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【13-002】日本短期研修の記録(その2)写真の中の思い出

葛 霖(深圳大学)   2013年 2月25日

 約3時間の空の旅を終えて、時計の針を1時間戻した。北京時間の午後5時、一抹の寂しさを感じた。10日間は想像していたよりも早く過ぎていった。とても多くの思い出ができ、毎日とても充実していた。帰 宅して今回の旅を振り返り、写真を一枚ずつ見ていると、その時その時の光景が頭の中に蘇ってくる。

 日本に着いて最初の食事をとる前に、興奮しながら新宿で撮った写真がある。初めての日本で感じたのは、雰囲気が中国とあまり変わらず、看板や広告に書かれた平仮名と片仮名を見て、初 めてそこが日本であると気付くくらいだった。

 空が少しずつ暗くなり、道の両側にある街灯が点灯し始めると、街が活気付いてきた。街がにぎやかだと言えば、私たちはすぐ人ごみや車、そして喧騒を想像する。しかし、こ こでは私たちの思い描くような激しい車の往来は見られず、人も車も整然と行き交い、クラクションを鳴らす音も聞こえない。人々は早足で歩き、楽しそうに話している、そんな様子に、私 たちは街の活力を感じることができた。たまたま目が合った若い女性は笑みを浮かべ、すぐ人ごみの中に消えて行った。

写真1

 次の写真には、60歳前後の紳士が写っている。波模様の濃紺のTシャツに、黄緑の七分丈のパンツ、鮮やかな青に赤のラインが入ったスニーカーを履いている。白く短い髭に黒い短髪で脚を組み、い たずらっぽい笑みを浮かべて壇上のスライドを眺めている。彼は今回の研修で授業をしてくれた先生の一人だ。彼のことを「お年寄り」と呼ばないのは、若々しいファッションセンスのためだけでなく、彼 自身が元気一杯だからだ。

 私たちの大多数は日本語ができないので、先生たちは英語で授業を進めた。日本人は英会話が非常に苦手と聞いていたので、仲間と一緒に冷やかすつもりで授業に行った。そこへ紳士がにこにこと壇上に上がり、ス マートに授業を始めたのである。発音は正確ではなく、時々読み違えもあったが、常に笑みを浮かべて顔を撫でながら大きな声で間違いを改めていた。授業が終わると、恥ずかしそうに口をすぼめて、教壇から下り、大 きな子供のように腰を下ろし、興味深そうに隣の先生と何か話していた。褒めてもらいたかったのかどうか定かではない。授業中、私はこの紳士に引き付けられ、日本の中高年には日本語で言うところの「元気」が すごくあると思った。

 彼らの声には力があり、抑揚がついていて、積極的な進取の気持ちに溢れていた。講義の聴講は他のプログラムと比べると、退屈になりがちだ。しかし、授業を聞いて得たものは少なくなかった。私 には日本留学の予定はないものの、国外の名門校を知って視野も広がった。

写真2

 次の写真は、車内で撮ったので、少しピントが甘い。写真にはバスの運転手の後姿が写っている。なぜこんな写真を紹介するのかと思われるだろうが、理由を説明してみたい。その日は自由行動の日で、私 は二人の友人と外出し、資本主義国の交通機関を体験するためバスに乗ってみた。観察していると、中国の路線バスと異なる点がたくさん見つかった。

最も感銘を受けた路線バスでの体験

 日本のバスはワンマン運転で、車掌はいない。運賃箱は前方の乗車口に設置されている。両替機能もあるので、小銭が無くても安心だ。運転手が両替した小銭を乗客に渡すこともある。運 転手は乗ってくるお客一人ひとりに礼を言い、スピーカーを通して聞こえる運転手の声はとても優しかった。ドアを閉める前には、「ドアが閉まります。お降りのお客様はいらっしゃいませんか?」と 必ず確かめてから閉める。発車する前にはまた必ず「発車します」とアナウンスする。まだ座っていない乗客がいれば、発車せず、着席するのを待って発車させる。これがもし中国なら、し っかり足を踏ん張っていなければ、車に揺られてよろけていただろう。

 また、乗客が降車している際、一時的にバスを移動させなければならなくなった場合、運転手は乗客に対し、「車を移動させますので、降車をおやめください」と知らせる。何と行き届いたサービスであろう。感 心すると同時にふと思ったことは、なぜ運転手が運転以外にこんなに多くのことをしなければならないのだろうか、ということだ。少し話すだけとは言え、安全運転にも影響してしまうだろう。残 念ながらこれについて結論は出ていない。しかし、バスでの体験は間違いなく日本での10日間で最も感銘を受けた出来事になった。

 最後の一枚は、私たちの仲間が沖さんと一緒に写った記念写真である。白いシャツに黒いズボンという装いで、ピースサインをしながら白い歯を少しのぞかせているのが、私たちが慕う沖さんである。成 田空港に着いた日を思い出すと、飛行機を降りた後、ぼうっとしていて、まるで実感がなかった。バスの中で、10日間付き添ってくれる引率者の沖さんと知り合った。車内には他の大学から来た学生もおり、沖 さんの司会で、互いに紹介し合い、旅の間は楽しみを分かち合うことができた。この写真は日本を離れる前日に撮影した。その夜は送別会が行われ、ささやかな出し物も披露した。私たちのグループは一等賞を取り、大 喜びですぐに沖さんのところへ駆け付け、この瞬間を記録した。私たち深圳大学の学生22人と全国各地の大学生は日本の旅で忘れられない思い出を作ることができた。

写真3

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■編集部注:筆者は2012年7月16~26日、研修プログラム「翔飛日本短期留学」に参加し、日本を訪問した。所属は在籍大学の名前、原文は中国語。ウェブサイト「客観日本」向 けに出稿されたものを日本語に仮翻訳した。