日中の教育最前線
トップ  > コラム&リポート 日中の教育最前線 >  【17-04】「双一流」の発表について―当事者に聴く中国教育事情

【17-04】「双一流」の発表について―当事者に聴く中国教育事情

2017年11月 7日 金国峰(日本留学信息中心)

はじめに

 2017年9月21日に中国で「双一流」建設大学と建設学科のリストが公表され、多くの注目を集めました。「双一流」建設大学及び建設学科とは、特定の大学または学科を世界的な見地から、一流にすることを目指した改革案です。

 公表してすぐに中国のあらゆる教育関係のサイトでトップニュースとなり、SNSでも急激に拡散しました。今回は公表機関の記者の質問に対する解答と中国国内での「双一流」に対する見方をまとめて分析してみます。

「双一流」の発表について

 まず、公表された「双一流」リストは大学と学科の二部分で構成されております。

 大学の部に入選したのは42校でA類とB類と分かれており、A類は36校が入選し、北京大学、清華大学、復旦大学等が選ばれ、B類は6校で東北大学、湖南大学、雲南大学等が選ばれました。

 学科の部に入選したのは95校で、北京大学が哲学や理論経済学等の41学科が入選数でトップとなり、次に清華大学が34学科、浙江大学が18学科、復旦大学と上海交通大学がそれぞれ17学科入選しました。

 2015年8月中央全面深化改革指導チーム第15回会議で「世界一流大学と世界一流学科の統括推進総体企画」(以下は総体企画と略す)に対する審議が行われました。

 2017年1月に教育部・財政部・国家発展改革委員会で「世界一流大学と世界一流学科の統括推進実施方法(暫行)」(以下は実施方法と略す)を公表し選抜条件・選抜過程・支持方式・管理方式・組織とその実施方法について明確にしました。

 「総体企画」と「実施方法」によると、「双一流」建設は5年を一つの周期として、一流にする大学の総数をコントロールし、自由に競争を行い、能動的に調整を行います。

 続いて、教育部・財政部・国家発展改革委員会の責任者が記者の「双一流」に関する質問に対する回答です。(報道の内容が多く、こちらでは有益な情報だけをまとめました。)

Q1:「双一流」大学と学科はどのように選出しましたか?

A1:「双一流」大学と学科は「総体企画」と「実施方法」に基づいて四つのステップを経て選出しました。

 一、「総体企画」と「実施方法」に基づき専門家委員会を設立し、具体的な選抜認定と審査・建設(設置)に関する仕事を担当します。

 二、専門家委員会は学科に基づき選抜する基準を明確にし、最初は大学と学科のリストを作成します。具体的には三つの段階があります。まず、総合的に第三者の評価と権威性・影響力および大学の社会的認可度を考慮して、第三者の評価の信憑性を証明してから採用します。次は、人材育成と学科のレベルに対する評価を中心として、国際評価・国家戦略・独自性等の要因を議論し、一流大学の基準を認定します。最後に基準に基づいて137校の一流を目標とする学科及び大学を提案します。

 一流を目標とする学科及び大学リストを基礎として、総合評価を行いさらに42校を重点とする提案をしました。その後、専門家委員会の提案を基に政府内の教育部・財政部・国家発展改革委員会が審議して「双一流」大学と学科の暫定リストを作成します。

 三、暫定の企画案を作成し地方政府或いは地方の管轄機関が審査してから教育部・財政部・国家発展改革委員会に報告します。教育部・財政部・国家発展改革委員会で研究して暫定の建設方案を改善します。

 四、教育部・財政部・国家発展改革委員会は専門家委員会の意見で一流大学や一流学科建設大学および建設学科を確定します。最後に国務院へ報告して許可を貰います。

Q2:選抜作業にはどのような刷新がありますか?

A2:従来の教育改革の経験を利用し、今回の改革は以下の通りとなります。

一、専門家委員会を設立して専門家の経験を基にし、各機関・大学・研究機構・学会協会とコンサルティング機構を構成しますが、これはこの政策をスムーズに実施するための保証でもあります。

二、選抜する過程を改革しました。大学の申請も管理部門の推薦も不要です。専門家委員会で国家戦略や独自性のような要素を考慮した公平公正な競争システムです。

三、第三者の評価を利用することにしました。選抜基準となるデータとその根拠は中国国内と国外にある権威的な第三者による評価によって決定します。

 また強調すべき点は、選抜後も継続して評価が行われることです。「双一流」は学科のレベル向上を基礎としてその過程に対して監督を行います。大学は企画案と自己評価報告書を提出して、影響力のある第三者による評価を参考としてレベル向上の効果を評価します。評価結果によって成果が著しい大学には支援を増大しますが、成果がない大学には警告して支援を減らすかを決定します。大学に重大な問題が発生した場合あるいは警告しても改善が見られない場合は、大学に対してレベル向上の要件を満たさないと判断し「双一流」の対象から除外します。レベル向上がされたかどうかは最終的には大学側が行う企画案と自己評価報告によって行います。評価結果によって、次の「双一流」の対象を決めます。

Q3:第三者評価はどのように選択しますか?

A3:第三者評価は現在国外と国内に何十種類かあります。専門家委員会では多くの意見をまとめ第三者評価の権威性と影響力および大学の認可度等を考慮します。また、中国での実現性も含めて採用した国内での評価及び国際的な評価は:

1) 四種類の第三者による国内評価:

A 人材育成のレベル、学部生と大学院生の教育を含む

B 学科レベル、大学学科が高い水準である

C 貢献奨励、大学学科の社会的貢献ができる

D 政策動向、総合的に考慮して大学が国家の重大要求と重大発展戦略および政策連続性等の要素を満たせる

2) 大学の認可基準が高めで、客観的な国際第三者学科評価で、学科の実力および国際影響力を現せる。

私の考え

 今回ネット上で資料を収集する段階で「双一流」は「211」と「985」に継ぐ新たな教育政策であると言う憶測が多く見受けられました。その為、今回の改革は実に注目度が高いものであったと実感しました。また、従来の「211」と「985」と比べて選抜方式の面で大きく変更がございました。「211」と「985」大学は地方政府か教育機関の推薦によって選抜しましたが、さらに客観的な第三者の意見を取り入れたことも大きいと思います。また、「双一流」に選ばれた大学を競争させるシステムが大学を如何に発展させるか期待しています。

ご参考に

 「総体企画」と「実施方法」に興味のある方へリンクを提供します。

  • 国务院关于印发统筹推进世界一流大学和一流学科建设总体方案的通知(世界一流大学と世界一流学科の統括推進総体企画)
    http://www.gov.cn/zhengce/content/2015-11/05/content_10269.htm
  • 关于印发《统筹推进世界一流大学和一流学科建设实施办法(暂行)》的通知(世界一流大学と世界一流学科の統括推進実施方法(暫行))
    http://www.gov.cn/xinwen/2017-01/27/content_5163903.htm#1

筆者より

 「当事者に聴く中国教育事情」は2010年に中国現地にいる日本留学志望者に資するために設立した大学連合事務所の定期情報として発刊しました。2015年4月に現在の名称・体裁に変更しました。私たちは中国の学生向けに日本の大学について定期的に情報を提供しておりますので、より多くの日本の大学と情報交換したいと思います。ぜひお気軽にご連絡ください。

 E-mail: image(金国峰)(王璨)

※本稿は、日本留学信息中心が発行しているメールマガジン「当事者に聴く中国教育事情」2017年第54号を、日本留学信息中心の許可を得て編集し転載したものである。