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【23-78】国際大都市科学技術イノベーション能力、北京、深圳が世界1、2位に

松田侑奈(JSTアジア・太平洋総合研究センターフェロー) 2023年11月24日

 Clarivate analytics社と上海科学技術情報研究所は「国際大都市科学技術イノベーション能力評価報告書2023」を公開した。当該報告書は2015年から始まっているが、50のグローバル都市を対象に、イノベーショントレンド、イノベーションイッシュー、イノベーション品質、イノベーション主体、イノベーション協力の5つの指標で、総合的なイノベーション能力を評価している。

 50都市には、中国の都市11カ所、アメリカの都市12カ所が入っており、ここでも米中戦略競争構造が見えてきた。

1.中国では4つの都市がTOP10入り

 1位は北京で、今年で6年連続となった。続く2位は深圳で、今年初となる快挙である。TOP10には上海と杭州もランクインしている。杭州は今年初めてTOP10入りを果たした。

表 国際大都市科学技術イノベーション能力TOP10
順位 都市名 順位変動
北京 中国
深圳 1↑ 中国
ケンブリッジ 1↓ アメリカ
上海 2↑ 中国
東京 1↓ 日本
ボストン 1↓ アメリカ
ロンドン イギリス
ニューヨーク アメリカ
杭州 3↑ 中国
10 シンガポール 1↓ シンガポール

2.「量」で強みを見せる中国、「質」で強みを見せるアメリカ

 報告書では、各国の論文や特許について比較検討を行い、TOP11都市を選定したが、量という観点で比較した場合、PCT特許、SCI論文数、CPCI論文数いずれにおいても、中国がかなりの強みを見せており、8つの都市がTOP11にランクインした。ただ、質を基準に比較した場合、中国は量で見せた勢いとは真逆の結果となった。アメリカは6つの都市がTOP11にランクインした一方、中国では上海と北京のみがTOP11入りを果たした。

 また、ChatGPTのリリースによって、生成AI(AIGC)が人工知能の中で最も注目を集める技術となっている中、中国で発表されているAIGC関連論文の数は8769本で世界トップとなった。この数値はアメリカ(3765本)とヨーロッパ(2865本)の論文数を足したものよりも多い。ただ、1本あたりAIGC論文被引用回数は、アメリカが19回であるのに対し、中国は6.7回と、研究成果の質ではアメリカに及ばない結果となった。

3.東京、北京、深圳を中心とするPCT特許研究開発協力ネットワーク

 当該報告書では、2021年に公開されたPCT特許に基づき、50都市のPCT特許研究開発協力状況をマッピングしているが、世界は東京、北京、深圳を中心に活発な協力ネットワークが形成されている(下記図を参照)。

 これらの研究開発協力ネットワークには、①企業内部型、すなわち企業内で都市を跨いで構築する研究開発協力ネットワークと、②研究開発主体間型、異なる研究開発主体が互いに協力しあい構築するネットワーク、の2つの類型がある。中国では企業内部型が、アメリカ・日本・ヨーロッパでは研究開発主体間型が主流である。

 最も緊密なネットワーク関係を見せたのはBOEテクノロジーグループ北京本部と成都支社で、国を跨ぐネットワークではByte Dance社の北京本部とロサンゼルス支部が最も活発なネットワークを構築していた。

 なお、中国の3大都市北京・上海・深圳とヨーロッパ、アメリカ、日本とのPCT特許国際協力状況を見てみると、申請総数は、それぞれ2019年899件、2020年1623件、2021年1179件と、年によって大きく変動する一方、詳細な内訳を見ると、中国3大都市と日本の協力数は増加傾向にあるのに対し、アメリカとは減る一方であった。ヨーロッパとは大きな変動がなかった。

 総じて、中国の大都市のイノベーション能力は、全体的には向上していると言える。ただ、細かく指標を分析するとアウトプットの質の面では、まだアメリカやヨーロッパの都市との間に差があることが見えてきた。PCT特許においては、北京、深圳が世界のネットワークの主柱となっており、グローバルイノベーションにおける中国の大きな存在感を改めて実感できるポイントであった。

 

図 50都市のPCT特許研究開発協力状況

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出典:国際大都市科学技術イノベーション能力評価報告書