【23-05】若手科学研究者の願いを叶える 重慶市が3回目の負担軽減行動を実施
雍 黎(科技日報記者) 2023年04月04日
【科学技術政策の着実な実施と方策】
重慶市牧畜科学院の若手科学技術者、葛良鵬氏とそのチームは1月28日(旧暦1月7日)、出勤するとすぐ、忙しく働き始めた。春節(旧正月)前に来訪した天津市の企業と、成果の実用化に関する提携について協議したところ、すぐに意気投合し、元宵節(旧暦1月15日)後から開始することが決まった。重慶市はここ数年、科学研究者の負担を持続的に軽減し、彼らが科学研究に集中できるようにしている。新たな成果が次々と湧き出ており、これらのチームは企業が協力を求める人気者になっている。
重慶市科学技術局は1月29日、同局と市財政局、市教育委員会がこのほど共同で通知を出し、市内全域で若手科学研究者に対する負担軽減特定行動(以下「負担軽減行動3.0」)を実施し、若手のイノベーションのポテンシャルと活力をより一層引き出すと発表した。
5方面18件の措置で、若手科学研究者の負担を全面的に軽減
今回の負担軽減行動3.0は、「大役を担う、チャンスを増やす、審査を減らす、時間を確保する、心身を強くする」の5つの面で着手する。科学研究プロジェクトの組織・実施方法の最適化、プロジェクト人材審査・評価メカニズムの改善、支援拡大、科学研究保障・科学技術サービスの強化など、18件の具体的措置を打ち出し、若手科学研究者の負担をさらに軽減する。
「大役を担う」とは、若手科学研究者が担当する市レベルの重要・重点科学技術特定プロジェクトの割合を引き上げることを指す。研究参加者に占める若手科学研究者の割合を60%以上とし、市レベルの重要・重点プロジェクトの責任者に占める割合を20%にする。同時に国家レベル・市レベルのイノベーションプラットフォームが若手科学研究者を集める能力を強化し、若手人材の育成・成長をプラットフォーム審査の重要指標とする。
「チャンスを増やす」の面では、基本科学研究費における若手科学研究者の資金援助に充てる割合を50%以上とし、市自然科学基金プロジェクトで若手科学研究者の資金援助に充てる割合を70%以上にする。博士研究員科学基金プロジェクト、博士直通車プロジェクトを実施し、若手人材発展の初期費用を提供する。また、条件に合致する大学や科学研究機関で、職業早期若手人材育成特定プロジェクトを実施。新しく科学研究職に就いた博士課程修了者や博士研究員に5年以上の非競争的科学研究費支援を提供する。
「審査を減らす」の面では、探索性が強く、研究開発のリスクが高い先端分野の科学研究プロジェクトに対し、職責を尽くした場合に責任追及を回避するメカニズムを構築する。若手科学研究者の審査を減らし、雇用期間審査やプロジェクト期間審査などの中長期審査・評価を実施し、若手科学研究者の実際の勤務における貢献を合理的に評価する。
同時に、若手専任科学研究者が勤務日に科学研究に使える時間を5分の4以上にするよう求めた。キャリアアップ計画の相談・育成により、メンタルヘルス・カウンセリングやメンタルケアなどを実施し、「心身」共に強くする。
これらの措置のうち、女性科学研究者に便宜を図る内容は特筆に値する。大学や科学研究機関に対し、フレックス制の実施や授乳室の設置、託児サービスの提供、授乳期の女性科学研究者に対する期限要求の適切な緩和、雇用・審査期限の延長などにより、こうした女性科学研究者が研究活動できる環境を積極的に作るよう求めている。
潜在能力を引き出し、若手人材が大役を担う
「双聘」(2つ以上の機関に招聘されること)方式により、葛氏は国家生猪技術革新センターの建設に加わり、副主任に就任。同時に市牧畜科学院党委員会委員、生物工学研究所所長にも就任し、2022年には2件の国家級プロジェクトと2件の省・部級プロジェクトを担当した。葛氏によると、負担軽減行動の実施により、多くの体制やメカニズムからの束縛が減り、一方で同センターが構築・実施する新たな研究開発メカニズムが、若手科学研究者に対して成長の舞台を提供している。センターには現在、若手科学研究者が45人集まり、省・部級以上の科学技術プロジェクト計37件を担当している。
重慶市科学技術局の関係者は「重慶市では2019年から、科学技術者を悩ませる問題と、イノベーションを制限する障害に焦点を当て、2回の科学研究者負担軽減行動を実施し、研究に専念できるようにした」と語った。
例として、西南大学が打ち出した「西南大学『英才プロジェクト』実施規則」は、「含弘優秀若手ポスト」と「含弘研究員」を設立し、「リーダー人材育成」と「トップ人材育成」を続けて全額支援した。科学研究の基礎が良好で、育成のポテンシャルが高く、発展の勢いがあるハイレベル若手予備人材を重点的に支えている。重慶理工大学はメンター制度を実施し、若手教員をハイレベル教育科学研究チームに入れ、「教育」と「科学研究」の両方の指導員をつけ、若手人材が皆、チームに所属するようにしている。
負担軽減行動の支援を受け、重慶市の若手科学研究者は急成長している。データによると、同市の80%以上の一般プロジェクト、407件の博士研究員プロジェクトが、若手科学研究者を支援した。また、2022年に市全体で博士研究員1066人を新規採用し、過去最高となる88%が重慶に留まった。博士研究員が申請、取得した国家級基金プロジェクトは前年比53%増の718件となった。
※本稿は、科技日報「譲青年科研人員想幹事能幹事,重慶開展第三輪減負行動」(2023年1月31日付3面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。