【24-10】「高技能人材」を3年間で500万人増やすには?
姜 琳、黄浩苑(新華社記者) 2024年06月24日
CNC(コンピューター数値制御)工作機械の操作を学ぶ西安技師学院デジタル制御技術専攻の学生。(撮影:劉瀟)
技能人材は中国製造(メイド・イン・チャイナ)と中国創造(クリエイテッド・イン・チャイナ)を支える重要な力だ。
このほど、人的資源・社会保障部(省)は関係部門と共同で「高技能・リーダー人材育成計画の実施に関する通知」を発表し、今後約3年間でリーダー人材を新たに1万5000人以上育成し、それに伴い「高技能人材」約500万人を新たに増やすプランを打ち出した。この目標はどうやって実現されるのだろうか。
質の高い労働者が不足する構造的矛盾が先鋭化する可能性
同部職業能力建設司の王暁君副司長は「技能労働者の中で最も向上が必要なのは高技能人材であり、高技能人材の中で最も注目すべきは高技能リーダー人材だ。私たちは今後、育成、使用、評価、奨励が連動する推進メカニズムを整備し、質の高い発展に必要な技術技能型、複合技能型、知識技能型、デジタル技能型のリーダー人材育成を加速させ、高技能人材の総合的発展を牽引していく」と説明した。
現在、中国の技能人材規模は2億人以上で、就業人口に占める割合は26%以上となっており、うち高技能人材は6000万人を超える。しかし技能人材は長い間不足しており、特に高技能人材の供給と産業のトランスフォーメーション・高度化との間の構造的矛盾が日増しに顕在化している。
浙江省寧波市人的資源・社会保障局の葉苗局長は「初級技能人材は多いが、高技能人材は少ない。建築や繊維など従来型の技能人材は多いが、情報やエネルギー、材料といった現代型の技能人材は少ない。単一型の技能人材は多いが、複合型の技能人材は少ない。短期間で速成的に養成された人材の数は多いが、体系的に育成された人材の数は少ない」と総括した。
業界の専門家らは、技術の進歩と産業のトランスフォーメーション・高度化が加速すると、質の高い労働者が不足するという構造的矛盾がより深刻になると認識している。なので、今回の通知では、社会各方面の力を動員し、先進製造業や現代サービス業などの関連業界で高技能リーダー人材を重点的に育成することを明確に打ち出している。
王氏は「各地域は人材の供給と需要の予測を強化し、経済・社会のトランスフォーメーション、科学技術イノベーションの発展、産業構造変革のトレンドを結び付け、地域や業界に特化したリーダー人材の育成計画を策定する必要がある。同時に、育成の取り組みを強化し、企業が教育・科学研究機関と連携し、共同育成やプロジェクト連携などの方法を通じて、リーダー人材と重点育成対象者の技術開発レベルを向上させるようサポートする必要がある」と述べた。
葉氏は「新たな職業や職種の開発配置作業を総合的に推進し、高技能人材の評価主体を調整することで、技能人材の育成と評価に強力な支えを提供できる。さらに、政府部門間の連携を強化し、企業による自主的な育成を後押しし、大手企業が技能人材の育成基準を制定することを奨励すべきだ。同時に、技術職人育成教育機関の運営を支援し、より多くの労働者が技能・技術で身を立てる道を進むよう奨励すべきだ」と、自身の見解を述べた。
技能労働者の積極性と創造性を高める
人材育成では、良いプラットフォームの構築も必要なプロセスの一つとなる。
王氏は「今後は国の重要戦略、重要事業、重要プロジェクト、重要産業に参加するリーダー人材に対し、技術マスタースタジオや模範労働者・職人人材イノベーションスタジオを設立するよう優先的に支援する。先進製造業や戦略的新興産業、デジタル技能などの分野に焦点を当て、技術革新、技術開発、人材育成の取り組みを展開し、条件を満たしたものについては規定に基づいて経費面での支援を行う」と説明した。
多くの技能人材は、社会的地位が高くない、収入が低いなどの悩みに直面しており、一部の若者が技術的ポジションに就きたがらない原因にもなっている。
この問題を解決するため、中国ではこの2年間に新たな職業技能レベル制度「新8級労働者」を打ち出し、特級技師として採用された人材は企業の正上級職位と同等の待遇を享受できるように規定した。また、首席技師の賃金待遇は、所属する組織の上級管理職の基準を参考にするか、実際の状況に基づいて決定し、特級技師の賃金待遇を下回ってはならないと規定した。
「しかし、私たちの調査では、一部の高技能人材は特級技師または首席技師に認定された後でも、それに見合った待遇を得ていないことがわかった。制度の実施を強化し、技能のランク付けに応じた各ポジションの成果型賃金制度を構築し、技能の価値を賃金に反映されるようにすることが、より多くの高技能人材を育て上げるためのカギになる」。第44回国際技能競技大会で金メダルを獲得した広東省機械技師学院の教員の楊登輝さんは、このように述べた。
今回の通知では、企業が「新8級労働者」の技能レベルの設定を改善するよう支援し、企業がポジションの価値、能力・素質、業績・貢献に基づく技能人材の賃金分配制度を構築・整備することが促された。また、技術革新や技術の研究開発において顕著な貢献をしたリーダー人材に対し、企業が成果の実用化によって得た収益の中から奨励金や株式など複数の形で奨励を与えることができるようになる。また、企業が重要な技術職のリーダー人材に対して年俸制や合意に基づく給与制度、プロジェクト単位の給与制度を実施するよう奨励している。
楊氏は「現在、高技能人材に対する企業のニーズはますます高まり、高技能人材の待遇レベルの向上は避けられない。『学歴重視、技能軽視』という考え方を改め、技能要素が分配に関わることを奨励し、『技能が高い者ほど多く得られる』ようにしてはじめて、技能労働者の積極性と創造性を着実に高め、企業の発展にさらなる原動力と活力を注入できるようになる」と語った。
※本稿は、科技日報「如何3年新增500万人次高技能人才」(2024年5月13日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。