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【23-12】貴州省、複数の措置で「人材のプール」を構築

駱 飛、李 凡、相文昊(新華社記者) 2023年08月30日

 中国貴州省は質の高い発展に向けた新たな道のりを歩んでおり、過去のどの時代よりも人材を必要としている。同省は現在、「四つの新(新技術、新産業、新業態、新スタイル)」に重点を置き、「四つの化(産業のスマート化、スマート産業への変化、業界の垣根を超えた融合への変化、ブランドのハイエンド化)」に力を入れ、人材博覧会の開催を機に人材誘致に力を注ぎ、ビッグデータなどの産業に焦点を合わせてハイレベル人材を呼び込んでいる。また、帰郷して起業した人が農村振興を支援できるようにし、人材の「後進地」から人材誘致の重要拠点へと発展するための複数の措置を実施しており、地域の経済・社会発展に向け「人材のプール」を構築するよう取り組んでいる。

 国家級ビッグデータ総合試験区となっている貴州省ではここ数年、ビッグデータ産業が勢いよく発展しており、データの「集積・連携・応用」に焦点を合わせた多様な新興産業体系が徐々に形成されており、地域発展の促進だけでなく、同省で起業・就職する他地域の人材も取り込んでいる。

 清華大学の博士課程で学ぶ楊霊運さんは、貴州省で起業した理由について、「貴州のビッグデータ産業の発展を見込んでおり、ビッグデータ関連企業が多くの優遇政策を受けているから」と説明した。楊さんの会社が構築した「貴州工業クラウド」プラットホームは、同省の既存の企業がモデル転換・高度化する上で直面する問題を解決している。

 国家級ビッグデータ産業発展クラスターである「中国数谷」に指定され、国家プロジェクト「東数西算」(東部地域のデータを西部地域で保存・計算すること)の中枢を担う同省は現在、データセンターやターミナルインテリジェンス、データ応用という3つの1千億元(1元=約20円)級産業クラスターの形成を加速させている。同省党委員会組織部の王瑞軍副部長は「省は主要戦略と主な位置づけに焦点を合わせ、人材の需要に基づき、人材誘致の実効性を高めている」と述べた。

 貴州省は今年2月、質の高い発展を目標とする政策を打ち出し、リーダーシップが取れる人材、トップ人材、優秀な人材を呼び込むための支援を提供している。さらに、貴陽ビッグデータテクノロジー・イノベーションシティの建設を推進し、関連企業800社、人材2万人以上を呼び込もうとしている。

 同省黔南プイ族ミャオ族自治州独山県の百泉鎮百泉湖村にある荒れた山地では、1年前に植えられたアブラギリの種が芽を出し、青々とした葉が茂る小さな木へと成長している。これは、楊安仁さんが帰郷して起業した栽培業で、県内のアブラギリ栽培面積は既に800ヘクタールに達し、うち200ヘクタールでは、アブラギリが実を結んでいる。

 楊さんは数年前、地元政府の支援を受け、貴州鴻発生態農業科技有限責任公司を立ち上げた。彼はチームと共に研究支援政策を活用して、アブラギリの胴枯病や少ない生産量という課題を克服したほか、産業プロジェクト資金を使って独山県の約2000世帯の雇用と収入増を牽引した。

 貴州省は農村振興を支援するべく、出稼ぎ労働者に対して帰郷して起業・就職するよう促すプロジェクト「雁帰興貴」の実施に力を入れ、農村の産業発展に焦点を当て、帰郷して起業する受け入れ先の構築などを強化している。また、第14次五カ年計画(2021~25年)期間中、出稼ぎ労働者延べ100万人が帰郷して起業・就職するよう促す計画だ。

 畢節市人力資源・社会保障局の王孕秋副局長は「同プロジェクトは農村振興に対し、人材面から原動力を注入しており、優位性を持つ複数の産業を育成し、農村振興の新たな活力を引き出し続けている」と強調した。

 貴州省の今年の大学卒業者は27万4000人で、近年で最多となった。そのため、同省は積極的に対策を講じて雇用を促進している。貴陽市政府の龍叢副市長は「貴陽市貴安新区は『強い省都』の行動目標に焦点を合わせ、人材資源の開発を最優先課題とし、さまざまな対策を講じて人材の『誘致、育成、雇用、繋ぎ止め』の各プロジェクトを推進し、人材の先進地構築に取り組んでいく」と訴えた。

 貴陽市貴安新区は2022年から「『人材構築・強い省都』貴州省の大学卒業者就職・起業行動」を推進し、各大学の書記や学長を招いて企業を訪問し、雇用を促すよう訴え、大学卒業者が同省で就職・起業するよう働きかけている。卒業生を対象にした雇用を持続的に創出し、優遇策やサービスを提供している。こうした策により貴陽市は2022年、大学卒業者10万人以上の繋ぎ止めに成功し、人材の集積がさらに推進された。


※本稿は、科技日報「贵州:多措并举打造人才"蓄水池"」(2023年6月19日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。