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【24-01】中国で「重点大学」に受かるのはどれほど難しいのか-北京大の倍率は実質6000倍超え?

松田侑奈(アジア太平洋総合研究センター フェロー) 2024年02月09日

 中国では「高考」という全国統一大学入試テストがある。高学歴社会である中国において、「高考」は極めて重大なイベントであり、名門大学に進学できたかどうかが、今後の人生に大きな影響を及ぼす。

 本稿では北京大学を例に、中国の大学入試の難易度を分析しようと試みる。

 2023年の「高考」への出願数は1291万人。

 北京大学への入学者数は僅か4483人。

 ただ、この4483人も全員が「高考」を経て入学したわけではない。その内訳を見てみると、

・国内31省(自治区・直轄市)からの入学生:3877人(医学部859人、医学部以外3018人)

・香港・マカオ・台湾からの学生:86人

・海外からの留学生:419人

・ソフトウェア第二学位学士:101人

(※ソフトウェア第二学位学士とは、もう一つの学士の学位を取得するため、大学卒業後に進学するプログラムで、2年で卒業でき、卒業後はもう一つの学士学位書がもらえる。近年ソフトウェア人材が就職で有利な立場であるため、このプログラムは人気がある)

となっている。従って、「高考」に参加した人数は、実質3877人である。この時点での単純計算でいうと、北京大学に受かる倍率は3329倍となる。

一、大学入学の特別枠

 ただ、実質倍率は、この数値を上回るといえる。

 なぜなら、先ほど説明した国内31省(自治区・直轄市)からの入学生には特別枠から入学した学生も含んでいるからである。

 特別枠の学生は、一応「高考」には参加するが、その成績は実際の入学にあたり参考程度とされるさめ、点数は入学に大きな影響を与えない。

 下記表1でいうと、1を除く2~9までは特別枠で入学した学生となる。

表1 2023年、北京大学(国内31省・自治区・直轄市から)の新入生内訳
出典:百度清华、北大2023年本科新生统计
  入学枠 合格人数(人) 割合
一般枠
(「高考」成績のみで勝負して入学する学生の数)
医学部を含む場合:2119
医学部を除く場合:1260
41.7%
強基計画枠 [ⅰ]
(基礎科学分野で特に優れた才能をもっている学生が入学する枠)
890 29.5%
推薦枠
(試験に参加しなくてもいいが折角なので参加する学生が多い)
194 6.4%
数学英才枠 100 3.3%
物理卓越計画枠 100 3.3%
国家専門プログラム枠 277 9.2%
高校プログラム枠 114 3.8%
ハイレベル体育人材枠 67 2.2%
ハイレベル芸術人材枠 16 0.5%
合計 3877 100%

 従って、実際に成績のみで北京大学に入学できた学生の数が2119人だとすると、倍率は6192倍となる。

二、第一志望は極めて重要

 更には、高得点を得たからといって、必ずしもいい大学に入れるわけでもない。

 中国では、「点数3割、志望7割」と言われるほど、志望の書き方が進学にあたり重要な役割を果たしている。

 重点大学と言われる大学では、自分の大学を第一志望に書いていない学生は基本取らない。従って、「第一志望に北京大学、第二志望に清華大学」というような書きぶりはありえず、同じランクの学校は、どちらかを一つピックアップして第一志望に書くべきとされる。例えば良い成績を収めたのであれば「985大学」の39校のうち、一つを選んで第一志望に書くのである。そして、第二志望には、第一志望と比べてランクが低い学校を書き、もしも第一志望で落ちたとしても確実に受かる可能性がある大学を記入するのが一般的だと言われている。

 志望の数は多く書いてもいいが、第三志望までで受からなかった学生は、その年の入試は失敗と言っても過言ではない。実際、志望の記入の仕方で、もっといい大学に受かるはずだったのに行けなかったというケースも少なからず存在する。

 では、自分の成績がどの大学に相応しいのかを、いかに判断するのか。

 中国では、大学入試シーズンに、各大学の過去10年間の重点大学カットライン点数(重点大学に受かるために必要な最低の点数、試験の難易度によって毎年変わる)と、一般大学カットライン点数、各省での受け入れ人数と大学の各学部の受け入れカットライン点数をまとめた分厚い本を高校3年生に配っている。それを見て自分が受かる大学を推測して志望を書くわけである。

 北京大学の場合、毎年大体、重点大学カットライン点数を最低でも70点以上上回る学生を取っている。重点大学と一般大学のカットライン点数は、大学入試が終わって、個人の点数が公開される同時に発表される。

 もしも重点大学カットライン点数をギリギリ70点上回る場合は、北京大学を第一志望に書いても落ちる可能性があるので、それより若干点数の低い大学を書いたほうが安全である。また、ギリギリで受かった場合は、希望する学部に行けなくなる可能性も高い。大学の志望を記入する際には、調剤制度(専攻変更可能性について承知する制度)といって、もしも希望する学部に入学できなくても、本大学を希望するか否かをチェックする欄がある。チェックを入れた場合、学部はランダムで決まるので、全く興味のない分野を勉強する可能性がある。

 何を重視するかによるが、大学のブランドがどうしても欲しい学生は、調剤欄にチェックを入れる場合が多く、勉強したい分野が既に心の中で決まっている学生は、学校より学部を優先している。

 時には、「この大学じゃないと俺はいかない」という頑固な学生もおり、志望を記入する際は、担任による指導を受けながら書く場合が多い。

三、地域による大きな格差

 最初に出した倍率は、北京大学の新入生と「高考」に参加した人数で計算しているが、中国の場合、受験生がどこで試験を参加するかによって、その運命がまた大きく変わってくる。

 中国の入試は、全国で何人を選ぶというわけではなく、各省ごとに定員(枠)が存在する。

 定員というのは決まった数字ではないが、毎年大きな変動はない。

 北京大学や清華大学の場合、北京市や上海市等の大都市の学生を多く受け入れているので、雲南省や貴州省等から受かるのは極めて難しいと言われている。

 傾向としては、各大学は、大学が所在している地域から最も多くの学生を受け入れている。

 下記は、2023年度の、北京大学と清華大学の地方ごとの受け入れ人数をまとめた表である。

表2 2023年度北京大学と清華大学の地方ごとの受け入れ人数
出典:网易2023年高考清华北大各省录取人数占比
省(自治区・直轄市) 受験者数(万人) 合格者数(人) 合格割合
北京 5.4 550 1.0185%
上海 5 220 0.4400%
天津 5.8 142 0.2759%
吉林 12.5 142 0.1280%
寧夏 6.56 70 0.1067%
遼寧 24.5 250 0.1020%
浙江 36 350 0.0972%
黒竜江 18.2 142 0.0879%
福建 21.8 190 0.0872%
海南 6.38 50 0.0784%
陝西 32.3 240 0.0743%
江蘇 40.6 300 0.0739%
湖北 46 310 0.0674%
重慶 31.4 210 0.0669%
新疆 21.9 140 0.0639%
山西 33.7 210 0.0623%
内モンゴル 18.5 110 0.0595%
甘粛 24.3 130 0.0535%
湖南 65.6 330 0.0504%
山東 59.9 300 0.0501%
四川 77 320 0.0416%
広東 70.2 280 0.0399%
安徽 60 230 0.0383%
河北 75 270 0.0360%
江西 50 180 0.0360%
河南 125 400 0.0320%
貴州 46.5 140 0.0301%
広西 61 142 0.0262%
雲南 38.9 100 0.0257%

四、39校の重点大学の受け入れ人数

 北京大学は一例であるが、39校の重点大学(985大学)もそれに準ずる難易度だと思えばいい。2023年の場合、39校の重点大学が公開したデータによると、受け入れた人数の合計は21.4万人(留学生や香港・マカオ・台湾からの学生も含む)程度、約1291万人の1.66%に相当する。

 ここから留学生等を除くと受け入れ人数は更に少ない数となる。

 

表3 2023年度985大学の受け入れ人数(留学生や香港・マカオ・台湾からの学生等含む)
出典:网易39所985大学高考录取人数及本地生源一览,你的大学有多少本地考生?
 吉林大学10,438人、山東大学10,334人、四川大学9,469人、中南大学8,997人、
 中山大学8,153人、ハルビン工業大学7,889人、東北大学7,674人、武漢大学7,291人、
 華中科技大学7,168人、華南理工大学6,994人、重慶大学6,465人、浙江大学6,428人、
 大連理工大学6,341人、西安交通大学6238人、西北農林大学5729人、湖南大学5718人、
 アモイ大学5594人、電子科技大学5026人、蘭州大学4957人、中央民族大学4766人、
 同済大学4,765人、天津大学4,696人、中国海洋大学4,496人、北京大学4,483人、
 西北理工大学4,387人、上海交通大学4,284人、復旦大学4,217人、南開大学4164人、
 東南大学4117人、北京師範大学4093人、華東師範大学4069人、北京航空航天大学4068人、
 南京大学3975人、北京工業大学3757人、中国農業大学3,661人、清華大学3,502人、
 国家国防科技大学2,960人、中国人民大学は2,800人、中国科学技術大学1,966人。

 中国での名門大学への入学は正に狭き門であり、一握りの学生しか入れない。

 中国では、高校より大学での勉強が最も激しいと言われている。

 常に競争環境に置かれる中国の大学生は、自分の価値を引き上げるため、学業、資格と取得、外国語のマスター、インターンシップ、海外研修等で日々忙しい。

 中国の国際競争力が上がっているのは、このような優秀な学生の貢献も大きいといえるのではないか。


[ⅰ] 基礎学科分野、即ち数学、物理、化学、生物、歴学、基礎医学、歴史、哲学、古文学分野での人材不足を解決するため導入した枠。素質、成績面で優れている上に、上記の学問のいずれかで特別に才能を持つ可能性がある学生を選抜している。

関連リンク

北京大学

 

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