【24-44】中国各地で大規模な海水逆流が起きたのはなぜか?
陳 曦(科技日報記者) 2024年12月03日
中国の遼寧省や河北省、天津市などでこのほど、大規模な海水の逆流が発生した。遼寧省の盤錦市や営口市などでは、逆流した海水が街や民家にまで流れ込んだ。
中国国家海洋局北海予報センターの劉清容シニアエンジニアは「渤海と黄海北部で起きた異常な増水の影響を受けた範囲が広く、影響が長引き、極端な現象となった。歴史的にも非常に珍しい」と説明した。
では、中国の複数の地域で、突然、海水の逆流が起きた原因は何なのだろうか。また、どのようにして逆流が起きたのだろうか。専門家に聞いた。
大潮と気象的要因が重なったため
北京市気候センターの王冀主任は「海水の逆流は、海水が地表を流れて陸地に達することを指し、主に沿海地域や河口で発生する。今回、中国の複数の省・市の沿岸地域で突然、海水の逆流が起きたのは、主に、大潮と気象的要因が重なったのが原因だ」と説明した。
大潮は、太陽と月が地球と一直線上に並んだ時、起潮力が最大となって起きる現象だ。浙江省を流れる銭塘江で起きた大潮がその典型的な例だ。
大潮の期間は、地球と月の距離が普段より近くなるため、引力が大きくなり、表層の海水を引っ張る力がより顕著になる。引力が強くなると、海面が上昇する際の勢いがさらに激しくなる。
天津市天文学会の閻為国理事長によると、大潮が起きた場合、海面の水位が上昇し、沿海地域の土地が低く平らであったり、海と陸地の水位の落差が大きかったりすると、海水の逆流が起きやすいという。
一般的に言えば、大潮は、旧暦の毎月2日、3日、または17日、18日ごろに起きる。今回、中国の沿海地域で海水の逆流が起きたのもちょうど旧暦の18日に当たる10月20日と、旧暦の19日に当たる10月21日で、大潮が発生する法則と合致していた。
王氏は「気象的要素も、海水の逆流に影響を与える。今年の増水期に、中国の東部地域では降水量が大幅に増加した。雨がたくさん降ったことで、陸地の水量が増えるとともに、海の水量も増えた。海水の逆流が起きる1週間前には、中国の北方地域の沿海地域でまとまった雨が2回降り、海の水量が大幅に増えていた」と説明した。
そして、「今回の大潮が発生する前に、中国の北方地域と南方地域の一部沿海地域で海から陸へ吹く海風が発生した。それが下から上に吹き上げる形となり、中国の一部沿海地域の海面の水位が上昇した」と指摘した。
背景には世界的な温暖化や過剰な採砂も
王氏によると、これまで起きた海水の逆流を見ると、気候変動や地下水の過剰採取も影響している可能性がある。
例えば、気候変動の影響で、非常に強い熱帯低気圧や温帯低気圧が発生し、海面の高さが異常に高くなり、高潮が起きやすくなる。高潮の襲来を受けると、大量の海水が陸地に流れ込み、海水の逆流が起きる。
王氏は「海水逆流の背景には、世界的な温暖化もある。世界的に気温が上昇し、氷河が溶け、海水が熱膨張し、世界の海面が上昇している。地下水の過剰採取や過剰な採砂などによって、海水と陸地の淡水間の圧力のバランス、川の流れと海の間の流体力学的バランスが崩れ、海水の逆流が起きる可能性が高くなる」と語った。
地形と地勢も海水の逆流が起きる原因の一つとなる。王氏によると、くぼ地やラッパ状の河口は、海水の逆流が起きる可能性が高いという。
劉氏は「関係部門が今後、AI技術を活用し、数値予報とスマート予報を組み合わせた総合的予報・早期警報システムを開発し、モデルの予報の精度と迅速対応能力を高める必要がある」と指摘。「関係部門が海洋災害監視能力を高め、新たな監視手法と技術を採用し、監視ネットワークの展開を最適化し、立体的な監視ネットワークを構築すべきだ」と述べた。
※本稿は、科技日報「全国多地为何突然出现海水倒灌」(2024年10月31日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。