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【20-007】流行の収束へ 活気を取り戻しつつある中国―中国新型コロナ防疫リポート(2)

2020年05月27日

楊保志

楊保志(風生水起);広東省科技庁科技交流合作処副調研員

河南省潢川県出身。入学試験に合格し軍事学校に入学。26年間、軍務に就き大江南北を転戦し、その足跡は祖国の大好河山に広くおよび、新彊、甘粛、広東、広西、海南などの地域で銃を操作し弾を投擲した。メディア、組織、宣伝、人事などに関する業務に長年従事し、2013年末、広東省の業務に転じた。発表した作品は『人民日報』『光明日報』『中国青年報』『検査日報』『紀検監察報』『法制日報』『解放軍報』『中国民航報』などの中央メディアの文芸・学術欄に、また各地方紙、各軍関連紙軍兵種報紙にも掲載され、『新華文摘』『西部文学』『朔方』などの雑誌や、ラジオ、文学雑誌にも採用され、"中国新聞賞"文芸・学術欄銀賞、銅賞をそれぞれ受賞し、作品数は500篇に迫る。かつては発表を目的に筆を執っていたが、現在は純粋に「自分の楽しみ」のためとしている。

 メーデー5連休の最終日、旅行から帰って来た時、筆者は感慨深い気持ちになった。

 中国文化・観光部(省)の発表を引用した人民網の報道によると、5月1日から4日、中国の国内旅行者数は延べ1億人以上、国内観光収入は約432億3,000万元に達した。連休の4日間の国内旅行者数は、複数の専門機関の予想を上回った。

 春節(旧正月、今年は1月25日)期間中、新型コロナウイルス感染が拡大し、多くの人が「ひきこもる」ことを余儀なくされた。外出したとしても、観光スポットは全て閉鎖され、遊ぼうと思ってもできなかった。春節から数えれば、すでに3ヶ月以上経過した現在でも、多くの人は依然として「息をひそめて」過ごしていて、観光に行きたいと強く願っている。

 実際には、新型コロナウイルス感染が収束に向かうにつれて、多くの人が動き始めている。人々はまず、自分の家の近くに出かけ、その後、公共交通機関を使わなくても、楽に帰って来られるくらいの距離なら、少し遠くにも足を伸ばすようにもなった。時間が経つにつれて、ジョギングをする人も増えてきた。どこまでジョギングして行くのかというと、新型コロナウイルス感染拡大が始まる前とほぼ同じで、違いと言えば、ペアになって走るのを控えたり、マスクをしていたりすることくらいだ。

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すでに多くの人が広州の地下鉄を利用しており、車内ではみんなマスクをしている

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新型コロナウイルス感染拡大前と明らかに違い、みんなソーシャル・ディスタンスを保っている広州の地下鉄のプラットホーム

 新型コロナウイルス感染拡大が始まった当初は、車で出勤する人が増え、今では走行車両がだんだんと増えて、渋滞も見られるようになった。特に、メーデー5連休前に、中学・高校の一部のクラスが登校を再開したため、広州市内の一部の道路では、一部の時間帯で渋滞が発生した。自家用車に乗っている人の中には、マスクをせず、検査で必要な時だけ着用するという人もいた。

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以前と同じように活気を取り戻した南京夫子廟長白街の野菜市場

 新型コロナウイルス感染拡大が始まった当初、食べ物や日用品の購入は、デリバリーや宅配サービスを利用するという人が非常に多く、団地の入り口付近や宿舎の前では、配達員が宅配物を山積みにしていて、その中から自分の荷物を探して持っていくという人も少なくなかった。しかし、時が経つにつれ、多くの人はまた店に足を運ぶようになり、大小の荷物を持ってそこを出入りしている姿を見ると、新型コロナウイルス流行はすでに収束したかのようにも感じる。

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既に活気が戻り、多くの客で賑わう広州の郊外にある田舎料理レストラン

 さらに極端な例としては、一部の小さなレストランが、新型コロナウイルス感染初期には営業を停止し、ある日突然営業を再開したものの、店内での飲食はできずテイクアウトして家に持ち帰るか、人気のない所に行って食べなければならなかった。だが、いつの頃からか、街中のそうした小さなレストランの店内も多くの客で賑わうようになっていた。メーデー5連休前、筆者は郊外に遊びに出かけ、食事の時間帯に、田舎料理を提供するレストランに入った。十数のテーブルが並ぶ店内は大賑わいで、マスクをしている人はほとんどおらず、新型コロナウイルスのことは、もうすっかり忘れ去ったかのようだった。

 筆者の家の近くには牛肉レストランがあるが、客らはなんと行列をして、我慢強く席が空くのを待っている。そこでは、3~5人ずつのグループができており、みんな「濃厚接触」など気にせずに、楽しそうに笑いながらおしゃべりしている。他人がマスクをしているかなどを気にする人ももはやおらず、マスク着用は形式的なものとなっているし、形だけということであればマスクを着用しなくてもよいという人も現れている。

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以前と同じように外で座って待つ客がいるほど賑わうようになっている筆者の家の近くの牛肉レストラン

 筆者も最近、時々マスクを忘れることがある。マンションの下に降りて初めてマスクをしていないことに気付く。また時には、他人がマスクをしているのを見て初めて自分がマスクを忘れていることに気付くこともある。車を運転する時は、マスクを取っている。オフィスでも、大勢が集まって会議をする時や、他のオフィスに行かなければならない時以外は、ほとんどマスクをしていない。うちのオフィスでは、6~7人が働いているが、みんなマスクを着用していない。

 連休前日、メディアは「今年の全国両会(全国人民代表大会・全国人民政治協商会議)は5月22日に開幕」と一斉に報じた。両会の開幕は一つのバロメーターであり、一つの節目でもあり、全国民に向けた、「新型コロナウイルス流行は間もなく過去のものになる」というメッセージでもあった。少なくとも筆者は、新型コロナウイルスはコントロール可能で、人々の生活は間もなく少しずつ通常運転に戻ると理解している。

 メーデー連休前、筆者は、省外への旅行、省内の旅行、近場旅行、いくつかの地域を周遊する旅行など、複数の旅行プランを考えていた。そして、結局、いくつかの省内の都市を自家用車で巡ることにした。

 4月30日夜、筆者一家は慌ただしく出発した。ところが予想外のことに、街中や道路はどこも混雑しており、目的地に到着するまでの200キロ余りの間に何度も渋滞に巻き込まれた。広州から出るだけで1時間以上かかり、高速道路でも5時間ほど渋滞に巻き込まれ、午前4時を過ぎてようやく目的地に着いた。皆、私たちと同様に出かけたい思いが強くて、それが渋滞につながったのだ。

 5連休中、私たちは3つの都市を訪問し、親戚や友人と会い、くたくたに疲れた。特筆すべきは、田舎に行けば行くほど、皆マスクをしなくなることである。

 新型コロナウイルス感染拡大が問題になってまだ数ヶ月しか経っておらず、新型コロナウイルスに感染したくないと誰もがビクビクしていた中国、様々なことに人々が疑心暗鬼になっていた中国はもうどこにもない。新型コロナウイルスとの「狙撃戦」、「殲滅戦」、「持久戦」、「全国民の戦い」などはほぼ「終戦」した。メーデー5連休明けに、省外に住む友人に連絡してみると、皆外出し、遠出は避けつつも、郊外に遊びに出かけたと言っていた。他の家の人たちと一緒に遊びに出かけたとは限らないが、大半は家族で外出したという。

 今、外を見ると、家々に電気が灯り、窓の下を見ると、多くの車が行き交い、遠くからは大きな機械音が聞こえてくる。現在の広州、そして中国全土では、新型コロナウイルスは収束に向かっているのだと、ひしひしと感じることができる。私たちの以前と何も変わらない、活気にあふれた生活は、もう目の前まで来ている。