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【24-05】パテントプールの構築がバイオ医薬産業の新たな原動力に

李 享(天津工業大学法学院) 2024年06月18日

 知的財産権は産業のイノベーションを推進し、新たな産業やモデル、原動力を生み出す上で重要な役割を果たす。「特許実用化運用特別行動案(2023-25年)」では、重点産業における知的財産権のチェーン強化・効果拡大を推進し、産業知的財産権運営センターの建設、産業知的財産権イノベーション共同体の構築、市場ルールの順守、重点産業パテントプールの構築・運営を支援するとした。「『第14次五カ年計画(2021-25年)』国家知的財産権保護・運用計画」では、デジタル経済やスマート製造、ヘルスケア、新材料などにおける産業知的財産権連盟の結成を推進し、産業パテントプールを構築するとしている。

 パテントプールの構築は、ライセンス許諾の障壁を取り払い、特許技術の普及と応用を加速させ、企業による独自開発と技術イノベーションを促進し、企業の特許管理と保護の効率を高めるのに役立つ。バイオ医薬産業のパテントプールの構築と運営は、革新的医薬品産業の発展加速やバイオ製造の新たな成長エンジンの構築において重要な意義を持つ。

 バイオ医薬産業パテントプールは特許の牽引の上に構築すべきだ。これにより、産業技術の発展方向性を十分掘り起こし、中核企業の特許技術の影響力を絶えず強化するとともに、当該産業の優良企業やその特許技術に対してサイフォン効果を形成し、科学技術のイノベーションと特許保護によって、バイオ医薬産業の新たなモデルと原動力を推進する必要がある。

 第一に、政府主導の優位性を発揮しつつ、中核企業が業界を支えることを重視する。バイオ医薬分野の中核企業による当該分野の産業連盟設立を積極的に奨励し、市場力の成長を促す。権利濫用と独占行為を監督し、国内市場のバランスを保つ。中核企業が主導する産業連盟内部の関連管理制度を積極的に整備し、連盟メンバーとその保有する特許の状況を整理し、特許の分類と牽引に取り組む。連盟内の有力企業を中心に特許ライセンスを展開し、特許ライセンス制度を構築し、具体的な特許ライセンス方法を形成し、連盟内の企業関係を調整する。

 第二に、パテントプールの合理的な参入基準を定め、パテントプール運営のビジネスモデルを模索する。バイオ医薬産業に適した許諾ルール、特許の評価方法、収益分配メカニズムを制定する。パテントプール運営者の造血メカニズムを模索し、長期的で安定した発展を促進する。

 現段階において、中国のバイオ医薬企業は核酸医薬品分野の発展が著しく、その研究開発能力は欧米先進国との差が少なく、特許の数も急増している。バイオ医薬産業パテントプールの構築は、紛争を回避し、特許権者の権益を保証するだけでなく、この分野の技術標準の形成にも役立つ。また、国際的な競争や協力に積極的に関わり、対外特許ライセンス数を増やし、国際標準の制定に参加するために力強いサポートを提供することになる。


※本稿は、科技日報「构筑专利池打造生物医药产业新引擎」(2024年5月14日付8面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

 

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