【24-05】人材競争における国際比較優位の形成に注力を(その2)
劉松博(中国人民大学国家発展・戦略研究院研究員、労働人事学院教授)
胡 威(中国人民大学公共管理学院副教授) 2024年04月15日
(その1 よりつづき)
体制の優位性を生かし、制度を整備
挙国体制というのは、市場経済の活性化を基礎として、政府が注力して取り組む体制のことで、中国の社会制度を示すものだ。中国で挙国体制の優位性を生かすためには、人材強国戦略を堅持し、各レベルや各業界、各主体に対して積極的に人材事業に参加するよう働きかける必要がある。
政府は人材のサポート管理サービスメカニズムを構築するとともに、人材関連法制度の構築を強化し、人材事業の合法化を保護・サポートする必要がある。雇用主体は、人材の選抜、雇用、キャリアアップ、激励など、人材をめぐる細やかな業務に注力する必要がある。また、人材市場は市場の秩序、競争、ルール、価格を適切に維持する必要がある。
制度というものは、人材事業の方針・理念の実施効果を左右し、人材が現地の体制になじんで才能や価値をどれほど発揮するかに影響を与え、人材を引きつける魅力や競争力を高める点で、重要な役割を果たしている。
中国を人材の中心地およびイノベーションの先進地にするためには、人材制度の健全化が焦点となる。人材制度は、中国の特色ある社会主義制度の重要な構成部分で、改革開放(1978年)以降の整備を経て、人材の育成、誘致、流動、雇用、激励、保障制度が段階的に作られてきた。また、世界の経験を参考にして、人材市場の整備や人材の流動・配置の最適化、キャリアアップルートの明確化などの面で、長期にわたって効果的な注力をする必要がある。
人材評価メカニズムは、人材制度を健全化し、競争における国際比較優位を形成する強力な足掛かりとなる。
人材評価メカニズムのイノベーションに力を入れ、弁証法的かつ客観的な評価基準を構築する必要がある。これは、多元性と統一性を兼ね備え、人材を全面的に評価し、ひいきせずに公平に扱い、色眼鏡で判断しないものにしなければならない。合理的で適切な評価期間を確定し、成果に応じて奨励しながらも、長期的な視点でポテンシャルにも注目し、ダイナミックな視点で人材を見て関心を持ち、評価する必要がある。また、基準を満たした効果的な評価主体を育成し、雇用主体に対する評価能力を高め、市場志向の評価内容を強調する必要がある。合理的な評価方法を発展させ、世界の先進的な経験を取り入れるべきで、最終的に公平性や科学性、適用性を兼ね備えた、健全で整備された評価メカニズムを構築する必要がある。
教育体系を健全化し、デジタル化事業を着実に推進
中国の教育体系を健全化することは、人材育成の基本要素で、潜在的人材ストックを拡大するための中核的措置でもあり、国際的な人材競争に対処するための戦略的需要となる。
教育体系を構築するためには「道徳重視の人材育成」が根本となる。バランスの取れた質の高い義務教育の発展をさらに推進し、都市部と農村部の教育資源格差を縮小しなければならない。学生の資質を高める教育を発展させ、教育の活力を増強し、イノベーション型人材を育成する必要がある。高等教育が戦略的科学者や一流のテクノロジーリーダーおよびイノベーションチーム、若手テクノロジー人材の育成といった面で果たす重要な役割を強化し、人材構造の国際比較優位を形成しなければならない。職業教育と継続教育を一体化して計画し、多様化した発展を促し、卓越したエンジニアや職人、ハイテク人材などを育て、合理的な人材陣を作り上げるとともに、特別教育に注力し、教育の公平性を促す必要がある。
人材競争が白熱する中、人材のデジタル化を進め、デジタル化ツールの応用を推進することは、各業界におけるハイレベル人材の構造や数、分布といった情報を把握し、人材交流と人材協力の基礎を固めるのに役立ち、人材競争における国際比較優位を形成することにつながる。
トップレベルの指導をしっかりと行い、中国のビッグデータ戦略と、世界の人材ビッグデータ開発を結び付け、人材データの収集・応用のために確固たる保障を提供する必要がある。世界的な視野を持ち、全面的に世界の人材データを収集し、世界の人材の地域分布図や業界の構造図を作ることに取り組む必要がある。世界の人材データバンクを構築し、各種人材の応用シーンと国内の需要を研究し、動的モニタリングを行い、人材評価と人材戦略の準備しなければならない。デジタル化発展とインターネットツールを生かし、人材交流拡大の道筋を探るとともに、法制度の構築を強化し、人材データ収集をめぐるリスクを回避し、紛争解決などにかかるコストを低減させる必要がある。
※本稿は、科技日報「着力形成人才国际竞争的比较优势」(2024年2月5日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。