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【24-20】生態系の難題解決を目指すグローバルビッグサイエンス計画(その1)

陸成寛(科技日報記者) 2024年04月10日

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「ダブルカーボン」(二酸化炭素排出量ピークアウト・カーボンニュートラル)目標の達成に向け、中国の東北三省(黒竜江省、吉林省、遼寧省)は、クリーンエネルギープロジェクトの建設を急いでいる。写真は大連市荘河の洋上風力発電プロジェクト。(撮影:楊青)

 昨年12月にアラブ首長国連邦(UAE)のドバイで開かれた「気候変動に関する国際連合枠組条約」(UNFCCC)第28回締約国会議(COP28)では、各方面の関係者が一堂に会し、深刻化する気候危機にどのように対応するかについて話し合った。

 気候変動と人間の活動の影響を受け、世界の陸上生態系の25%が劣化を示しており、この割合は2050年までに75%に上昇すると予測されている。

 気候変動の脅威に対応し、世界が持続可能な開発の道を歩むことができるよう、生態系回復とカーボンニュートラルグローバルビッグサイエンス計画(Global-ERCaN)育成特別プロジェクトはこのほど、第1回学術交流会を開催。国際連合環境計画(UNEP)や国連食糧農業機関(FAO)といった国際機関や、中国を含む十数カ国の専門家・学者が集まり、グローバル科学研究交流・協力を実施することで一致した。今後は世界が直面している生態系関連の難題を解決できるよう協力する。

 中国科学院院士(アカデミー会員)の于貴瑞氏は科技日報の取材に対し、「生態系劣化と気候変動への対応が現在、世界が直面している重大な課題だ。中国はこの2つの分野で幅広い国際協力関係を築き、科学的な方法により、課題に対処する『カギ』を見つける必要がある」と見解を述べた。

生態系回復が問題解決の「カギ」

 地上のカーボンシンクのモニタリング能力をどのように高めることができるのか? 中国の陸上生態系回復プロジェクトのカーボンニュートラルに対する寄与をどのように評価するのか? Global-ERCaN育成特別プロジェクト第1回学術交流会では、こうした問題について、学者が踏み込んで意見を交換した。

 同プロジェクトは、于氏と統合的炭素循環観測システム(ICOS)のWerner Kutsch事務総長が共同で提唱して始動したものだ。2023年1月、中国科学院国際協力局は正式に同プロジェクトを承認した。

 2021年6月5日、「国連生態系回復の10年(2021~30)」イニシアティブが本格的に始動した。イニシアティブでは、協力プラットフォームの構築を目指し、関連の各方面が生態系の保護や修復に参加して、生態系回復をサポートすることで、持続可能な開発目標(SDGs)の実現を推進する。また、気候変動の脅威への対処という国際的背景の下、カーボンニュートラルを実現することが共通の認識となっている。

 于氏は「生態系回復とカーボンニュートラルは、1つの問題における2つの面、1つの地球システムにおける2つの側面だ。生態系劣化は、人間の活動による自然環境破壊や人間の資源の過度な利用に起因している。その問題を解決する『カギ』は生態系回復だ。生態系回復を科学的に推進してはじめて、カーボンニュートラル実現のために努力しながら、生態系の持続可能な開発に寄与することができる」と強調した。

 実際には、1960~70年代に国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が、国際生物学事業計画(IBP)と、人間と生物圏(MAB)計画を相次いで実施した。この2つの計画は世界の生態系回復や炭素循環などの過程を体系的に研究することを目的としていた。このほか、中国や米国、英国などの国も国際長期生態学研究ネットワーク(ILTER)、国際フラックス研究ネットワーク(FLUXNET)、地球クリティカル・ゾーン観測計画といった世界の学術機関との国際科学計画を提唱した。

 Global-ERCaN育成特別プロジェクトの調整役を務める中国科学院地理科学・資源研究所の牛書麗研究員は「既存の国際科学計画は、生態系回復とカーボンニュートラルを対象としたグローバルビッグサイエンス計画ではない。現時点で、世界において生態系回復とカーボンシンクを対象とした長期観測・試験データは依然として不足している。発展途上国においては、科学的問題と管理をめぐるボトルネックも山積みで、こうしたことが世界の持続可能な開発やカーボンニュートラルをめぐる目標達成の足かせとなっている。世界が力を合わせて、生態系回復とカーボンニュートラルを対象にモニタリング・評価を行い、生態系回復の過程における炭素循環の動的変化やその環境応答のメカニズムを認識することが急務だ。このことには、SDGsを達成し、気候変動に対応する上で重要な科学的意義がある」と説明した。

その2 へつづく)


※本稿は、科技日報「用国际大科学计划解决全球生态难题」(2024年1月2日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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