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【23-44】アモイ国家たいまつハイテク区、新エネ産業に注力

符暁波(科技日報記者) 2023年06月27日

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画像提供:視覚中国

 大企業や強力な企業を誘致し、ビジネスでビジネスを呼び寄せるというのは、中国福建省アモイ(廈門)国家たいまつハイテク産業開発区が新エネルギー産業を拡大するための特色ある手法だ。同開発区はわずか数年間で、質の高いビジネス環境とサービスによって寧徳時代をはじめとする一連のプロジェクトをアモイに誘致し、新エネルギー自動車(NEV)向け動力電池の産業規模を拡大させてきた。

 4月中旬、アモイ国家たいまつハイテク産業開発区内の企業である廈門海辰儲能科技が開発した320アンペア時(Ah)の蓄電池が誕生した。この製品は市場に出回っている従来の製品と比べ、体積エネルギー密度と耐用年数が明らかに向上し、1キロワット時(kWh)当たりの単価が大幅に低下して、業界の注目点となっている。

「ダブルカーボン」(二酸化炭素排出量ピークアウトとカーボンニュートラル)の目標の下、新たな科学技術革命と産業変革の方向性を代表する新エネルギー産業が地方の質の高い発展における重要な競争の場になっている。アモイたいまつハイテク産業開発区は新エネルギー産業の主要プラットフォームとして、10年以上前から将来を見据えて新エネ産業の展開を進め、プラットフォームの設立と資本の誘致を通じて、新たな可能性を育成し、産業クラスターを絶えず拡大して、アモイが競争の場で優れた成果を上げるよう後押ししてきた。

 2022年、アモイの新エネルギー産業の付加価値額が前年比40%以上増加し、新エネルギー産業が4つの戦略的新興産業の1つに指定された。現在、寧徳時代や海辰儲能、青島中科華聯新材料など複数の優良企業プロジェクトが次々と進出し、同開発区の新エネルギー産業は発展の歩みが大きく加速しており、質の高い発展に新たな原動力を与えている。

新エネルギー産業が急成長段階に

 最近、新エネ分野におけるいくつかの「大きな動き」により、人々の視線がアモイたいまつハイテク産業開発区に集まるようになっている。多くの人々は同開発区の新エネルギー産業に対し、大きく発展したとの印象を抱くようになった。

 蓄電池の開発製造を手がける海辰儲能は第1四半期(1~3月)の出荷量が前年同期の11倍以上になる見込みだ。19年に同開発区で設立されたこの企業は、わずか3年で22年中国蓄電池納入プロジェクト数第1位、22年中国蓄電池出荷量伸び率第1位という結果を出した。

 リチウムイオン電池メーカーの廈門新能安科技は同開発区に進出してからわずか1年で、工場の杭打ち工事からプロジェクトのテスト生産までを実現した。今年初めには、同社の生産ライン第1号が稼働した。同社企画部の周興恩総監は「現在、全員が全力で生産を行い、受注に対応できるよう努力している」と述べ、今後の市場に対する大きな自信を示した。

 海辰儲能の王鵬程総経理は「アモイたいまつハイテク産業開発区が重要なタイミングで力強く支援してくれたことにより、当社は業界の爆発的発展に対して絶好のタイミングをつかむことができた。2年も経たないうちに、ここは荒れ果てた土地から先進的な生産ラインに変わった」と説明。「開発区が企業のスタートアップ段階で、早期着工、早期生産、早期収益化を目標に据え、推進プロジェクトをできるだけ早く実施することを最重要課題とし、企業が大規模な発展を急速に実現して、業界の爆発的成長期をとらえ、市場シェアを獲得できるようにした」と説明した。

 王氏は「過去1年間、当社は業界と顧客から受け入れられ、海外市場での展開を積極的に進め、生産規模の拡大を計画してきた。今年はアモイたいまつハイテク区内にある同翔高新城で第2期工事が完成して稼働する見込みだ」と語った。

注目分野を見つけ産業クラスターを強固に

 アモイたいまつハイテク開発区の新エネルギー企業が発展の先行チャンスを獲得した背後には、新エネ産業に対する持続的な投資と育成がある。ここ数年、同開発区は同翔高新城をアモイ最大の新エネ産業拠点にするよう積極的に取り組んでおり、区内には現在、海辰儲能、新能安、廈門時代といった新エネ分野のリーディングカンパニーが集まっている。

 寧徳時代の研究開発体制連席総裁の欧陽楚英氏は、3月に開かれたアモイ市科学技術イノベーション大会で次のように述べた。「アモイは寧徳時代の発展のために幅広い可能性を切り開いた。私たちも資源の優位性を十分活用し、新エネ産業の川上から川下に至る関連企業がアモイに来るよう積極的に誘致している。新エネ産業チェーンクラスター形成を推進し、アモイが中国の新エネ産業の重要拠点となるようサポートするとともに、福建省のイノベーション駆動型発展戦略の実施を促し、中国が二酸化炭素排出量ピークアウトとカーボンニュートラルを実現するためにさらに貢献していく」。

 リーディング企業がけん引し、産業チェーンが連動する。寧徳時代が同開発区に進出したことは、産業の集積をさらに加速させた。昨年末、年に一度の寧徳時代サプライヤー会議が初めて寧徳市以外の都市であるアモイで開かれた。新エネ産業チェーンの企業400社以上が同開発区を訪れ、産業の発展状況やビジネス環境、企業に対する優遇政策について説明を受けた。

 廈門火炬産業股権投資管理有限公司の劉志斌総経理は「われわれは寧徳時代のリソースを十分活用して、関連する主要サプライヤーをすべてアモイに集め、アモイたいまつハイテク開発区とアモイ市同安区の企業誘致のために良好なプラットフォームを構築した。業界リーディングカンパニーのサプライヤー会議を契機として、アモイたいまつハイテク区と同安区が新エネ産業専門企業誘致説明会を開催し、サプライヤーがアモイに投資して工場を建設し、共に発展することを奨励し、歓迎する」と述べた。

 サプライヤー会議に参加した安捷利電子科技(蘇州)有限公司は2017年から寧徳時代と協力し、主に信号収集や管理などのサービスを同社に提供してきた。安捷利の熊正峰董事長はアモイたいまつハイテク区と同安区を視察した後、「新エネ産業の特徴は製品規模が大きいことだ。サプライヤーとしては、サービスの範囲と距離が参考にすべき重要要素であり、今後は寧徳時代の戦略に合わせて、アモイに進出して新エネ産業を発展させることを検討する」と述べた。

 アモイたいまつハイテク開発区は現在、ビジネスによってビジネスを呼び寄せ、産業チェーンを結び付け、動力電池や蓄電池を主体とした、川上の材料とコア部品、川下の車載ネットワーク(IoV)と充電・バッテリー交換などを組み合わせた新エネ産業チェーンと産業クラスターを形成している。アモイの新エネ産業は拡大発展し、急成長段階に入った。

重要技術の実用化を加速

 新エネ産業は新興産業であり、イノベーションに基づく発展が重要となる。イノベーション発展を効果的に支援し、重要技術の実用化を加速させることは、優れたプロジェクトを根付かせる重要なカギとなる。

 新エネ産業の発展プロセスにおいて、アモイたいまつハイテク開発区は科学技術の研究開発の組織的メカニズムを積極的に模索し、イノベーションを活性化させるプラットフォームを構築し、「企業の科学技術イノベーションを支援する一連の措置」や「質の高い発展を推進する一連の措置」などの政策を相次いで打ち出し、企業がイノベーションの研究開発に参加することを支援してきた。

 国家新エネルギー自動車技術イノベーションセンターの原誠寅総経理は、21年に同センターのアモイサブセンターが開発区に設立されたと紹介。これまでに新エネ車の先進的駆動などの重要技術分野で、高性能マルチギアハイブリッドエンジンシステムや、高度統合型スマート・スケートボードシャシーなど一連の科学技術イノベーションの成果を獲得している。

 アモイたいまつハイテク開発区は、嘉庚イノベーション実験室や福建省生物製品科学・技術イノベーション実験室、アモイ大学などのハイレベルイノベーションプラットフォームとの協力を強化し、科学研究機関の基礎研究における優位性を十分活用し、企業が重要コア技術の研究開発を行うのを支援している。

 4月13日、開発区に新エネルギー共同実験室が設立された。この実験室は国家の科学技術企業インキュベーター(専門類)である廈門火炬グラフェン新材料孵化器有限公司と同開発区のハイテク企業である元能科技(廈門)有限公司が共同設立したもので、双方はこれから既存の設備リソースや技術能力を統合し、新エネ産業の川上から川下に至る企業のニーズに焦点を当て、福建省内の新エネ科学技術イノベーションプラットフォームを構築する。関係者によると、同実験室の設立はアモイや中国の新エネ企業と大学の研究チームに影響を与え、企業の技術開発により力強い支援を提供するとともに、アモイの新エネ産業のさらなる発展を後押しすることになる。

 4月15日、アモイたいまつハイテク開発区の企業である鷺島水素エネルギー(廈門)科技と嘉庚イノベーション実験室が共同開発した高性能のメガワット級PEM(固体高分子)型水素製造装置が投入された。中国科学院院士(アカデミー会員)で嘉庚イノベーション実験室の室長である田中群氏は、「福建省の省級イノベーション実験室として、嘉庚イノベーション実験室は19年の設立以降、水素エネルギーなどの新エネルギーや新材料分野を深く開拓し、高い技術成果の産業化推進を目標とし、多くの企業が新エネルギーの競争の場に加わるよう支援してきた」と語った。


※本稿は、科技日報「厦门火炬高新区:发力新能源,"链"出新动能」(2023年4月27日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。