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【23-03】【政策】工業・情報化部等、カーボンニュートラル標準体系の構築を公布

松田侑奈(アジア・太平洋総合研究センター フェロー) 2023年05月31日

 5月10日、中国工業・情報化部や国家発展改革委員会など11の省庁は、「カーボンニュートラル標準体系構築に関するガイドライン(碳达峰碳中和标准体系建设指南)」を公開した。

 当該ガイドラインの制定背景について、国家市場監督管理総局の担当者は、「統計によると、中国には既に炭素排出量の測定、エネルギーの節約、非化石エネルギー、新型電力システム分野などにおける1800以上のカーボンニュートラル国家標準、2300以上の業界標準が存在するが、目標と現状が合致していない部分があり、大幅な調整を行うことを決めた」と述べた。

 今回のガイドラインを機に、中国では2025年まで1000以上の国家標準・産業標準を制定・改正し、重点事業や製品のエネルギー消費に関わる指標を徐々に改善する予定である。また、30以上のグリーン・低炭素関連国際標準を制定することで、国際標準のレベルを向上させると強調している。

 今回の標準体系は、エネルギー、産業、交通、都市と農村建設、水資源の管理、農業、林業、金融、公共機関、居民生活などの分野に重点を置き、一般、炭素排出の減少、炭素除去、市場化メカニズムという4つに分け体系を構築している。

カーボンニュートラル標準体系
  標準体系 主要内容
1 一般 専門用語の統一、炭素排出関連データの計算方法と正確な計算方法を提示する。
2 炭素排出の減少 エネルギーの節約標準、非化石エネルギー標準、新型電力システム標準、化石エネルギーのクリーン利用に関する標準、生産プロセス中の炭素排出減少標準、資源再利用標準を決め、炭素排出の減少を実現する。
3 炭素除去 二酸化炭素吸収源の増加基準、分離・貯留した二酸化炭素の利用(CCUS)基準、二酸化炭素回収テクノロジー(DACS)標準の開発を通じ、炭素排出のニュートラルを実現する。
4 市場化メカニズム グリーン金融、炭素排出の取引と製品価値に対する標準の制定を促し、炭素排出の定量取引における問題の解決を目指す。

 なお、提示された4大重点業務は以下の通りである。

① 国際標準化業務の推進

 カーボンニュートラル国際基準化業務促進のための実務チームを構成し、国家標準研究チームを新設する。

② 国際交流の強化

 IPCC、ISO、IEC、ITUなどの国際機関および、一帯一路沿線国家との交流と協力を強化し、BRICS、APECの業務協定に沿って、エネルギーの節約、低炭素の標準化に関する議論を進める。

③ 国際標準の制定

 国際標準の制定に積極的に参加し、温室効果ガス排出のモニタリングと測定、エネルギー・グリーン金融等の重点分野での国際標準を提示し、関連分野の標準化技術機関の設立を推進する。

④ 国内基準と国際基準のマッチング

 国際標準を中国の国家基準に転換できるよう努め、国家標準・産業標準・地域標準等外国語資料の制作と宣伝に注力する。

 当該ガイドラインは、2025年までと具体的なタイムリミットを決め、炭素排出データの算出方法、正確に算出するための工夫、排出を減らすための解決策を提示している。従前より実現可能性が高まった目標設定であり、その進展に期待が高まる。