【22-14】「6+X」モデルでスマート化の「新たな扉」を開く 浙江省江山市
洪恒飛 江 耘(科技日報記者) 2022年06月17日
江山欧派門業のPVC製防火ドア・スマート工場
(画像提供:浙江省江山市経済・情報化局)
100%カバー
浙江省江山市は木製ドア「簡易版スマート化改革+モデル化普及」の推進を加速させ、「6大基礎応用シーン」を業界標準ツールとすることを期している。2022年までに一定規模以上の木製ドア企業でデジタル化100%カバーを実現し、2025年までに一定規模以下の木製ドア企業でもデジタル化80%カバーを実現する計画だ。
ロボットアームが木材を自動生産ライン上に置き、バリ取りやサイズ決め、ドリルでの穴開けの作業を始める......。浙江江山欣豊門業有限公司(以下「欣豊門業」)のドア生産現場では、ドアが出来上がるまで最速で1分しかかからない。
欣豊門業の徐章顕総経理は4月中旬、「この生産ラインは当社が昨年5月に導入したもので、1日にドアを500枚生産できる。効率が数倍アップしただけでなく、作りがさらに精巧になった」と語った。徐総経理によると、同社では生産の自動化のほかにもデジタル化を進め、長い間悩まされていた受注分類仕分け、原料管理、包装上の欠陥といった問題も解決されたという。
2020年以来、浙江省江山市は木製ドア業界を試行業界として、工業デジタルプロジェクト市場化改革の模索を進めており、「6+X」プロジェクトモデル契約という手法を作り上げ、中小企業デジタル化転換「軽量化スマート化、モデル化普及」というノウハウをまとめ上げた。
江山市経済・情報化局の関係責任者によると、現時点で、「6+X」プロジェクトモデル契約を結び、生産工程デジタル化を実施し、検収をパスした企業24社を通じて、受注分類仕分け効率、原料管理効率、管理効率がそれぞれ平均150%、80%、13%向上し、包装出荷精度が99%以上までアップしたという。
共通ニーズを発掘 迅速にデジタル化へ
2018年6月、江山市は同市の優良企業19社を選出してスマート製造試行モデル事業を展開し始めた。2019年11月には質の向上と範囲拡大の段階に入り、その後2年間で累計115件のデジタル化生産現場とスマート生産ラインを主としたスマート製造プロジェクトを実施し、木製ドア業界と送配電業界で基準となるモデルをいくつか作ることに成功した。
「基準モデルを見学した後、やりたい気持ちにはなるけれど、実際に取り組むのは難しい」というのが、現地の中小規模のドア製造企業に共通する感想だった。その理由を突き詰めると、モデル企業の多くは大企業で、中小企業とは規模や製造技術、管理方式、作業員の資質などの面で差があり、スマート製造は十把ひとからげで進めにくいことにあった。
そのため、どのようにして適切な切り口とアプローチを探し出して産業モデル転換・高度化を推進し、数も多く範囲も広い中小企業のデジタル化推進をサポートするかが、江山市政府が先頭に立って解決するべき発展上の難題となった。
江山市の特色あるブロック経済産業である江山産木製ドアは、国内木製ドアで初めての上場企業を筆頭に、中小企業300数社が関連する産業クラスターをすでに形成しており、年間生産高は130億元(1元は約19.0円)以上に達し、年間の木製ドア生産は1800万セットと、国内木製ドア市場の5分の1を占める。
その一方で、国内木製ドア市場は年を追うごとに「小売受注がますます少なくなり、プロジェクト受注がますます多くなる」傾向を示しており、中小規模のドア製造企業にとっては、これまでのような低価格競争と規模拡大による市場獲得という道がますます狭くなり、「スマート製造」へのモデル転換と「デジタル化」による飛躍に対する内部発生的ニーズと要望がますます高まっていた。
江山市経済・情報化局の関係責任者は、「江山の中小企業デジタル化について、木製ドア業界をまず先に試行するには、まず企業モデル転換に共通する問題を解決しなければならなかった」と言う。
2020年4月、江山市は市全域のドア業界企業86社に対し、「最もデジタル化が必要な部分」についてのアンケート調査を展開し、23の問題を抽出した。その後、浙江省スマート製造専門家委員会の専門家チーム、江山市ドア業界協会、江山市経済・情報化局などの代表を招いて、16社に対してさらに実地視察調査を行った。
江山市経済・情報化局の関係責任者は、「幾度かの調査を経て、我々は系統的な整理を行い、▽受注分類仕分けが難しい▽原料管理が混乱している▽設備の管理が難しい▽進度が追いつけない▽包装上の欠陥が多い▽リスト集計が遅いという6つの共通する問題を抽出し、これらの問題を解決するデジタルモジュールを打ち出した。この六大業務シーンが確定されたことで、関係当局が資源を集中させ、目標を定めて取り組めるようになり、木製ドア業界のデジタル化モデル転換は急速に軌道に乗った」とする。
企業規模別に試行普及 中小企業は「モデルをそのままなぞる」ことが可能に
浙江スマート製造専門家委員会の徐紀平副主任は、「さらに内容の最適化のため検討を重ねた結果、『江山木製ドア中小型企業工場デジタル化プロジェクト請負標準化契約』が生み出された」と言う。徐副主任によると、ドア企業に共通する問題と個別のニーズの両方に配慮した「6+X」スマート化シーンがその鍵となる内容だという。
浙江億美達門業有限公司(以下「億美達」)の呉東君董事長は、「当社では受注量の増加に伴って新設備が増えたにもかかわらず、管理上のボトルネックが解決されていなかった。こうした問題は2017年以降に特に際立つようになった」と話す。呉董事長によると、「設備利用率が低く、故障の際の解決が遅い」というのが現地のドア製造業に共通の問題だったという。
2020年、江山市は試行を希望したドア企業30社のうち、年間生産高が2000万元、9000万元、3億元の企業3社を試行企業に選び、中小企業がモデルをそのままなぞることが可能で、手軽に参考にできるケースを見つけられるようにした。億美達はその試行企業3社のうちの1社だった。
2020年9月、億美達は標準化契約を結び、製造工程の改革を行った。現在では、同社の作業員はOEE標準化カンバンを通じて生産現場の毎日の設備稼働状況と生産能力配分状況を正確に把握し、設備利用率の分析や設備の実際の生産能力評価に用いることが可能になっている。
「今回の改革の後、当社の生産能力はそれまでの月間8000セットから2万5000セットに増え、前年同期比で200%以上増えた」と呉董事長は言う。
江山市経済・情報化局の関係責任者は、「『6+X』は企業の実際的ニーズから出発しており、盲目的に力や資金を大規模に投入して取り組んだものではない。その目的は、各企業に適した機能モジュールを選んで採用し、最低限のスマート化で企業の最も差し迫ったニーズを解決することにある」と述べる。
特筆すべきは、今回の木製ドア業界デジタル化の過程で「6+X」モデル契約という手法ができたことにより、現地企業とプロジェクト請負業者との間にもともと結ばれていた契約の「工業標準が不明瞭」、「価格が不透明」、「検収が規範化されていない」といった問題が解決された点だ。江山市は主導的な立場に立つ総合請負業者を選抜することで、その総合請負業者1社が請け負い、数社が下請けするビジネスモデルを創り出し、工業デジタル化全体の質を向上させた。
徐副主任は、「市場におけるデジタル化プロジェクト請負業者は非常に多く、小企業が自分たちのニーズに合わせてオーダーメイドで開発してくれるプロジェクト請負業者を探すのは難しい。そのためデジタル化には、企業育成とプロジェクト請負業者育成の両方にしっかりと取り組み、両者が相互に刺激しあい、成長するようにすることが求められる」との見方を示した。
ドア製造企業24社がこのデジタル化プロジェクト請負標準化契約を結んでデジタル化を進めた結果、江山市ではデジタル化プロジェクトの簡易版「6250」モデルがほぼ出来上がった。「6250」とは、共通する内容が6シーン、工事期間が2ヶ月、投資も50万元というもので、50%の補助金も出る。そしてプロジェクトが検収にパスしなければ全額返金することをプロジェクト請負業者が約束することで、企業スマート化のリスク0を実現している。
複数業界での応用普及 スマート改造で全面的に効率アップ
2021年5月、江山市ドア製造業産業クラスターが省級新スマート製造試行対象に指定された。江山市経済・情報化局の統計によると、2022年4月中旬の時点で、市全体の一定規模以上の木製ドア企業47社のうち、すでに44社がデジタル化を実施しており、カバー率は94%にも達している。
現在、浙江省デジタル化改革が全面的に推進されている。浙江省の古くからの工業拠点であり、工業の強い都市建設試行県の第一陣20県に選ばれた江山市では、近年、スマートエネルギー設備、スタイリッシュドア・スマートインテリアという二大重点産業と、デジタル消防と健康生活、新材料という三大産業を重点的に育成しており、デジタル化改革の基礎がしっかりとしており、力強い発展の勢いを見せている。
数ヶ月前、江山市では「工業新政十条」を打ち出し、スマート製造プロジェクトに対し引き続き省全体で最大の補助を実行することを明確にした。その補助とは、設備投資補助15%、ソフトウェア投資補助50%というもので、うちスマート工場、省級以上の「専精特新(専門化・精密化・特徴化・新規性)」企業の設備投資補助は20%に引き上げられ、単独プロジェクトでの最高補助金は2000万元とされた。
江山市経済・情報化局の関係責任者によると、次の段階としては、木製ドア「簡易版スマート化改革+モデル化普及」の推進を加速させ、「6大基礎応用シーン」を業界標準ツールとしたいとする。2022年までに一定規模以上の木製ドア企業でデジタル化100%カバーを実現し、2025年までに一定規模以下の木製ドア企業でもデジタル化80%カバーを実現する計画だ。
同時に、現地では「簡易版スマート化改革+モデル化普及」を化学工業や送配電、プラスチック材料などの業界においても応用・普及させることを積極的に模索し、関連業界における低コストで高効率のスマート化モジュールとアプローチを積極的に模索している。
専門家や業界協会、企業、プロジェクト請負業者の交流と検討を通じて、江山市ではすでにプラスチック材料業界においても簡易版デジタル化「6250」モデルを明確にしており、ひとまず業界簡易版スマート化建設指導原則を定め、4社の企業を簡易版デジタル化試行企業として選出した。うち一部企業ではすでに簡易版スマート化システムを導入している。
江山市経済・情報化局の関係責任者は、「省全体でデジタル化改革を推進していることを背景に、江山市ではスマート製造を経済モデル転換・高度化という難関攻略戦と構造調整という持久戦の重要手段としていく」と語る。この責任者によれば、江山市では現在、ドア(インテリア)業界工業インターネットクラウドプラットフォームを構築中で、「原材料集中仕入れ、製品デジタル化設計、企業生産経営管理サービス」等のシーンを確立し、同業界が「デジタル化製造、プラットフォーム化サービス、協同化生産」を実現できるようサポートしている。
※本稿は、科技日報「凭一吻份"6+X"工程合同 浙江江山叩開智改"新大門"」(2022年5月6日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。