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【23-24】活発化するハイレベル交流に見る中欧関係の「ニューノーマル」

鄭立穎/文 吉田祥子/翻訳 2023年04月21日

2022年10月の中国共産党第20回全国代表大会〔以下、第20回党大会〕以降、中国と欧州諸国との間でハイレベルの交流が相次いでおこなわれ、ドイツのショルツ首相の訪中から1カ月足らずの12月1日、EUの最高意思決定機関である欧州理事会のミシェル議長も北京に飛んだ。地政学的な緊張の高まりと経済情勢の悪化を踏まえ、欧州理事会は今回のミシェル議長訪中をEUと中国にとってタイムリーな接触の機会と位置付けている。

 中国外交部の趙立堅報道官〔当時〕はミシェル議長の訪中に先立ち、「中国は対欧関係の発展を非常に重視しており、この機会を通じてEUとの戦略的な対話を強化し、共通認識を醸成し、複雑で激動する国際情勢により多くの安定性をもたらすことを望んでいる」と発表した。

 また、事前に欧州理事会も「地政学的な緊張が高まり、経済情勢が悪化するなかで、今回の訪問はEUと中国にとってタイムリーな接触の機会となる」と表明している。

「タイムリーな接触」

 11月4日のショルツ独首相の訪中を皮切りに、中国と欧州諸国とのハイレベル交流が活発化している。

 G20バリ・サミット〔11月15~16日〕の際に、習近平国家主席はフランス、オランダ、スペイン、イタリアなどの首脳と相次いで会見した。

 さらに、12月1日には北京市内の人民大会堂で欧州理事会のミシェル議長との会談がおこなわれた。習主席は、ミシェル議長が第20回党大会閉幕後まもなく全EU加盟国を代表して訪中したことは、対中関係を発展させようとするEUの前向きな姿勢の表れであると評価した。

 2019年12月のミシェル氏の欧州理事会常任議長就任以降、中国・EU首脳会談はオンラインでのみ実施されており、今回初となる対面での交流は非常に重要な相互理解の機会だと中国社会科学院欧州研究所の馮仲平所長は指摘する。

 この会談で習主席は中欧関係の発展について、①正しい認識を持つ、②見解の相違を適切に管理する、③より高いレベルの協力を進める、④国際的な協調と協力を強化する、という4つの視点を提示した。

 ミシェル議長は、「現在の国際情勢と地政学リスクは深刻で複雑な変化を遂げつつあり、国際社会は多くの課題と危機に直面している」としたうえで、「中国は国連憲章の趣旨を擁護し、多国間主義を支持する重要なパートナーである。EUは『1つの中国』政策を堅持し、中国の主権と領土保全を尊重し、内政に干渉しない。EUは中国にとって信頼でき、期待に添える協力パートナーであることを望んでいる」と述べた。

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2022年12月1日、北京市内の人民大会堂で欧州理事会のミシェル議長との会談に臨む習近平国家主席。写真/新華社

「接触」と「リバランス」

 前述の4つの視点のうち、見解の相違の適切な管理について習主席は、「中国と欧州は歴史や文化、発展のレベル、イデオロギーに違いがあり、一部の問題について双方の見解が異なるのは当然のことで、建設的な態度で対話と協議を維持すべきである。重要なのは、互いの重大な関心事と核心的利益を尊重することであり、特に主権・独立・領土保全を尊重し、相手国の内政に干渉せず、中欧関係の政治的基礎を共に守ることだ。中国は平等と相互尊重に基づくEUとの人権をめぐる対話の実施を望む」と強調した。

 これに対しミシェル議長は、「互いに尊重しつつ率直な態度で、中欧関係のさまざまな重要問題について中国側と掘り下げて議論し、相互理解を深め、相違点を適切に処理したい」と応じ、さらに、「EUは中国と次の段階のハイレベル交流を円滑におこない、直接的な対話と協力を強化することで誤解と判断ミスを減らし、エネルギー危機や気候変動、公衆衛生などの地球規模の課題に共によりよく対処することを望んでいる。中国と引き続き『EU・中国包括的投資協定』成立に至るプロセスを前進させ、サプライチェーンの安定性と相互の信頼を高め、さまざまな分野で互恵的な協力を深めていきたい」と伝えた。

 これまで欧州は、台湾海峡や南シナ海など中国の内政問題について、折に触れ暗に非難してきた。とりわけここ数年、中国に対する非友好的な意見も欧州内部に見受けられる。「しかし、ロシアとウクライナの戦争が長期化するにつれ、欧州はエネルギー危機とインフレに直面し、特に米国で『インフレ削減法』が成立すると、米国内の企業に多額の補助金が支給され、欧州の産業は大打撃を受けた。こうしたなかで欧州諸国の首脳は、中国とのデカップリングは非現実的かつ不可能だと気付いた」と復旦大学欧州問題研究センターの丁純主任は分析する。

 今回の訪中では、ミシェル議長自身も欧州理事会も「接触」と「リバランス」を特に強調した。G20バリ・サミットの際にも、ミシェル議長は「EUは中国との関係のバランスを取り直す必要がある。そのため、相手の話に耳を傾け、理解を深めることが極めて重要だ」と言及している。

 丁主任は、中欧関係には確かに現実的な課題がいくつかあるが、グローバル・ガバナンス、気候変動、サプライチェーン技術など多くの分野で協力することで、いまなお共に利益を得ることができるとみており、双方が戦略的大所高所から出発し、現在の「政冷経熱」〔政治的には冷え込んでいても経済関係は熱い〕という局面に対応し、小異を残して大同を求め、中国とEUの協力を推進し続けるべきだと主張する。

「対立を超えて協力する戦略パートナー」

 中欧関係の今後の発展について、丁主任は、最近の欧州諸国のかなり積極的な対中アプローチは、欧州が完全に中国寄りであることを意味しているのではなく、均衡点を探っているのであり、「客観的に見て、かつての蜜月関係に戻ろうとしても、一朝一夕にはいかない」との認識を示す。

 2003年、中欧関係に蜜月期が出現した。当時、フランスやドイツなど欧州の主要国がアメリカのイラク攻撃に反対し、中国やロシアと同じ立場を取ったことから、中欧関係も急速に緊密になり、「中国・EU包括的戦略パートナーシップ」もこうした背景の下で締結された。

 しかし、この蜜月期はあまり長く続かず、〔ダンピングや人権問題などにより〕2006年に終了した。2016年前後にEUは中国との経済・貿易および科学技術に関する一連の規制政策を打ち出し、2019年には中国を「体制上のライバル」と定義した。中国に対するEUの認識と政策も著しく変化し、以前の包括的・戦略的な協力パートナー関係を改め、中欧関係を新たに「協力パートナーであり、経済的競争相手であり、体制上のライバル」と位置付けた。

 欧州議会の「新EU・中国戦略報告書」では、中国をEUの「協力および交渉のパートナー」としているだけでなく、中国がますますEUの「経済的競争相手で体制上のライバル」になりつつあることも強調されており、中国に対するEUの見方はかなり複雑だと馮仲平所長は分析する。しかし、その一方で馮所長は、①EUの対中スタンスは、中国封じ込めやデカップリングを企図する米国とは一線を画していること、②EUは中国との接触の維持および経済面での協力と競争を主張し、気候変動などの地球規模の課題に対処するうえで中国と協力する必要性を強調していることから、中欧関係にはいくつかの課題があるものの、依然として強靱性があるともみている。

 貿易上のデータにも、この強靱性は現れている。新型コロナの流行やロシアとウクライナの軍事衝突という不利な要素があるにもかかわらず、EUの対中貿易額はむしろ上昇している。中国外交部の2021年のデータによると、中国はEUの最大の貿易相手国で、EUは中国の2番目に大きな貿易相手であり、総貿易額〔輸出入の合計〕は前年比で30%近く増加し、初めて8000億ドルを突破した。

 馮所長は、現在、中欧間で集中的に繰り広げられている新たなハイレベル交流は、中欧関係にとってプラスであり、今後しばらくの間、双方の協力と競争が増加すると考えている。

「中国と欧州には地政学上の根本的な衝突がなく、経済・貿易関係は依然としてバラスト〔安定装置〕の役割を果たしている。100年に一度の大変局のなか、EUは中国の戦略的ライバルではなく、小異を残して大同を求め続けるべき戦略パートナーである」。丁主任はこのように述べ、現在、中欧関係は、経済上の競争と協力の共存、グローバル・ガバナンスでの協力の追求、政治やイデオロギー上の見解の相違の管理を3本柱とする中欧版「政冷経熱」がニューノーマルになりつつあり、中国にとって欧州、特にEUはますます「対立を超えて協力する戦略パートナー」になるとみている。

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2022年11月4日午前、中国を公式訪問したドイツのショルツ首相と人民大会堂で面会する習近平国家主席。写真/新華社


※本稿は『月刊中国ニュース』2023年4月号(Vol.132)より転載したものである。