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【23-07】長江デルタ地域、中国の有効特許の約1/3を保有

劉 垠(科技日報記者) 2023年07月21日

 中国国家知識産権局は10年連続で中小企業の知的財産権戦略推進プロジェクトを実施してきた。これまでに長江デルタ地域で優位性を備えたモデル企業1800社以上を育成し、地域産業の競争的優位性を全体的に向上させてきた。バイオ医薬品や人工知能(AI)などの重点分野について、同地域に7カ所の産業知的財産権運営センターと24カ所の国家級特許測位サービス拠点が建設されるよう支援し、重点分野のコア技術の研究開発を支援してきた。

 5月30日、国家知識産権局は上海市で定例記者会見を開き、知財権による長江デルタの質の高い一体化発展支援に関する状況を重点的に説明した。

 同局の報道官で弁公室副主任を務める梁心新氏は、「長江デルタ地域は経済発展が活発で、開放レベルが高く、イノベーション能力が強く、国家現代化建設の全体的局面と高い水準の対外開放という大局においても重要な位置を占めている。長江デルタは中国全土の4%足らずの土地で、中国の経済規模の4分の1近くを創出し、全国の有効特許の3分の1近くと、有効商用登録の4分の1を保有している。世界知的所有権機関(WIPO)の第1回WIPOグローバル・アワードを受賞した中小企業5社のうち、中国企業が2社を占めたが、いずれも長江デルタにある企業だった」と説明した。

 梁氏は「われわれはここ数年、中国国内に向けてはイノベーションを奨励し、国外に向けては開放を促す知財権の重要な役割を十分に発揮し、長江デルタ3省1市の取り組みとのマッチングを強化し、政策の協同を強め、力を結集して取り組みを進め、長江デルタの質の高い一体化発展を積極的に推進してきた」と述べた。

 注目すべき点は、同局が国家金融監督管理総局と協力して、江蘇省や浙江省などで特許権の質権設定登録の全プロセスをペーパーレスで行う試行事業を支援し、企業の資金調達の効率向上を図ろうとしていることだ。2022年、長江デルタ地域の特許権の質権設定による資金調達額は前年同期比72.6%増の1862億6000万元(1元=約19円)で、全国の半分に迫り、伸び率は全国平均をはるかに上回った。

 同局はさらに、特許の開放許諾の試行事業を指導し、大学、科学研究機関、中小企業のために「特許の懸け橋」を構築し、特許技術の移転運用を促進している。また、財政部(省)と特許移転特定計画を実施し、3省1市を含む複数地域に重点支援を行い、イノベーションの成果がより多くの中小企業に及ぶよう推進している。


※本稿は、科技日報「长三角地区拥有全国近1/3有效专利」(2023年6月2日付5面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。