【24-33】「人食いバクテリア」は本当に「人を食べる」のか?
葉 青(科技日報記者) 張婷婷、戴希安、簡文楊(科技日報通信員) 2024年07月31日
「人食いバクテリア」は劇症型溶血性レンサ球菌と呼ばれるレンサ球菌の一種だ。(画像提供:視覚中国)
日本で「人食いバクテリア感染症」と呼ばれる「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(STSS)」の今年の感染者数が1000人を超えたというニュースが、中国でも最近注目を集めた。「人食いバクテリア」は本当に「人を食べる」のだろうか? また、どのようにすれば感染を効果的に予防できるのだろうか?
中山大学附属第六医院感染症科副主任の魏芳芳医師は「『人食いバクテリア』は『劇症型溶血性レンサ球菌』と呼ばれるレンサ球菌の一種だ。レンサ球菌は自然界に幅広く存在しており、皮膚や上咽頭部、腸などにもいるような、ごくありふれた常在菌だ。レンサ球菌は病気を引き起こす主な病源体の一つでもあり、感染すると患者は感染性、中毒性、変態性反応病変が起きる」と説明した。
STSSは、劇症型溶血性レンサ球菌の外毒素によって引き起こされる毒素性ショック症候群である。免疫力が落ちている時にSTSSに感染すると、患者の組織が壊死することがあり、肉を食べられたように見えることから「人食いバクテリア」とも呼ばれている。
STSS感染の初期症状には、上記のほか、のどの痛みや発熱、食欲不振、下痢、嘔吐といった消化器疾患の症状がある。また、低血圧などの敗血症症状が伴うこともある。病状が悪化すると、軟部組織病変や呼吸不全、肝腎不全などの多臓器不全が起こり、ショック症状が起きることもある。STSS患者は発症してからショック症状や多臓器不全などが起きるまでに通常わずか24~48時間で、致死率は30%にも達する。
STSSは主に呼吸器を通じて、あるいは皮膚や手術の傷などに直接接触して感染する。魏氏は「皮膚潰瘍の患者や手術を受けたばかりの人、皮膚潰瘍を引き起こす病気に最近感染した人、糖尿病を含む基礎疾患のある人、アルコール依存症患者、痛み止めや非ステロイド性抗炎症薬をよく使用している人などは特に注意が必要だ」と語った。
魏氏はさらに「『人食いバクテリア』は臨床上で比較的よく見られるもので、その重症化率と致死率が高い。だが、臨床上において実際に重症化する割合が非常に低いため、過度に心配する必要はない」と述べた上で、「近いうちに、STSS感染者が多発している地域に行く人は、人混みを避け、ソーシャルディスタンスを保ち、必要な場合はマスクを着用したほうがいい。また、手を清潔に保ち、不特定多数の人が触る場所には、できるだけ手を触れないようにしたほうがいい。発熱やのどの痛みなどの症状が起きて病状が急速に悪化した場合は、速やかに病院に行くべきだ」と注意を呼び掛けている。
※本稿は、科技日報「"食人菌"真的会"吃人"?」(2024年7月2日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。