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【24-30】今年の夏、中国で異常高温になる可能性は?

付麗麗(科技日報記者) 2024年07月19日

太陽が照りつける中、日傘をさして朝陽公園を歩く北京市民。(撮影:陳鍾昊)

 世界の複数の国が最近、熱波に見舞われている。パキスタンでは国内の大部分の地域で40℃を超える高温となっており、南部のシンド州では観測史上最高に迫る52℃を記録した。インドも熱波に見舞われており、複数の地域で連日、気温が45℃を超えており、死者も出ている。

 今年の夏は中国でも、こうした異常高温になるのだろうか?

気候や地形などの要素が重なり高温に

 インド北部やパキスタンの一部の地域では、猛暑の影響で平均気温が例年に比べて2~4℃高くなり、平均最高気温も例年より2~5℃高くなっている。

 中国国家気候センター研究員で中国地質大学(武漢)の任国玉教授は取材に対し「これらの地域の高温は、例年の同時期と比べてさほど異常とは言えない」との見方を示した。

 実際、インドやパキスタンなどの国では毎年3月から6月にかけて、異常な高温に見舞われる。

 今回の熱波をもたらした要因は何か? インドを例にすると、地形や気候といった要因が重なったことが、高温につながっている。

 地形を見ると、インドは北部にヒマラヤ山脈が連なり、南部にはデカン高原、中央には広大なヒンドゥスターン平野が広がっている。平野の大気の層は相対的薄く、拡散されにくく、気温が急上昇しやすい。

 気候の面では、インドが位置する南アジア地域は主に熱帯モンスーン気候の影響を受けている。5月下旬から6月初めにかけて、南アジアではモンスーンはまだ発生しておらず、インドの上空は亜熱帯高圧帯に覆われ、雲が少なく、降水量も少なく、日差しが強い。そして、土壌の水分量も少ないため、蒸発による熱の消費も少ない。

 任氏は「春分以降、太陽は地球の赤道上を直射し、その後は、少しずつ北上してインド亜大陸へと移動する。そして、インド亜大陸の北部と西部では、高緯度から移動してきた冷たい空気が高い山に阻まれ、北西風や北風が吹いたとしても、山を下った気流がフェーン現象の影響を受け、暖かくて乾いた風となり、暑さが一段と厳しくなる」と説明した。

2024年は前年よりも暑くなる可能性

 2023年は中程度のエルニーニョ現象が発生した。

 国家気候センター・気候サービス首席専門家の周兵氏は「通常、エルニーニョ現象が起きた翌年は、異常気象がより一層多発しやすい。2024年は23年と比べて、さらに暑くなる可能性があり、異常気象の発生も増えるだろう」と予測している。

 エルニーニョ現象の予測・研究に長年従事している中国科学院大気物理研究所の鄭飛研究員は「24年に世界の地表付近の平均気温が過去最高を更新する確率は60%だ」と見解を述べた。

 国家気候センターの首席予報士である鄭志海氏は「2000年以降、中国の華北地域や黄淮地域、江淮地域、江南地域、華南地域などでは、夏の高温現象が起こる確率が大幅に上昇する傾向にある。24年の夏、中国の大部分の地域で気温が例年より高くなるだろう。中でも、華北地域や内モンゴル自治区中・西部、華東地域南部、華中地域南部、華南地域、西南地域南部、西北地域、新疆ウイグル自治区などで高温に注意する必要がある」との見方を示した。

 鄭志海氏はさらに「2024年に高温の影響を受けるのは南部の地域が多く、主に江南地域南部や華南地域一帯に集中するだろう。長江流域で22年の夏に続いた高温と干ばつは、複数の要因によって引き起こされた異常気象だった。24年に同様の現象が起きる可能性は低い」と述べた。

エルニーニョ現象は終息の兆し

 世界気象機関(WMO)が発表した予測によると、23年から24年にかけて、世界の気温上昇と異常気象の原因となっていたエルニーニョ現象は終息の兆しを見せている。しかし24年後半には、ラニーニャ現象が発生する可能性がある。

 エルニーニョ現象とは、太平洋中部と東部の海面水温が平年より高くなることに関連する気候現象だ。一方、ラニーニャ現象はその逆で、上記海域で海面水温が平年より低くなることに関連する。ラニーニャ現象は、強いエルニーニョ現象の後に発生することが多く、これらの現象は、一部地域における持続的な干ばつや洪水といった自然災害の発生と関係がある。

 WMOは「今回のエルニーニョ現象は23年12月にピークに達した。2024年7月から9月にかけて、ラニーニャ現象が発生する可能性は60%で、8月から11月にかけて発生する可能性は70%に達する」としている。

 また、「エルニーニョ現象は終息に向かっているが、長期的な気候変動が一時停止するというわけではない。温室効果ガスの影響を受け、地球は今後も温暖化が続く」との見方を示している。


※本稿は、科技日報「今夏我国是否会出现极端高温天气」(2024年6月13日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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