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【23-70】規則正しいパンダの食生活 無断でエサを与えて「出禁」の例も

胡利娟(科普時報記者) 2023年10月31日

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成都ジャイアントパンダ繫殖研究基地で竹を食べる「芝麻(ジーマー)」。2017年4月24日生まれの「芝麻」は、第31回FISUワールドユニバーシティゲームズの大会マスコット「蓉宝(ロンバオ)」のモチーフになった。新華社配信(撮影:陳居偉)

 中国では今年、中秋節(旧暦8月15日、今年は9月29日)と国慶節(建国記念日、10月1日)が連続し、9月29日から10月6日まで8連休となったことで、多くの人々が国内や海外に出かけた。中でも四川省成都市は人気の旅行先となったが、このほど、観光客2人が無断でパンダにエサを与えたため、成都ジャイアントパンダ繫殖研究基地への出入りを永久に禁止されたとの話題が「微博(ウェイボー)」でトレンド入りした。

 では、なぜ無断でパンダにエサを与えてはいけないのだろうか?

 北京生物多様性保護研究センターの鍾震宇副主任は「ジャイアントパンダは中国の固有種で『国宝』と呼ばれている。主な生息地は四川省、陝西省、甘粛省の山間部で『中国国家重点保護野生動物リスト』に登録されている。動物園と繁殖基地の職員は、細心の注意を払ってパンダを世話しており、特に食事面では、科学的で栄養価の高いメニューを用意することで、健康を保つようにしている。そのため『間食』の必要はない」と説明した。

 鍾氏は「観光客はパンダに栄養のあるものを食べてほしいという思いから、エサを与えようとするのかもしれないが、そうした行為が逆に危害を加えることになってしまうことは、あまり知られていない。その理由としては、まず、パンダは栄養過多になると、体調を崩しやすくなる。次に、観光客が自分で持ってきたタケノコやパンなどには病原体が付着している可能性があり、パンダが病気になったり、最悪の場合、死んでしまったりすることもある。また、人がエサを与えるという行為に、パンダが驚いてしまう可能性もある。このほか、長期的に、頻繁的に、気の向くままにパンダにエサを与えると、心理または行動に異常をきたす可能性もある」と強調した。

 観光客2人がエサを与えたことについて鍾氏は「動物の赤ちゃんはエサや、その変化にとても敏感であるため、体調を壊しやすい。これらの要素を考慮した結果、職員は2人に成都パンダ繫殖研究基地への出入りを永久に禁止するという厳罰を科すことにした」と述べた。

 では、パンダを見る場合に、どんなことに注意しなければならないのだろうか?

 鍾氏は「パンダの見学マナーを守るためには、してはいけないことが5つ、しなければならないことが3つある。してはいけないことは、①大声で叫んだり、騒いだりする、②いたずらをしたり、エサを与えたりする、③パンダが活動するエリアに物を投げ入れる、④柵に登ったり、越えたり、ガラス窓を叩いたりする、⑤ペットを連れていく-の5つ。しなければならないことは、①観覧エリアで静かに見る、②パンダの写真や動画を撮影する時はフラッシュをオフにしておく、③マナーの悪い人を見かけたら、すぐに注意する-の3つだ。みんなでパンダのために良好な生活環境を作り出し、その健やかな成長を見守る必要がある」と訴えた。


※本稿は、科技日報「"国宝"饮食有规章私自投喂后果很严重」(2023年9月14日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。