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【22-22】風力・太陽光発電拠点を砂漠に建設しグリーン電気の集中地域に

頡満斌(科技日報記者) 2022年09月29日

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画像提供:視覚中国

 中国国家エネルギー局はこのほど、砂砂漠・礫砂漠・岩石砂漠を重点とした大型風力発電・太陽光発電拠点の建設を、第14次五カ年計画(2021‐25年)新エネルギー発展の中における最重要事業とし、上記のエリアを重点とした大型風力発電・太陽光発電拠点の建設を全力で推進する計画であることを明らかにした。

 西安隆基清潔エネルギー有限公司(以下「隆基清潔エネルギー」)の李壮東副社長は、「砂砂漠・礫砂漠・岩石砂漠を重点として、大型風力発電、太陽光発電拠点の建設推進を加速させることで、風力発電、太陽光発電の大規模でハイレベルな発展を推進できるだけでなく、経済・社会の発展のために安定していて、ハイクオリティなグリーン電力の下支えを提供し、中国のエネルギーのグリーン、低炭素へのモデル転換を推進することもできる」との見方を示す。

独特な自然条件がもたらす新エネルギー発展のポテンシャル

「第14次五カ年計画」期間中、中国は、大型クリーンエネルギー拠点9ヶ所を新設する計画だ。うち、新疆ウイグル自治区や黄河上流、河西回廊、黄河の河套地域のクリーンエネルギー拠点4ヶ所は、いずれも砂砂漠・礫砂漠・岩石砂漠地域に建設されることになっている。

 そのような地域は、風力エネルギーや太陽光エネルギーといった資源が豊富で、建設条件が良く、土地の要素の影響も小さいため、電力網建設状況と超高電圧送電プロジェクトをうまく組み合わせて、風力発電、太陽光発電資源の大規模開発、質の高い発展を全面的に推進することができる。

 中国で光エネルギー資源が最も豊富な地域は、チベット自治区を除くとその大半は「三北地域」(東北、華北北部、西北地域)に集中している。うち、西北地域は、中国の砂砂漠・礫砂漠・岩石砂漠の主な分布地域だ。もし中国最大の砂漠であるタクラマカン砂漠全体に太陽光発電所を建設すれば、年間発電量は13兆8600億kWhに達すると見られている。2020年、中国の社会全体で使われる電力は約7兆5000億kWhとして計算すると、中国の1.8年分の電力をそこだけで賄えることになる。それが実現すれば、二酸化炭素排出を79兆9700億トン削減できる。

 甘粛省の河西回廊沿線の古浪県、涼州区、民勤県、金川区などは、いずれもトングリ砂漠やバダインジャラン砂漠の周辺に位置し、同省において太陽光エネルギー、風力エネルギー資源が最も豊富な地域となっている。国網甘粛電力科学研究院新エネルギー所の新エネルギー利用技術分析室の主管・王定美氏は、「それら地域の年間平均日照時間は長く、風力エネルギー資源も豊富。非常に広大で、電力網、他の地域への送電ルートの良好な基礎がある。風力発電や太陽光発電の拠点を建設するには最適の地域だ」とし、「河西回廊地域内には、既に西から東に向かう750kVの送電線が3本ある。祁韶直流送電線、哈鄭直流送電線、吉泉直流送電線という、超高圧直流送電プロジェクトが3件あり、河西地域の新エネルギー「西電東送」(西部地域で発電した電気を東部地域に送電すること)の重要ルートとなっている。河西回廊沿線の古浪県や涼州区、民勤県といった地域を頼りに、計画・実施されている甘粛省の電気を浙江省に直流送電線で送るプロジェクトが国家電力計画に組み込まれている。また、敦煌といった地域で建設が計画されている、甘粛省の電気を上海に超高圧直流送電線で送るプロジェクトも実施に向けた前期研究が積極的に行われている」と説明する。

 このほか、砂砂漠・礫砂漠・岩石砂漠などに風力発電と太陽光発電の拠点を建設すると、現地の生態環境回復、地域の産業の発展にもつながる。

 王氏は「砂砂漠・礫砂漠・岩石砂漠などで、風力発電、太陽光発電を活用した砂漠化対策、防風、砂の動きを止める植物栽培、生態系保全・回復などの活動を模索し、新エネルギー発電、生態系回復、住民支援、エコツーリズム、砂漠ガバナンスなどが一体となった循環型の発展スタイルを構築し、新エネルギー発電プロジェクトの適応性、社会収益率を向上させなければならない。土地を総合活用し、土地の砂漠化対策をサポートし、砂漠化した土地が新エネルギーの"ブルーオーシャン"に変わるように取り組み、現地の生態環境や住民の住居環境を改善し、産業の発展につなげて、さらに多くの雇用を創出する必要がある」との見方を示す。

 内モンゴル自治区のクブチ砂漠において、隆基清潔エネルギーが実施している「太陽光発電を活用した砂漠化対策」プロジェクトは、砂漠化した地域において、「パネルによる発電、パネルの下における植物栽培、パネルとパネルの間における養殖」などのグリーン生態発展スタイルが積極的に模索されている。同プロジェクトは中国初の両面発電パネルを大規模に採用した太陽光発電所で、太陽光を電気エネルギーに変換することにより、砂漠化対策のための灌漑設備の電気需要を満たすと同時に、余った電気を国の電力網にも送り込んでいる。同プロジェクトは、クブチ砂漠における太陽光発電を活用した砂漠化対策のモデルケースとなっているだけでなく、世界の砂漠化対策の多様化発展に重要な参考を提供している。

複雑な地理環境によりチャレンジとチャンスが併存

 李副社長は取材に対して、「砂砂漠・礫砂漠・岩石砂漠における太陽光発電所プロジェクトを推進する中で、施工条件が悪いという現実と向かい合わなければならない。施工現場では『三通一平』(水、電気、道路が通っていて、地面が平ら)を実現するのが難しい。一部の現場は地形が複雑で、設備の基礎工事の難度も高い。また、一部の現場は気象条件が複雑で、季節によっては水害対策や季節的な凍上などの問題を考慮しなければならない」と説明する。

 しかし、最大の技術的チャレンジは、接続する電力網が遠く離れていることや電力網の運営の安定性といった問題だ。現地の電力網は十分な整備が進んでいないため、大規模新エネルギー発電所の系統連系が完了した後も、システムを安定させるための高いリスクを背負わなければならない。

 世界トップレベルの太陽光エネルギーテクノロジー企業としての隆基清潔エネルギーは早くも2013年から、砂砂漠・礫砂漠・岩石砂漠などにおける太陽光発電所建設を模索してきた。寧夏回族自治区銀川市興慶区黄河東岸に位置する浜河新区には、太陽光発電パネルが国境を守る鎧のように整然と並んでいる。果てしなく広大な河套平原にあるこの太陽光発電所は、隆基清潔エネルギーが寧夏回族自治区で開発・建設した兵溝200MW太陽光発電プロジェクトで、敷地面積は約423.66ヘクタール。2021年11月に全ての系統連系が完了し、典型的なゴビ砂漠型発電所となっている。

 隆基清潔エネルギーは、十分な考察を行い、合理的に計画を制定した上で、発電所から出発して、内モンゴル自治区を経由し、最終的に銀川甘露330kV変電所へと接続する、全長21キロの送電ルートを設計。発電所の送電・利用の問題を効果的に解決した。同プロジェクトでは、隆基単結晶両面半片Hi-MO5シリーズのパネルを採用し、変換効率は21.1%に達している。このパネルは、「ベストサイズ」の理念に基づいて設計されており、機械・電気の高い信頼性を備えている。運営・メンテナンスの面では、隆基清潔エネルギーのオペレーターは、定期的にドローンを使って、全ての部品やケーブルで「ホットスポット現象」が起きていないか点検し、問題を発見すれば、速やかに対応している。今年7月31日の時点で、兵溝発電所から今年度合わせて2億4124万3200kWhの電気が送られた。今年度の発電時間は、寧夏回族自治区東部の同等規模の発電所を150時間近く上回ると予想されている。

運営・メンテナンスのスマート化がカギに

 王氏は、「砂砂漠・礫砂漠・岩石砂漠などで大型風力発電・太陽光発電拠点建設を促進するためには、関連のエネルギー貯蔵設備建設計画、投資を奨励する政策の制定、現地で利用する電力と他の地域へ送る電力の割合の統一した計画、市場の取引メカニズムの整備といった多方面で、継続的な取り組みをしなければならない」との見方を示す。

 新エネルギー建設の「主戦場」としての砂砂漠・礫砂漠・岩石砂漠などは、自然環境が複雑で、標高が高い、気温が低い、砂嵐といった劣悪な環境に直面することが多く、大型の風力発電・太陽光発電拠点を建設し、その運営・メンテナンスを行うコストも高い。王氏は「風力発電、太陽光発電、エネルギー貯蔵などの設備の環境適応性、信頼性、スマート化といった面で、さらに高い要求を突きつける必要がある」との見方を示す。

 そして、「ゴビ砂漠にある発電所の運営・メンテナンスのスマート化発展を提案する。バックグランドのビックデータの計算・評価を通して、運営・メンテナンス作業計画を最適化し、これまでの受動的な点検やトラブル対応から、方向性を定めて、計画的で積極的に巡回点検を行うように変える」と指摘する。

 また、スマート化巡回点検とスマート診断システムといった技術手段を駆使して、運営・メンテナンス作業の効率を高め、太陽光発電所の故障を効果的に減らし、運営・メンテナンスコストを低減させるべきだ。運営・メンテナンス会社も、施設の制限を打破し、電力網を積極的にサポートし、電力取引の市場化、二酸化炭素排出権取引、グリーン電気取引といった面で積極的な模索を行い、主体的に参加し、グリーン電力の付加価値をさらに発掘し、電力網をサポートすると同時に、太陽光発電所自体にさらに多くの市場収益をもたらすようにすべきだ。


※本稿は、科技日報「不毛之地将成"緑電"熱土」(2022年8月19日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。