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【23-73】第3回サミットフォーラムで語った「一帯一路」10年の成果とは

松田侑奈(JSTアジア太平洋総合研究センターフェロー) 2023年11月09日

 一帯一路イニシアティブが10周年を迎えた。10月17~18日に、北京で一帯一路10周年を記念する第3回一帯一路国際協力サミットフォーラムが開催された。

 2013年に習近平国家主席が重要な対外政策として一帯一路イニシアティブを発表してから、一帯一路は、中国において、グローバルプロジェクトである同時に人類運命共同体を実現するプラットフォームとして位置づけられた。中国は、中央アジアとヨーロッパ、東南アジア、中東、アフリカを繋ぐ陸・海上のシルクロードに位置している国々と単なる経済協力だけでなく、大規模な投資を通じて経済共同体を構築してきた。

 今回のサミットでは10年の成果について、以下の内容を言及した。

 まず、修交国の83%にあたる152の国、32の国際機関と一帯一路建設に関する200以上の協力文書を締結した。6大国際経済回廊と周辺インフラの相互連携を推進し、中国~ヨーロッパ鉄道、西部陸・海上新通路、中国~ラオス鉄道、ジャカルタ~バンドン高速道路等の建設に成功した。金融システムを新たに整備し、金融サービスの提供及び投資・融資体系のイノベーションを通じて、金融協力の拡大も果たした。

 そして、一帯一路沿線国家との貿易規模も急速に増加した。2013~22年に中国と一帯一路沿線国家の有形貿易総額は累計13兆ドルで、年平均8%の増加率を見せた。13兆ドルという数値は、対外貿易総額の30%の該当する金額である。また、相互投資累計額も2700ドルを超えた。沿線国家と地域の産業ネットワーク、供給ネットワークの連携もより緊密になり、沿線国家への中間財輸出割合も56%に増加した。

 今回のサミットには150カ国と30以上の国際機関の代表が参加し、習近平国家主席らと一帯一路共同建設について議論を行った。

 サミット期間中に、企業家会議が開催されたが、今回の会議では、①開放・協力、②相互連携強化、➂エコ発展、④デジタル経済協力推進、⑤法律遵守と社会責任履行を主要な内容とする「一帯一路企業家大会北京宣言」を発表した。中国貿易促進委員会の于健竜副会長は、「今回の企業家会議期間に68の国と地域を網羅する数多くの実務プロジェクトが締結され、プロジェクト件数と関連国家、契約金額が例年のレベルを大きく超えた」と述べ、今年度の企業家会議で実質的な交流プラットフォームを構築できたことを示唆した。

 企業家会議のみならず、産業海外発展協会が開催したペルー投資協力シンポジウムでは、中国企業に向け、ペルーに投資するメリット、安康産業クラスター、投資環境、投資政策等を紹介する時間が設けられていた。ペルーは中国と全面的戦略パートナー関係と包括的自由貿易協定を締結した唯一のラテンアメリカ国家で、安康産業クラスター計画が成功すれば、ベルー最大の産業クラスターとして立ち上がるであろう。中国の企業家とケニア大統領との投資交流会でもデジタル経済や新エネルギー分野の投資について議論が交わされた。今回のサミットでは多くの企業家が参加し、今後の経済交流や投資について積極的に意見交換を行い、民間でのさらに活発な交流に新たな可能性を提示した。

 外交部副部長の馬朝旭は、「今回のサミットは、協力文書の締結のみならず、協力メカニズム、プロジェクト、投資、支援措置等でも多くの成果を生み出すと予測する。1~2回目のサミットをはるかに超える成果の規模だと思う」とコメントした。

 世界銀行・東アジア太平洋地域(EAP)担当副総裁のマヌエラ・フェッロ氏も「中国が一帯一路イニシアティブを通じ、新たな多国間協力体制を導入している。貿易、インフラ、投資、民間の関係改善を通じ、国境と大陸を超えた経済統合を目標としている」とした。一帯一路の共通インフラプロジェクトが全て終われば、2030年まで毎年1兆6000ドルの収益が創出される見込みである。

 基盤づくりの10年を経て、次のステップに向け展開されている一帯一路。いつも以上に盛大に開催されたサミットは、これから活発になる国際貿易とビジネスの前兆とも言える。民間企業も加わり、規模がより大きく、協力分野がより多岐に渡るようになった今、経済社会、学術社会等で中国が示すイニシアティブに注目が集まっている。