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【23-39】中国不動産業界の国外債務再編 復活の一手となるか

陳惟杉/『中国新聞週刊』記者 神部明果/翻訳 2023年06月07日

2021年12月にデフォルトに陥った不動産開発大手の中国恒大集団は2022年7月に予定されていた再編暫定案の発表を延期し、このほど3月22日にようやく再編案に関する発表があった。経営危機に陥った不動産関連企業の債務再編は目に見えて加速しており、これが苦境脱却の重要な一歩となるだろう。

 「私は会社を代表し債務の履行遅滞をめぐり投資家の皆様にご迷惑をお掛けしたことを心よりお詫びいたします」。かつての「不動産業界の大御所」たちはこのほど揃って謝罪、省察、反省の意を表明した。3月29日夜、中国大手デベロッパー融創の董事会主席を務める孫宏斌氏は同社の海外債務再編説明会の場で冒頭のように投資家に謝罪したのち、現在の債務返済問題に至った原因を総括した。融創は本来、中国政府が2020年夏に示した不動産融資規制「3つのレッドライン」に沿って自社の発展速度をコントロールし、レバレッジを徐々に引き下げていた。「だが、大規模なモメンタムを追求するあまり投資に対して過度に楽観的かつ急進的」となってしまったと述べた。

 この数日後には別の中国不動産代理店大手の易居企業控股〔イーハウス〕が現金返済や債務の株式への転換からなる外債〔国外債務〕再編計画を公表した。

 重くのしかかる莫大な債務を前に、複数の不動産関連企業が外債再編に関する最新状況を次々と公表している。

 融創は3月28日、90億4800万ドルの外債再編に関しすでに国外債権者グループとの間で再編支持契約を締結しており、外債再編案について既存の債権者からより幅広い支持が得られるよう努めていくと発表した。再編案には転換債、強制転換債、融創服務(Sunac Services)の一部株式への転換や新たな債券との交換などが含まれている。

 同じく中国不動産開発大手の中国恒大集団〔以下、恒大〕は3月22日、国外債権者グループとの間で再編案に関する主な項目で合意に至ったと発表した。恒大は新債を発行し旧債と置き換えるとし、新債は償還期間4~12年、利率は年2~7.5%で、はじめの3年は利払いなしで4年目から元本の0.5%の利払いが開始されるとした。

 また正栄地産や旭輝控股もこれより前に海外キャッシュフローの解決案に関する状況を公開している。

 恒大のような債務危機に陥った不動産関連企業はいま債務再編を加速させており、自社のための時間的猶予を確保し、政策緩和の機会を捉えようとしている。だが資金不足を補い、建設中物件の確実な引き渡しを実施しなければ、一切の再編案は最終的に泡と化すおそれがある。

 こうした状況からして、債務再編は債務危機に陥った不動産関連企業の自助策の第一歩にすぎないようだ。

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写真/視覚中国

投資家の理想とはいえない再編案

 恒大は2021年12月、2億6000万ドルの債務担保責任を履行できず、期限前ドル建て債のすべてがクロスデフォルトに陥った。同社は1年あまりにわたり外債の再編進展状況をたびたび公開してきたが、本来2022年7月中に予定されていた再編暫定案の発表は延期されてきた。

 上述のとおり今年3月下旬に同社の外債再編暫定案がようやく公開されたが、これは外部の恒大に対する疑義を晴らすまでには至っていない。

 この合意に関係する外債は2つの部分に分けられる。第1に恒大が発行したドル建て有担保上位債券で、元本総額は139億2250万ドルとなっている。第2に景程有限公司が発行し、天基控股有限公司などが担保する元本総額52億2600万ドルのドル建て優先債だ。2件の外債の元本総額は合計191億4900万ドル、景程と天基はいずれも恒大の海外融資プラットフォームだ。

 これらは恒大の外債の全容ではないものの9割以上を占める。2021年12月31日の時点で恒大の有利子外債の規模は1402億8400万元に達しており、国外債務規模は4億900万元ともいわれていた。

 具体的には恒大、景程、天基各社の外債についてそれぞれ3件の合意書が締結されたが、各再編案にはやや違いがみられる。

 恒大の協議書においては外債がクラスAとクラスCに分けられており、クラスAには恒大のデフォルトとなったかまたは期限前の外債12件、クラスCには恒大の偶発債務と簿外債務が含まれている。

 この両グループの債権者の前には2つのプランが提示された。プラン1は債権者が1対1の割合で旧債を恒大が発行する新債と置き換えるもので、新債の期限は10~12年、クーポンレート〔表面利率〕は2~4%で満期時に償還される。プラン2は新債への置換えとデット・エクイティ・スワップ〔DES、債務の株式化〕から選択可能という案だ。債権者は旧債を恒大が発行する5~9年満期の新債、もしくは恒大物業、恒大新能源汽車または恒大の上場株式と紐付けられた5件の株式連動型商品に転換できる。

 景程の協議書においては、債権者は景程が発行した4~8年満期の新債5件を獲得でき、元本総額は65億ドルとなっている。また天基の協議書では天基発行の5~8年満期の新債を債権者が取得でき、元本総額は8億ドルとなっている。

 再編案においてはDESも注目を集めている。恒大は現在、恒大物業と恒大新能源汽車の株式をそれぞれ51.7%、58.5%保有しているが、これらの株式の価値についてはその業績などを理由に疑問の声が上がっているのが実情だ。

 経営危機に陥った他の不動産関連会社と比べ、恒大の再編案における新債の期限10~12年というのは相対的に長めだ。例として華夏幸福の新規外債の期限は8年、富力地産の外債では3~4年であり、新債の期限が長いほど不確定性が高まることを意味している。

 諸葛データ研究センターのシニアアナリスト陳霄氏によれば、旧債の新債への交換における償還期限の延長は最大12年で、なおかつ4年目から利子の支払いが始まる。つまり債権者はさらに3年待たされることになり、理想的な案とは到底いえない。しかし、もしかりに恒大が最終的に債務再編の条件を満たせず清算という命運をたどれば、債権者の損失はもっと大きくなるという。

 恒大は再編案の公開の際、再編に失敗して清算に至った場合の債権者の予想回収率は、わずか2.05~9.34%とのデロイトの試算も明らかにしている。

「今回の債務再編は外債を対象としたものだが、外債では資産ではなく企業自身の信用力を担保として融資を受けており、企業が流動性リスクではなく債務超過リスクに直面した際、この部分の債務の債権者が選択できる処理モデルは決して多くない。もし資金注入に成功し、恒大に数年の時間が与えられて、その間に復活できるならば、それが唯一の手段となるかもしれない」。住宅政策を研究する専門家はこう話している。

「恒大はデフォルト以降、債務や資産規模を今回初めて公開したが、そもそもこれ自体、同社の債務再編業務に重要な進展があったことを意味する」と業界関係者は感慨深く語る。再編案は外債を対象としたものだったが、恒大は内債の処理状況についても公開している。

 恒大は昨年以降、国内企業に対する債務の元本または利子の期限延長を相次いで完了したが、延長期間は6カ月から1年で元本金額は合計で約535億元、利子は37億300万元に達している。とはいえこれは恒大の内債のうち一角にすぎない。同社の国内のデフォルト金額は昨年12月31日の時点で有利子負債が約2084億元、商業引受手形が約3263億元、偶発債務が約1573億元に達している。

 恒大の内債の整理が、外債以上にいばらの道であることは間違いないだろう。

外債優先、DESが主流

 昨年末以降、経営危機に陥った不動産関連会社の債務再編の動きは目に見えて加速しており、かつその多くが恒大と同じく内債に先んじてまず外債の処理を優先させている。

 記者の統計によれば、今年に入り花様年控股、華夏幸福、中梁控股、旭輝控股、中国奥園、融創といった不動産関連企業が債務再編の進展を相次いで発表した。富力地産、緑地控股といった企業は昨年末に再編の進捗が得られているが、このうち富力地産、華夏幸福は国内も含めた債務全体の再編に成功した数少ない企業となっている。

 富力地産は昨年、国内外の債務すべての償還期限延長を初めて成功させた。

 同社は昨年11月、発行済みの内債8件すべての償還期限を延長し、加重平均満期は約4カ月から3年以上に延期された。債務の総額は135億元である。また、昨年7月には総額49億4300万元のドル建て債10件すべての期限延長を果たした。ここには同社の中長期国外ドル建て債のすべてが含まれ、償還期限は3~4年に延長された。これで富力地産は合計467億元の国内外債務の再編に成功したことになる。

 再編案を公開したこれら不動産関連会社は一刻も早く債権者の支持を得たいと考えているに違いない。3月28日に国外債務再編案を発表した融創は、再編支持協議書に未署名の債権者に署名を促すため、同意費なるものを設けた。4月20日までに再編支持協議書に署名した債権者は元本総額の0.1%を同意費として現金で受け取れるというものだ。

 現在、再編債務のうち3割超を保有する債権グループはすでに再編支持協議書に署名している。融創の執行董事兼行政総裁の汪孟徳氏は再編案説明会の場で、同社は最大の誠意と、各債権者とともに難関を乗り越える決意をもっており、再編案に対する支持を早急に得られることを望むと表明した。

 諸葛データ研究センターの陳霄氏は、国外債権者が各地に分散していることや構成の複雑さ、監督管理の緩さが複数の不動産関連企業の交渉難度を上げていると話す。一方で内債は刺激政策による下支えがあることから、交渉難度は相対的には国外債務より小さい。外債問題が適切に解決されれば内債再編にとっての好材料となるだろう。恒大が望んでいるのは、外債再編案の立案を通じて営業再開の必要条件をつくると同時に、外債再編が国内債権者との和解を後押しすることによって、秩序だった営業再開を実現することであり、債務返済のキャッシュフローを生み出すことである。

 債務解消手段としては、旧債の新債との交換、償還期限の延長、債券の株式への転換などが再編案の主流となっている。例として融創の外債再編案をみると、海外債権者は債券の株式への転換または償還期限延長という2つの選択肢が提供されている。1点目においては債権の全部または一部を株式に換えることで短期的流動性と株価値上がりのポテンシャルというメリットを享受できる。2点目では債権の回復と若干のキャッシュによる弁済メカニズムによって利益を得られる。

 債権者はこの2つ目の選択肢において旧債を新債に交換できるが、融創はドル建て債8件の発行を計画しており、規模は5~13億ドルでクーポンレートは5~6.5%となっている。

 融創の再編案には他にも3つの選択肢があるが、いずれも新債への交換とは違って実質的には債券の株式への転換である。つまり債権者は債務を転換社債、強制転換社債に転換または融創服務の株式に交換できる。

 強制転換社債を例に挙げよう。仮に再編案が通れば債権者は債務のゼロ利子、満期5年の強制転換債への転換を選択でき、規模としては全体で17.5億ドルとなっている。債権者は異なるタイミングと価格で債務を融創の普通株に交換できる。再編が効力を有した当日または6カ月後に、債権者は強制転換債の最大25%を1株10香港ドルで株式に転換できる。これ以外のタイミングでの株式転換については、転換価格は転換前の90取引日における融創の普通株の加重平均価格となる。株式転換していない強制転換社債は満期時にすべて融創の普通株に転換されるという。

だが、2021年の年次報告書と2022年の中間決算報告が発表されなかったため、融創はいまも取引停止状態にあり、取引停止前の価格は1株あたり4.58香港ドルとなっている。

 融創の董事会主席を務める孫宏斌氏が2021年11月に自社に提供した4億5000万ドルの無利子借款も、強制転換社債の形で融創の株式に転換されるとみられている。

建設事業の確実な引き渡しが鍵

 外債再編説明会の場で孫氏が提示したのは2点の要求のみだった。第1にスピードだが、これは企業が通常の経営を再開するにあたっての基礎となるものだ。第2に再編案が体系的かつ周到であることだが、これが企業の真の意味での復活と苦境脱却を支えるものとなる。脱却できなければ債務再編が全債権者の最終的な利益を守る有意義なものとはならない。

 融創を含む経営危機を抱えた不動産関連企業が、債務再編のための時間的猶予を必要としているのは明らかだ。

 富力地産はかつての債務再編後、内債・外債再編の成功により直近3年間の短中期債務圧力が大幅に軽減し、同社の経営改善と市場への再参入に備えて貴重な「窓埋め」〔ここでは乱高下した株価を平常の水準に戻すこと〕の時間を稼げたとの見方を示している。

 花様年控股は今年1月、元本40億1800万元の外債再編案に関し、置き換えを実施した新債券8件の償還期限が2022年12月から2~6.5年延長されたと発表した。外債再編の償還がない2年間は、建設プロジェクトの引き渡し完了にとってきわめて重要である。この期間に外債利子の現金支出が大幅に減少することで、花様年控股のキャッシュフローが改善し、短期債務〔流動負債〕の比率が上がることになるからだ。

 同社の試算によれば、仮に中国の不動産市場が正常に回復し、企業の業務が通常に戻ってプロジェクトの新たな融資が得られた場合、今年から2030年までに既存プロジェクトのアンレバードフリーキャッシュフロー〔UFCF、負債を考慮せず、資本構成に影響されないキャッシュフロー〕は年間9億~160億元となり、累計で約400億元~700億元になるという。

 とはいえ、新たな融資と秩序ある経営を通じて段階的に償還に向けたキャッシュフローを生み出すことが鍵であり、これがかなわなければ償還期限延長による時間稼ぎ的な行為が無意味であることは間違いない。

 融資面に関して中指研究院〔チャイナインデックスアカデミー〕企業研究総監の劉水氏は、今年に入り政策上の奨励が継続するなか、無担保社債の発行主体は著しく多様化したと述べる。中央企業、国有企業および信用補完債券を発行済みの民間企業以外にも中駿、雅居楽などの中規模民間企業や経営危機にある不動産関連企業も発行に成功し、かつ中債信用増進投資股份有限公司〔CBIC、保証保険会社〕による取消不可連帯責任担保を得ている。

 外債の発行が停止となって5カ月以上経過したいま、ようやく光が見えてきた。越秀、金茂は今年1月、マカオ金融資産取引所〔MCEX〕でいち早く債券発行に成功した。だが国外債券が頻繁に違約している影響で不動産関連会社による外債発行は一時深刻なダメージを受けたため、投資家の信用が短期間で回復することは難しいとしている。

 債券発行という資金調達手段を失い、恒大の現在のキャッシュフローはかなり切迫している。2021年年末の時点で、恒大および天基のフリーキャッシュフローは合計でわずか約21億元にすぎなかった。今後3年間における両社の重要任務は住宅物件の確実な引き渡しであり、経営活動回復と秩序ある運営を維持するにはさらに2500億元から3000億元の融資が必要になるだろう。この期間における既存プロジェクトのUFCFは、主に建設事業継続に必要な追加融資の償還に充てられるため、恒大の無担保債務の償還能力はまだ弱い。

 恒大が4年目に通常の経営をほぼ取り戻すことができ、かつ実施主体の確認が済んでいない都市老朽化改造事業の開発が続けられれば、恒大のUFCFは徐々に増えていくだろう。2026年から2036年の10年間にUFCFは年平均で約1100億元から1500億元となる見込みだ。ただ、このキャッシュフローは償還を迎えた事業関連の既存債務を考慮しないものである。

しかし、恒大の不動産販売はこの2カ月で積極的な状況をみせている。同社の昨年の成約額は約317億元(建設費用の相殺額を除くと約196億元)、成約販売建築面積は約390万4000平方メートルとなった。また今年1月から2月にかけては約65億7000万元の成約を実現した(施工会社またはサプライヤーに譲渡される現物払い財産控除後の金額は約47億5000万元)。

 恒大の今後の重要任務は依然として住宅の確実な引き渡しだが、プロジェクトの債務違約金および訴訟リスクは大きな障害になると劉水氏は述べる。

 同社の発表によれば、一部の国内債権者はすでに恒大に対して法的措置を講じ始めている。3月22日の時点で係争金額1億元以上の訴訟件数は789件超、係争金額は合計で約3313億元、また、係争中の仲裁案件数は43件超、その係争金額は約322億元にのぼっている。

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恒大は一部の国内債権者がすでに恒大に対して法的措置を講じ始めていると発表した。写真/視覚中国


※本稿は『月刊中国ニュース』2023年7月号(Vol.135)より転載したものである。