・育成、産学研協力展開などを通して、イノベーション成果を実際の生産力へと実用化できるよう継続的に取り組んでいる。ここ2年間近くにわたり、同パークは内モンゴル自治区のイノベーション発展を統率する「テクノロジーによる内モンゴル振興」行動に積極的に溶け込み、新たな成果を収め、新たな発展を遂げている。

チャンスを掴みプロジェクト実施の原動力を放出

 オルドスハイテクパークは、2020年から「テクノロジーによる内モンゴル振興」行動重点特別措置を実施しており、各プロジェクトが現在、秩序正しく推進され、質、効果が向上している。閻文斌博士が責任者を務める「燃料電池自動車用の高純度水素微量不純物検出技術及び設備の研究開発」プロジェクトにより、微量不純物分析・検出サンプルマシンが開発され、その性能、指標は世界レベルに達している。

 同プロジェクトの成果により、中国が水素エネルギー技術発展や産業化において直面している、低コストでの水素不純物検出をめぐる難題が解決された。

 閻博士は科技日報の取材に対して、「当社の製品は元々、主に、電子工業用の高純度ガスや特殊ガスの不純物分析・モニタリングに使われていた。プロジェクトが『テクノロジーによる内モンゴル振興』行動重点特別措置に組み込まれて以降、製品の応用分野を、燃料電池自動車用の高純度水素の微量不純物検出にまで広げた。当社の技術の蓄積や市場開拓にとって、重要な意義がある」と説明した。

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内モンゴル自治区古伊泰煤基新材料研究院 (画像提供は取材先)

 内モンゴル伊泰煤基新材料研究院では、国家重点実験室の建設作業が急ピッチで進められている。同研究院の責任者・銭震氏は「『テクノロジーによる内モンゴル振興』行動が、当研究院の国家重点実験室のために5000万元(1元は約20.1円)の助成金を提供してくれた。そのようなサポートの下、石炭ベースのファインケミカルと新材料の分野で非常に大きなブレイクスルーを実現している」と話す。

 現在、同チームの成果4件が、内モンゴル自治区の科学技術成果として登録されており、研究開発した石炭ベースのα-オレフィンは、内モンゴル自治区の工業・情報化庁により、第一陣の新材料と認定された。また、国家知的財産権局から特許32件を取得し、石炭ベースの製品の国家基準4基準の制定を企画し、40件以上のテクノロジー成果の転化をリードしてきた。

 オルドスハイテクパークテクノロジー人材局の尚秀珍局長は、「当パークは、オルドス市唯一の国家級ハイテクパークで、市全体の質の高い発展とイノベーション発展をリードするという使命を負っている。『テクノロジーによる内モンゴル振興』行動は、その使命遂行を加速させる推進力となっている。『テクノロジーによる内モンゴル振興』行動が当パークで着実に実施されるよう推し進めるために、当パークは、『テクノロジーによる内モンゴル振興』行動重点特別措置・オルドス市国家自主イノベーションモデルエリア建設実施案を制定し、地域のハイレベル重要イノベーションプラットフォーム実行主体建設、テクノロジー型企業の育成・呼び込み、ハイレベル科学研究チーム・今すぐ必要としている人材の招聘、重要テクノロジー成果の転化促進といった6大重点任務を明確に掲げ、重点に焦点を合わせ、的を絞った取り組みをし、既に段階的な成果を挙げている」と強調する。

積極的なサービス提供でレバレッジ効果を促進

 今年4月初め、オルドスハイテクパーク内の企業・オルドス市尚徳艾康薬業有限公司は抗がん剤のパイロット生産を開始した。これは、同市において、中国が独自に開発した抗グリオーマオリジナル新薬・ACT001の生産環境が整ったことを示している。

 同薬品の開発チームの責任者・陳悦氏によると、中国原産のコブシの根の皮から、がん幹細胞に対して、選択的にがん幹細胞増殖抑制作用を持つ有効成分のパルテノリドを発見し、その抽出に成功した。それを基礎に、同チームは化学構造を改善し、脳の腫瘍や病巣に直接作用を及ぼす新たな構造の小分子化合物を作り出した。

 ACT001は、2017年に米食品医薬品局(FDA)と欧州医薬品庁(EMA)から希少疾病用医薬品の指定を受け、中国や米国、オーストラリアで、7項目の第2相臨床試験が始まった。このような大きな成果について、陳氏は取材に、「オリジナル薬品の研究開発は時間が長く、巨額の資金が必要であるにもかかわらず、成功率が低く、リスクが高い。当社の研究開発能力増強の背後で、オルドスハイテクパークが常に企業を主体としたイノベーション体制構築の理念を貫き、資源融合、政策誘導、プラットフォーム構築といった面で一貫した取り組みをしてくれた」と説明する。

 オルドスハイテクパーク管理委員会は、「『テクノロジーによる内モンゴル振興』行動は、根本的にはテクノロジーサービスだ。企業は経済発展とテクノロジーイノベーションの主体であり、人材を誘致、育成、繋ぎ留め、活用する主体である。当パークの職員は、日常の管理サービス、活動においてサービス意識を強化し、積極的に現場に立ってサービスを提供し、企業の質の高い発展のために、ハイクオリティなテクノロジーサービスを全力で提供している。そして、問題志向、目標志向、結果志向という姿勢を終始貫き、企業の第一線に頻繫に足を運んで調査研究を行い、企業が実際の問題を解決できるよう速やかにサポートしている。それが功を奏して、企業は、人材誘致・育成やテクノロジーイノベーションという面で自信を高め、投資プロジェクト、発展経済の原動力が次々に引き出されている」と強調する。

 尚局長は、「実際の活動において、当パークは『人材ニューディール30条』や『テクノロジーニューディール30条』を各企業、各プロジェクト、テクノロジーイノベーションの主体に徹底してPRし、『テクノロジーによる内モンゴル振興』行動のレバレッジ効果を十分に発揮させ、各種政務公開、政府と企業のコミュニケーションルートを活用して政策の各細則を、全面的にPR・解説し、企業が各種政策を十分に活用できるようサポートし、できるだけ速く政策ボーナスを発展の促進力へと転化し、きめ細かく、的を絞ったサービスを通して、企業の質の高い発展を推進している」と説明する。

主体的能動性を発揮しモデル・先導エリア構築に尽力

 内モンゴル自治区の全体の局面を見ると、「テクノロジーによる内モンゴル振興』行動は、国家レベルで、同自治区のテクノロジーイノベーション活動を全面的にサポートする重要な措置となっており、同自治区のイノベーション駆動による発展のために開放的なプラットフォームを構築し、限りない活力を注入している。オルドスハイテクパークは、現地で唯一の国家級ハイテクパークであり、イノベーション発展、モデル転換発展のモデルエリア、先導エリアでもある。

 同パークは独特な地理的優位性と資源的優位性を活かし、「テクノロジーによる内モンゴル振興」行動を牽引力とし、フフホト・包頭・オルドスの国家自主イノベーションモデルエリア建設という好機をしっかりと掴み、トップレベルデザイン強化、イノベーション主体の共同建設、イノベーション活力の喚起、人材の環境強化といった面に重点的に力を入れ、顕著な成果を挙げている。例えば、統計によると、オルドスハイテクパーク内には現時点で、自治区級の研究開発機関が30ある。うち、自治区級の企業技術センターが4つ、新型研究開発機関が1つ、重点実験室が1つ、企業研究開発センターが18、工学技術研究センターが2つ、企業工学研究センターが1つ、院士連携拠点が2つ、博士研究員連携拠点が1つとなっている。

「テクノロジーによる内モンゴル振興」行動が全面的に実施されて以来、オルドスハイテクパークは、「テクノロジーによる内モンゴル振興」行動重点特別措置・オルドス市国家自主イノベーションモデルエリア建設実施案を制定・実施し、内モンゴル自治区科技庁が実施を計画している「フフホト・包頭・オルドス国家自主イノベーションモデルエリア建設全体案」及びオルドス市党委員会・市政府が実施を計画している「ハイテクパークの質向上、ランクアップ推進3年行動実施案」と積極的に歩調を合わせ、トップレベルデザインを継続的に改善し、モデルと牽引役の役割を強化している。

 尚局長は、「当パークは協同イノベーションプラットフォームの展開を通して、人材、技術、プロジェクトといったイノベーション要素の吸着力を継続的に増強し、イノベーション成果を孵化させる効率的な『温室』を作り出している。当パークの企業は、清華大学や四川大学、北京大学、航天科工集団第三研究院306所といった20以上の大学、科学研究院(所)と、技術協力、キーテクノロジーの難関攻略の面で連携し、緊密な技術的つながりを構築し、質の高いイノベーション資源を集め、技術のボトルネックを打破し、成果の転化を促進し、協同発展を推進している」と説明する。

 取材によると、オルドスハイテクパークは今後も、フフホト・包頭・オルドス国家自主イノベーションモデルエリアの建設を機に、「テクノロジーによる内モンゴル振興」行動を、「質向上・ランクアップ」の重要な下支えとし、イノベーション資源の集約に力を注ぎ、モデル・牽引役となる複数のテクノロジープロジェクトの実施を計画し、その効果を最大限発揮させるよう取り組む計画だ。また、ハイテクパークの重点産業チェーンの補充、延長、強化をめぐり、イノベーションチェーンや人材チェーンの協同発展を推進し、イノベーションチェーン、人材チェーン、産業チェーンという3つのチェーンを融合し、良好なテクノロジーイノベーションエコシステムを構築し、パークのイノベーション発展の新たな原動力、新たな優位性を継続的に強化し、ハイテクパークが、体制・メカニズム改革イノベーション先行エリア、ハイテク産業グリーン発展牽引エリア、テクノロジー成果転化クラスター、テクノロジーイノベーションエコシステム最適化モデルエリア、開放的な協力イノベーション先導エリアとなるよう取り組む計画だ。


※本稿は、科技日報「増強創新要素吸附力 這里将"科技興蒙"行動落地落実」(2022年7月12日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。