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【23-09】中国における知的財産権の保護状況

松田侑奈(アジア・太平洋総合研究センター フェロー) 2023年08月04日

 中国の国家知的財産権局(CNIPA)は6月に「国家知的財産権局2022年度報告」と「2022年中国知的財産権保護状況白書」を公開した。本コラムでは、これらの資料に従い、中国における知的財産権保護の現状をまとめて紹介する。

 2022年中国のPCT(特許協力条約)に基づく国際特許出願件数は7.4万件で、4年連続世界1位となった。知的財産権保護への社会満足度調査では81.25点(満点は100点、香港・マカオ地域は含まない)を記録し、3年連続80点超えとなった。この調査は、法律政策、法律の執行と保護、メカニズム建設、意識改善、保護措置の効果等の指標で、31の省で評価を行い、毎年点数を公開している。

 中国国内のみならず、世界知的所有権機関(WIPO)が毎年公表している「グローバルイノベーション指数(GII)2022」のランキングでも、2020年14位、2021年12位、2022年11位と順調な発展を見せている。

1.特許

 2022年中国の発明特許登録件数は79.8万件と、前年比14.7%増加した。ただ、実用新案の登録件数は280.4万件と前年比10.1%減少、デザイン登録件数は72.1万件と前年比8.2%減少した。

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出典:「国家知的財産権局2022年度報告」

 2022年末までの中国における有効発明特許登録件数は421.4万件(香港・マカオを除くと328万件)、有効実用新案件の累積は1083.5万件、有効デザイン件数は283.2万件となった。

2.商標

 2022年、中国の商標登録件数は617.7万件と前年比20.2%減少した。2022年までの累積商標件数は4267.2万件となった。マドリッド協定議定書による商標の国際出願件数は、5827件と、加盟国の中で3位をマークした。

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出典:「国家知的財産権局2022年度報告」

3.著作権・その他

 2022年の著作権登録件数は635.31万件と前年比14.2%増加し、そのうち作品登録は451.74万件と前年比13.39%増加した。コンピュータソフトウェア著作権登録件数は183.53万件と前年比19.5%減少した。

 その他の知的財産権における保護状況は下記表の通りである。

  類型 保護内容
地理的表示 ①2022年に承認された地理的表示製品は5つ、地理的表示を団体商標、証明商標と登録した件数は514件、専用表示使用で審査・承認された企業は6373社にのぼる。
②2022年末までに承認した地理的表示製品は計2495個、専用表示使用の審査・承認を経て登録した企業は23,484社である。
特殊表示 ①2022年の健康中国行動、杭州2022年アジア競技大会、中国有人宇宙飛行任務等31件の特殊表示が承認された。
②2022年北京冬季オリンピックマスコット等8件のオリンピック表示が公告・保護された。
半導体集積回路レイアウトデザイン ①2022年の集積回路レイアウトデザイン出願件数は14.403件と前年比29.2%減少した。
②集積回路レイアウトデザイン証書発給件数は9106件と前年比30.4%減少した。
食品新品種 2022年度の新品種登録件数は3375件と前年比4.88%増加。2022年度末までの新品種出願件数類型は11,199件である。
税関保護登録 2022年には23,412件の出願があり、登録件数は21,356件である。これは前年比20.9%増加した数値である。

 中国は近年、知的財産権への保護を強化するため、「知的財産権強国建設綱要(2021~2035年)」、「第14次5カ年計画における国家知的財産権保護及び運用計画」、「第14次5カ年計画期間における知的財産権人材計画」、「知的財産権公共サービスに関する第14次5カ年計画」、「特許及び商標の審査に関する第14次5カ年計画」等を相次いで公開している。知的財産権局は、2023年度の業務計画で「特許法実施細則」を改正し、特許実用化特別計画の実施を徹底する等の措置を通じ、知的財産権への保護を更に強化する予定と明かした。中国の知的財産権に対する強化措置を引き続きフォローしていきたい。

参考資料