【22-08】横並びを打破し、大学の特色を引き出す分類管理を推進
魏依晨(科技日報記者) 2022年09月13日
画像提供:視覚中国
良い大学の基準は一つではなく、大学分類評価は、大学の多様性の基本的な法則を尊重している。大学が大学分類評価体系の世代交代に継続的、かつ密接に関わるように取り組み、評価体系の成果評価、診断・分析、価値発見などの機能を継続的に整備しなければならない。多様性は高等教育が普及化発展の段階に入った基本的な特徴で、異なるタイプの大学が卓越性を追求し、特色を際立たせるようにしなければ、高等教育が国の近代化のために全面的な下支えをすることはできない。
張端鴻 同済大学高等教育研究所副所長
どのようにすれば、公平、かつ客観的大学の運営レベルを評価することができるだろう?江西省が最近、その「答え」を出した。
江西省教育庁が打ち出した「江西省普通学部大学分類管理実施規則(試行)」(以下「実施規則」)は、大学分類体系を構築し、大学の分類発展を推進し、大学分類評価を実施することで、大学の内包的発展、特色ある発展推進を加速することを目指している。
実際には、そのような取り組みは江西省が初めてではなく、中国では近年、大学分類管理が各地で「花」を咲かせている。
大学のタイプごとに発展ルートを設置
江西省教育庁の関係責任者によると、大学分類審査管理の目標は、質の高い高等教育体系構築を加速し、高等教育の『包囲突破』を推進することだという。
取材してみると、「実施規則」は、江西の大学の実際の状況に立脚し、同省の経済・社会の発展のニーズに合わせて、同省の普通学部大学を「研究型」と「応用型」に分類し、うち「研究型」は、「学術研究型」と「教育研究型」に分類していることが分かった。
江西省教育庁は、同省の大学の全体的な発展計画や具体的な分類基準に基づいて、学校の申請意欲とあわせて、各大学のタイプを決めるための調査を行った。普通学部大学43校の分類管理を本格的に始め、うち4校が「学術研究型大学」、9校が「教育研究型大学」、30校が「応用型大学」と位置付けられた。今後は、「応用型大学」の中からモデル応用型大学8-10校を厳選し、重点的にサポート・建設を進める計画だ。
大学を分類して審査・管理するとなれば、どのような基準で分類するのだろう?
同責任者によると、このような分類体系は、大学の発展の基礎と現実の条件を考慮したうえで、大学分類計画、分類発展をリードする枠組みを推進している。「研究型大学」は、一流学科や主力学科の建設を重点的に強化し、大学院教育を積極的に発展させ、中国においてハイレベルな大学の建設を加速させ、国の「双一流」(世界一流大学・一流学科)の仲間入りを目指している。一方、「応用型大学」は、地域の産業ニーズに積極的にマッチングし、専門学位の大学院教育を適度に発展させるよう奨励し、江西省の経済・社会の発展とマッチした応用型学部教育体系構築に取り組んでいる。
同責任者は「江西省では、差別化分類審査を実施し、『研究型』と『応用型』の大学に分けた評価・指標体系を研究・作成し、一流の専門、一流のカリキュラム、教育成果、教育改革プロジェクト、教育名教師などの面で、それぞれのコースを設置し、異なる評価基準を採用している。このほか、当省は同じタイプの中では競争し、異なるタイプは協力し合うメカニズムを構築し、大学の内生的原動力を呼び起こしている。また、分類評価結果の誘導的役割を強化し、分類評価結果と教育資源の分配、政策的サポート、チーム審査、業績に基づく給与の査定などを密接に関連付ける仕組みを段階的に推進している」と説明する。
南昌師範学院の党委員会副書記を務める張艷国学長は、「大学分類管理の理念は、『量体裁衣』、つまり、相手の実際の状況に合わせて、差別化され、発展性ある質の標準体系を制定し、大学自体が発展の実情を顧みずに、無理に統一基準に合わせようとすることを避けることができるようにしている」と説明する。
分類管理が大学の差別化発展を促進
中国の一部の大学は差別化が十分でないという見方もあるが、その根本的な原因は、管理スタイルや評価の方向性が似通っているからだ。大学分類管理改革は、「どの学校も似通っている」問題を打破するカギとなる取り組みと常に考えられてきた。
同済大学高等教育研究所の張端鴻副所長は、「大学分類管理は、高等教育に革命的な変化をもたらすだろう」との見方を示す。
まず、分類管理は大学が「一列に並ぶ」のではなく、「複数列に並ぶ」方向へと発展するよう導くことができる。そうすることで、社会全体の教育資源を統一して計画・統合し、学科建設と産業のニーズにあわせて、大規模発展を追求したり、総合的なモデル転換に取り組もうとする衝動を克服したり、大学の分類発展、特色ある発展の内生的原動力を強化することにつながる。
次に、分類管理により、大学は発展目標を明確化し、それ相応の評価体系を構築し、長所と短所、規模と効果、総合水準、項目ごとの水準などをはっきりさせることができる。
張副所長は、「良い大学の基準は一つではなく、大学分類評価は、大学の多様性の基本的な法則を尊重している。大学が大学分類評価体系の世代交代に継続的、かつ密接に関わるように取り組み、評価体系の成果評価、診断・分析、価値発見などの機能を継続的に整備しなければならない。多様性は高等教育が普及化発展の段階に入った基本的な特徴で、異なるタイプの大学が卓越性を追求し、特色を際立たせるようにしなければ、高等教育が国の近代化のために全面的な下支えをすることはできない」と指摘する。
重点に合わせて分類基準建設を加速へ
高等教育分類管理は、21世紀に入って以来、中国が研究・解決に力を注ぐ重要課題となってきた。2021年3月、第13期全人代第4回会議で可決された「中華人民共和国国民経済・社会発展第14次五カ年計画(2021‐25年)と2035年までの長期目標綱要」は、「高等教育分類管理と大学総合改革を推進し、さらに多元化した高等教育体系を構築しなければならない」と再び強調している。
上海は2015年、「上海高等教育展開構造・発展計画(2015--30年)」を打ち出し、全国に先駆けて大学分類管理改革を実施した。そして、2018年に、市内の普通大学62校を対象に分類管理を実施した。上海の大学分類管理の成功は、高等教育の運営同質化の大学運営傾向を打破し、中国全土の大学のモデルケースとなっている。上海は高等教育の評価の面での成功経験を積極的に総括し、再現可能な「上海モデル」を形成し、浙江省や山東省、遼寧省、天津市といった地域も続々と大学分類管理を展開するようになっている。
ただ、中国の高等教育が急速に発展するにつれて、高等教育の構造が日に日に複雑化し、社会が高等教育に求めることも日に日に多様化している。中国高等教育学会が、普通学部大学のそれぞれの位置付けを調査した最新統計によると、中国の普通学部大学2738校の位置付けには60種類以上ある。その名称や描写を見ると、雑然としていて、規範性に欠け、さらに28.1%の大学に至っては、明確な位置付けを描き出していない。このほか、位置付けを明確化している大学であっても、一部の「双一流」大学を含む多くの大学は、位置付けと実際の運営行為が一致しておらず、盲目的にハイグレードを追求し、有利な資源を獲得しようとするという問題が存在しているケースが多く見られる。こうした問題の存在は、統一された公認の大学分類基準が整っていないことと無関係ではない。そのため、上記の問題について、多くの教育専門家が、「各種大学の設置基準、資源配置調整案をできるだけ早く打ち出し、大学の分類評価実施を加速させるというのが、今後の中国の高等教育分類管理体系構築の重点となるようにしなければならない」との見方を示している。
厦門(アモイ)大学教育研究院の劉振天教授は、「教育管理当局が、複数の次元から、大学運営の資金投入と産出、運営の歴史と成果、運営の優位性と特色などを考察し、各大学の運営基準、方向性を明確化し、最終的に同じタイプの各レベルの大学が運営の活力を十分に発揮し、公平に競争できるようにすることを提案する。タイプ、レベルが異なる大学に関しては、協力を強化し、分野の枠を超えた複合型のハイレベル人材を育成する構造を作り出さなければならない。当面、中国の高等教育分類管理制度のトップレベルデザインを見ると、政府は依然として、タイプごとの大学設置の明確な基準を定めていない。そして分類基準が整備されていないことが、中国の高等教育分類管理改革を踏み込んで推進するうえで、重い足かせとなっている。現在、中国の高等教育は普及化発展の段階に突入しており、大学設置基準基準の問題解決に今すぐに取り組まなければ、分類管理はさらに複雑で、困難になるだろう」と指摘する。
張学長も「科学的な分類評価基準と指標体系を制定することが特に重要。また、中核ポイントを押さえ、大学の質の高い内包的発展を促進し、優勝劣敗を実現する必要がある。合理的に評価結果を運用しなければ、評価の誘導、激励、調整といった機能をより良い形で発揮させ、大学が急速、かつ良好に発展する急成長の段階に入り、たくさんのハイレベル人材を輩出する良好な局面を築き上げることはできない」との見方を示す。
※本稿は、科技日報「分類管理破除"千校一面" 推進高校科学定位、辦出特色」(2022年8月11日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。