【24-25】「低空経済」の発展を支えるハイレベル人材育成が急務
李 君(南京航空航天大学民用航空学院党委員会書記) 2024年12月20日
今年の中国共産党第20期中央委員会第3回全体会議では、ゼネラル・アビエーションと「低空経済」(低空域飛行活動による経済形態)の発展が打ち出された。中国工業・情報部(省)や科技部、財政部、中国民用航空局が発表した「ゼネラル・アビエーション設備の革新的な応用実施案(2024--30年)」では、2030年までに「低空経済」市場を1兆元(1元=約21円)規模にしようとしている。
戦略的新興産業としての「低空経済」は、チェーンが長く、波及範囲が広く、牽引力が強いという特徴があり、情報化、デジタル化管理技術による活性化によって、社会活動と組み合わせた総合経済形態を形成し、関連分野と連動して発展することが可能だ。だが、中国の「低空経済」はまだ発展の初期段階にあり、製造分野がメインで、低空域飛行サービスや飛行支援システムなどの分野が始まったばかりだ。産業の各分野間の相互支援力が弱く、協同発展の流れはできていない。そのため、専門知識や工学技術、イノベーション能力を備えたハイレベルな複合型人材を育成し、「低空経済」の発展に必要な技術のボトルネックを打破し、各分野を強化することが急務となっている。
イノベーション駆動を堅持し、必要な人材の育成を
戦略的な新興産業としての「低空経済」は、独自のイノベーションの特徴を持ち、スマート設備の製造や応用から、飛行支援システムや標準の構築まで至っている。ただ、イノベーションの余地が非常に大きく、中国内外に参考になる成熟した成功例がまだない。航空、宇宙、民用航空などを専門とする大学は、「低空経済」分野のイノベーション思考と能力を備えた戦略的科学者や一流のテクノロジー人材、イノベーションチームの育成に注力する必要がある。
第一に、教育を最適化することだ。「低空経済」の実際の需要に合わせ、新たな専攻や副専攻などを設置し、専攻の学際融合プラットフォームを構築する。専攻のカリキュラムに「低空」分野の知識を組み入れ、「低空経済」発展の新たなトレンドに対応する。将来の航空システム、飛行支援システム、スマート自動システムに関するカリキュラムを増設し、その教育内容を拡充、更新する必要もある。
第二に、コンテストプラットフォームを構築する。イノベーション実践プログラムや学術フォーラム、テクノロジーコンテストといったイノベーション活動とコンテストを活用して学習を促すほか、コンテストを練習の機会として学生のイノベーション思考と実践能力を高める必要がある。
第三に、イノベーション能力を高めることだ。専門知識教育とイノベーション能力育成の連携を加速させ、テーマ別の講義・講演、学術報告などを実施する。業界のトップ人材や専門家・学者などのイノベーション思考や成果を学生が学べるようにすることで、基礎的な理論を確立し、専門的技術が突出し、イノベーション実践能力と国際的視野を備えた、工学技術の課題に挑むハイレベル人材を育成する。
特色ある発展を堅持し、「低空経済」専門人材の育成を
「低空経済」は、複数の分野が融合した新興経済形態で、各分野で発展する技術には明らかな違いがありながらも高い関連性があり、単一的な知識体系の人材育成では、発展のニーズに対応することが難しい。そのため、航空・宇宙・民用航空系の大学は、それぞれの特色を活かし、「航空+」という多様な「低空経済」専門型人材育成スタイルを形成し、「低空経済」のテクノロジーチェーン、人材チェーン、産業チェーンの有機的な連携を促進するべきだ。
第一に、航空・宇宙学科の特色を活かし、学科の垣根を打破し、「低空」を共通背景とした学際的融合を推進することだ。異なる強みを持つ学科、国家・省・部レベルの重点学科およびプラットフォーム資源を統合し、「実験室体験」や「青少年テクノロジーイノベーション体験計画」といったイベントを実施し、「科学研究アシスタント」などの形で、学生が学際的科学研究活動と学科の建設に参加するよう奨励し、学生が学科の発展に対する理解や、専門に対する自信を深められるようにする。
第二に、専攻の特色や強みを活かし、新たな質の生産力発展のニーズに基づいた「低空」分野の一流学科を積極的に建設する。学科の先導的役割が十分果たされるようにし、国家一流専攻や教育部の「卓越したエンジニア育成計画」で指定された専攻などの構築を加速させ、「低空」関連専攻の発展方向性を明確にするとともに、育成体系の強みを活かし、「低空経済」専門型人材の質の高い育成を確保する。
第三に、専門教師の人数を増やし、「人材プール」を拡大する。「共産党による人材管理」という原則を堅持し、優れた政治的資質があり、素養が高く、構造が合理的かつ学際的で、イノベーション力が高い教師陣を育成する。教師陣の「カギとなる変数」を拡大させることで、人材育成の「重要なインクリメント」を後押しし、「低空経済」分野における優れたイノベーション人材育成に活力を注入する。
協同発展を堅持し、複合型人材を育成
「低空経済」の新たな課題に対し、素養の高い人材を大規模で育成するためには、産業と教育の連携、大学と企業の協同をそれぞれ深化させ、人材育成やテクノロジーイノベーション、産(企)業経済の協同発展を実現できるよう取り組まなければならない。航空・宇宙・民用航空に特化した大学は、教育・育成スタイルの改革、イノベーションキャリアの再計画、専攻とカリキュラムの再編成を行い、大学の育成体系と産業の雇用ニーズのマッチングをめぐる難題を解決する必要がある。
第一に、協力して育成するスタイルを革新し、「低空経済」の複合型人材を育成するためのルートを最適化する。現代産業大学やイノベーション共同体、大学と地方政府が共同で新型イノベーションプラットフォームを構築し、「産学研」(産業・大学・研究機関)の連携を促進し、「行政-大学-企業」の優位性の相互補完を行い、共同で注力する新型育成エコロジカルを形成する。
第二に、協同育成を充実させ、「低空経済」の複合型人材育成を活性化する。業界機関や科学研究機関などの強みを活かし、業界の専門家を招いて、卒業生による公開授業や業界専門家の体験談といった活動を行い、「低空経済」発展の最前線の動向と将来のトレンドを事前に把握できる機会を、あらかじめ人材育成に組み込む。
第三に、人材の協同育成スタイルを細分化し、「低空経済」の複合型人材育成のために協力できるようにする。航空機製造や「低空」運営、飛行支援といった分野のニーズに積極的に対応し、産業と教育の共同育成、専門家チームの共同構築、人材の相互招聘・共有、学生の実習・就職といった形で、教育体系と産業体系のより良い連携を実現し、産業が必要としている専門型、複合型、イノベーション型の人材を共同で育成する。
※本稿は、科技日報「培养急需紧缺人才 助力低空经济高飞」(2024年11月18日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。