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【23-43】内モンゴル包頭市:産業が人材を集め、人材が産業を盛り上げる

張景陽(科技日報記者) 賈婷婷(科技日報通信員) 2023年06月20日

 中国内モンゴル自治区包頭(パオトウ)市の包頭レアアースハイテク区で今年4月、「2023年レアアース産業プロジェクト合同調印式」が行われ、総投資額51億5000万元(1元=約20円)の重点レアアース産業プロジェクト22件の調印が行われた。

 これは同ハイテク区における「投資誘致・人材誘致・最適化」という取り組みの成果が披露された形となり、「レアアースの都」構築で中心的役割を担い、レアアース産業の質の高い発展を推進するモデルケースとなる。

 レアアースハイテク区は今年、「産業、プロジェクト、科学技術、人材」の四位一体による協同誘致策を着実に実施し、「研究院・地域・大学・企業」による効果的な転化に焦点を当て、研究院や大学による協同イノベーションを推し進め、人材資源を積極的に掘り起こしていく。また、産業を通じて人材を集め、人材を通して産業をけん引するという姿勢を堅持し、「産業チェーン」「人材チェーン」の融合発展を深く推進し、投資誘致や人材誘致を通じて、イノベーション人材と都市産業の「双方向推進」を実現する。

投資誘致を強化してさらなる発展を目指す

 包頭江馨微電機科技有限公司は2017年にレアアースハイテク区に入居した。良好な政策支援や良質なサービス、産業発展環境の恩恵を受け、急速な発展を遂げている。

 同社の許徳光総経理は「当社は今年、レアアースプロジェクト2件に追加投資した。プロジェクトが稼働すると、自治区内の産業・企業をさらにスマート化発展へと後押しできる」と語った。

 レアアースハイテク区レアアース産業局の責任者、張健偉氏は今年調印したレアアースプロジェクトについて、「イノベーションの根源から産業発展をけん引するハイテクプロジェクトもあれば、産業の主流の規模と影響を拡大するプロジェクトもある。こうしたプロジェクトは、包頭のレアアース産業をさらに発展させ、『レアアースの都』を作り上げる上で重要な役割を果たす」と説明した。

 レアアースハイテク区では現在、政府と企業による「双方向推進」が行われている。今年第1四半期(1~3月)には、一定規模以上(年間売上高2000万元以上)のレアアース企業が新たに8社増え、レアアース産業の総生産額は約108億元となった。これまでに調印されたレアアース関連の投資誘致プロジェクトは26件で、契約総投資額は約70億元となっている。

 同ハイテク区は今年、産業クラスターと重点産業チェーンに焦点を合わせ、リーディング企業やクラスター・チェーンの主要企業と連携し、投資誘致を推進している。また、人材力を強化し、産業の方向性を明確に定め、2つの旗艦産業クラスター、5つの戦略的新興産業クラスターのほか、ハイエンド企業、端末製品、重要分野に焦点を合わせ、スケジュールを制定して計画的に推進している。これにより、大規模で波及・けん引効果が高く、技術水準や地方の財政収入に対する貢献度が高い大型・ハイレベルプロジェクトの誘致を加速させ、重点プロジェクトのストックを、その年の重点プロジェクト実施数の2倍以上にするよう目指している。

人材起業環境を最適化

 包頭レアアースハイテク区の代表がこのほど、北京を訪れ、政府・大学・企業協力座談会や人材誘致PR・説明会に参加したほか、清華大学や北京大学、北京航空航天大学、北京理工大学、北京科技大学など10大学の関係者と意見を交換した。

 北京訪問期間中、同ハイテク区は中国技術起業協会のインキュベーション分会と「中孵包頭産業イノベーション連合インキュベーションプラットフォーム協力協定」に調印した。双方は今後「人材+イノベーション+産業」という共同インキュベーションモデルを通じて、イノベーション主体の呼び込みと育成、企業や主導産業の革新的発展の促進などで協力し、包頭市とレアアースハイテク区の「投資誘致・人材誘致・最適化」の取り組みを力強くサポートする。

 その後、同ハイテク区は重点分野の主要企業を組織して、ハルビン工業大学や吉林大学、東北大学などの東北地域の「双一流」(世界一流大学・一流学科)対象大学で、ハイレベル専門人材の誘致活動を行った。

  

 同ハイテク区は今年、「事業機関雇用枠の企業による利用」と「重点産業・分野の大学院生誘致」から着手して、重点企業14社に対して、大学院生対象156ポスト、「事業機関雇用枠の企業による利用」9ポストを募集している。

 良い環境と優れた政策があれば人材が集まって来る。レアアースハイテク区は、人材の起業環境を継続的に最適化し、西部人材集団や内モンゴル人材集団といったプラットフォームを統合し、ハイレベル人材の誘致、人材政策のPR、企業の雇用問題解決などを行っている。また、企業や事業機関において人材に関する活動や実地調査・研究を展開し、各種人材関連政策の宣伝普及を図っている。人材サービスの水準を継続的に高め、人材の住宅問題や子供の就学問題、配偶者の就職問題などを解決してきた。

ビジネス環境基準が持続的に向上

 総投資額105億元の双良硅材料(包頭)有限公司の第3期50ギガワット(GW)大型単結晶シリコンプロジェクト建設現場では、工事車両や作業員が行き交い、溶接音や機械音などが絶えず鳴り響き、活気にあふれている。

 同社の劉国銀総経理は「今の工場の進捗状況を見ると、第3期プロジェクトは11月末には完成し、一部で稼働が始まる。レアアースハイテク区の企業サービス専門チームが、建設の障害となるものを事前に取り除いてくれている」と語った。

 双良硅材料の500キロボルト(kV)超高圧送電線の移設と、双良第3期プロジェクトの着工を推進するため、包頭レアアースハイテク区企業サービスセンターのスタッフが、積極的に企業に出向き、的確な支援を行っている。電力部門や移設工事・設計機関と実地調査を3回行い、計画や建設、農林水産などの部門と、移設の施工、監督・管理機関の現場でのマッチング・連携を積極的に計画し、市の給水・ガス供給、通信などの機関が関連業務を行うよう調整し、企業のケーブル、水道管、緑化工事、マイクロ波無線鉄塔、付属物の障害物除去作業を適時行った。

 レアアースハイテク区企業サービスセンタープロジェクト監督部の張海燕部長は「当パークは今年、『2つの前倒し』サービスを打ち出した。前倒しで事前審査会を企画してマッチングを済ませ、プロジェクトの工程を整理して、手続きの指導を行い、前倒しでプロジェクトにおける臨時電力プランをマッチングする。また、全工程においてシームレスなマッチング、手続きサポート・代行を提供し、建設から稼働までの後ろ盾を提供する」と説明した。


※本稿は、科技日報「包头稀土高新区:坚持以产聚才、以才兴产(2023年4月27日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。