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【23-33】企業の「成長方法」を変える山東省のデジタルインフラ建設

王延斌(科技日報記者) 2023年05月25日

 中国山東省は、デジタル経済の「優等生」として、デジタルインフラの発展を非常に重視している。済南市と青島市で2つの国家級インターネットバックボーン直接接続点が稼働し、同省は中国で初めて「デュアルハブ」の省となった。「ギガビット都市」の建設も中国トップレベルにあり、12都市が国家「ギガビット都市」に選ばれ、その数は国内2位となっている。中国初の5Gネットワークフルカバー高速鉄道とスマート高速道路も完成し、IoT(モノのインターネット)端末が1億6400万台を超え、利用数が中国トップとなっている。

 山東菏沢爾東商貿有限公司の営業担当者である張傑氏は、長年にわたり子供用木製ベッドを取り扱っていたが、同僚とともに新たな舞台に移ることを決めた。天華クラウドデータセンターの登場はその絶好のタイミングだった。データと計算能力を利用して、布張りソファという新たなブルーオーシャンを切り開いた。この製品はたちまち好評を博し、同社の主力製品となった。

 このような事例は山東省では枚挙に暇がない。既存産業は早急にモデル転換して突破口を模索する必要があるが、他方ではデジタルインフラの構築が盛んであり、計算能力がさまざまな産業に深く関与し、新たな変革が進んでいる。

 中国共産党第20回全国代表大会の報告は、デジタル経済の発展を加速させ、デジタル経済と実体経済の深い融合を促し、国際的競争力を持つデジタル産業クラスターを構築すると打ち出した。

 先を見据えた新型インフラの展開は、山東省で新たな発展の原動力を育んだ。これにより工業、農業、サービス業の各分野で新たな応用シーンが次々と現れている。

22年の間接的な経済効果は82億元

 浪潮集団のスマート工場では、インダストリアルインターネットプラットフォームのサポートを受け、スマートねじ締めロボットが8分ごとに130個のねじを自動で締めている。同工場では数十種類の製品を同時に生産でき、大規模なカスタマイズを実現し、生産性を30%高めた。

 計算能力分野に1元(約20円)投資することで3~4元の経済生産を促し、これにより経済の質の高い発展がもたらされる。山東省ビッグデータ局計画発展処の盧修名処長は「22年、山東省の計算能力による間接的な経済効果は82億元を超えた」と明らかにした。

 菏沢市にある山東水発菏恵水務発展有限公司の浄水場では、各施設の作業員が浄水場情報化プラットフォームを通じて、建物内で浄水場の自動制御や生産データ標準化収集・報告、リモートリアルタイム生産管理、生産経営データのリアルタイムチェックを行っていた。このプラットフォームはダム、浄水場、配管網業務を全てカバーしている。

 同社運営担当者の孔慶博氏は「新世代の情報技術と水道技術の深い融合が、データの価値と論理関係を十分掘り起こし、水道事業システムの制御をスマート化し、データの資源化、管理精度の向上、意思決定の科学化を実現し、水道施設の安全運営を保障している」と述べた。

 中国工程院の鄔賀銓院士(アカデミー会員)は「計算能力は将来、水や電気のように、人々の日常的な生産・生活にとって不可欠な存在になる。計算能力に関連する新型データセンターや高性能ストレージ、伝送ネットワークなどの産業には大きな発展の余地がある」との見解を示した。

企業が新たな分野で「成長する」ために

 棗荘国家ハイテク区の主導産業はリチウム電池、光電子、医薬・健康、スマート製造、ビッグデータの5分野だ。「スマートハイテク」応用プラットフォームを通じて、これら5つの産業の発展状況や国内関連分野での位置づけを理解することができる。

 同プラットフォームの産業マップには、これらの産業の発展状況とリチウム電池業界の全国的な誘致のヒントが示されている。また、情報収集エンジンを通じて、最新の国内入札情報やリチウム電池業界各分野の重要ビジネス情報も示される。国内サプライチェーンToBプラットフォームと広く繋がり、企業がワンタッチで直接アクセスできるようになっている。

 これらの応用の背景には、魯南ビッグデータセンターが提供する正確な計算能力サポートがある。

 計算能力は山東省の企業の成長方法を深く変えた。菏沢市では、天華クラウドデータセンターが電子商取引(EC)企業に活力を与え、地元産業のデジタル化発展を推進。ボタンやヤマイモ、アスパラガス、ヒマワリの種などの農産物、家庭用繊維製品、舞台衣装、家具に関連する企業や産業のモデル転換・発展を直接牽引した。天華ECデジタル経済パークの農産物企業はわずか1年間で売上高が500万元に上昇した。

 棗荘や菏沢などの都市で見られるデジタル化の新たなシーンは、山東省がデジタルインフラ構築に取り組み、質の高い発展を推進する具体的事例であり、これらは「政府がけん引し、企業が主導する」モデルの成果と言える。

 中国共産党山東省委員会は昨年、デジタル変革イノベーションを「十大イノベーション」行動計画に組み入れた。デジタル政府、デジタル経済、デジタル社会、デジタルインフラ構築に焦点を当て、ガバナンス方式、生産方式、ライフスタイルのデジタル化変革を計画・推進していく。

 同省は今年、国家級「ギガビット都市」全面カバーの推進、データセンターの「質と量の向上」などに取り組み、幅広いデジタルインフラ構築を加速させ、80以上の省級新型データセンターを創設する。

「中国計算能力発展指数白書(2022年)」によると、山東省の計算能力総合指数は全国6位で、トップ10圏外から上位グループに躍進した。


※本稿は、科技日報「数字基建正在改変山東企業"生長方式"」(2023年4月7日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。