【25-13】2025年前半の中国ネット統計を読み解く
2025年04月18日

山谷 剛史(やまや たけし):ライター
略歴
1976年生まれ。東京都出身。東京電機大学卒業後、SEとなるも、2002年より2020年まで中国雲南省昆明市を拠点とし、中国のIT事情(製品・WEBサービス・海賊版問題・独自技術・ネット検閲・コンテンツなど)をテーマに執筆する。日本のIT系メディア、経済系メディア、トレンド系メディアなどで連載記事や単発記事を執筆。著書に「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか?中国式災害対策技術読本」「中国のインターネット史:ワールドワイドウェブからの独立」(いずれも星海社新書)など。
2024年末時点での中国のインターネット利用状況の統計が揃ったので紹介する。中国が海外とのネット通信に成功したのが1994年なので、中国は世界的にも特殊なインターネット環境ではあるが、2024年はインターネット接続30周年であり、2025年は31年目となる。
資料は25年1月に発表された事実上の中国のオフィシャル統計である「CNNIC(中国互聯網絡信息中心)」発の「第55次中国互聯網絡発展状况統計報告(以降、CNNIC報告)」と、3月にQuestMobileから発表された「2024中国移動互聯網年度大報告(以降、QuestMobile報告)」を利用する。
インターネット利用者数はCNNIC報告によれば11億833万人で、人口に対するネット利用率は78.6%、農村での利用者数は3億1300万人で利用率は67.4%と、3人に2人以上が利用している。なお都市部での利用率は85.3%だ。これだけ普及しているとも言えるが、中国ではスマートフォンが生活や旅行などの移動で不可欠ながら、まだインターネットを利用していない人が1億人以上いる、とも言える。この調査では6歳以下は含まず、60歳以上のインターネット利用率は52.5%と約半数なので、農村と高齢者がインターネットを利用していない主な層となる。
ちなみにQuestMobile報告によれば、中国のモバイルインターネットの月間アクティブユーザー数は12億5700万とある。これは中国におけるサービス利用のユーザー数であり、たとえば2枚以上のSIMカードの番号で複数のアカウントを活用している人や、中国人以外の利用者が利用している可能性が考えられる。
高齢者がインターネットを利用しない理由として挙げるのが(複数回答可)、「ネットがわからない(30.9%)」「ピンインがわからない(20.9%)」「設備がない(12.0%)」「歳を取りすぎている(10.8%)」「必要だと感じない(6.1%)」「時間がない(5.4%)」となる。どうすればネットを使おうとするのかという質問(複数回答可)には「家族や親族との連絡が便利になれば(18.7%)」「高齢者にも優しいネット端末があれば(18.4%)」ほか、「農産物が売れるようになれば(15.7%)」「ネット利用代が下がれば(15.7%)」「無料でネット利用トレーニングができれば(15.7%)」「医療健康情報などが取得できれば(14.6%)」「商品購入が便利になれば(10.7%)」となっている。上位回答でも2割弱であり、これといった高齢者にやさしいスマートフォンも登場していないことから、今後も頑として利用しないのではないかと考える。
農村部でのネット普及についてだが、農村の集落に関しては通信と物流インフラが整いつつあり、オンラインショッピングでモノが届くだけでなく、ライブコマースを通して農作物が売れるようになりつつある。儲かるならばネット利用者が増えるのは中国でよくあることなので、農村でのインターネット利用者は今後増え、利用用途も娯楽用途にとどまらずビジネス用途も増えていくだろう。
ところで中国でインターネットの多くのサービスを利用する際は、身分証番号の登録が必要な携帯電話番号での登録が必要となる。したがって中国でインターネットを利用する端末と言えば、まずはスマートフォンで、パソコンやタブレット、スマートテレビはスマートフォンをフォローする端末という扱いだ。スマートフォンを利用してネットを利用している人がネットユーザーの99.7%とほぼ全てであるのに対し、デスクトップパソコンは36.2%、ノートパソコンは32.0%、タブレットは30.8%、スマートテレビは25.1%、スマートウォッチなどのウェアラブルデバイスは23.8%、スマートフォンや指紋や顔認証で解錠するスマートロックなどのスマートホーム製品は22.6%、スマートカーは10.7%となっている。
インターネットの利用用途はCNNIC報告によると、以下のようになる。
インスタントメッセージ 10億8133万人(97.6%)
動画 10億7018万人(96.6%)
ショート動画 10億3953万人(93.8%)
キャッシュレス払い 10億2891万人(92.8%)
オンラインショッピング 9億7443万人(87.9%)
検索 8億7782万人(79.2%)
ライブストリーミング 8億3303万人(75.2%)
ニュース 8億1100万人(73.2%)
音楽 7億4795万人(67.5%)
フードデリバリー 5億9231万人(53.4%)
ネット小説 5億7491万人(51.9%)
オンライン業務 5億7048万人(51.5%)
オンライン旅行予約 5億4836万人(49.5%)
配車サービス 5億3945万人(48.7%)
オンライン医療 4億1393万人(37.9%)
ネットラジオ 3億3189万人(30.4%)
このうちキャッシュレス、ネット小説、フードデリバリー、ネット小説の利用者増が比較的顕著で、それ以外は微増、ショート動画は微減となった。
またCNNIC報告によると、中国人の毎週平均のネット利用時間は28.7時間(1日平均換算で4.1時間)で、前年よりも2.6時間延びた。QuestMobile報告によると、毎月平均171.7時間(同5.7時間)で、前年より6時間弱増えている。
中でも突出して長い時間を消費しているのが抖音(中国向けTikTok)などのショート動画と、微信(WeChat)などのインスタントメッセージングだ。数値からは、多くの人が抖音をはじめとしたショート動画の虜になっているが、ショート動画に見切りを付ける人も出てきている。
CNNIC報告によれば、中国でしばしばトレンドとなる生成AIの利用者が増えており、人口の17.7%にあたる2億4900万人が生成AIを使用したことがあると回答。主に質問用途で使っているという。既に2億5000万人近くが生成AIを利用しているわけだが、この調査は去年末の段階のものでDeepSeekは今年に入って話題になった製品であり、現在はさらに多くの人が生成AIを見聞きし、利用しているだろう。
関連リンク
CNNIC「第55次《中国互聯網絡発展状况統計報告》」
QuestMobile「2024中国移動互聯網年度大報告」