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【22-32】「5G新通話」が消费者の心を掴むには何が必要?

劉 艷(科技日報記者) 2022年08月29日

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画像提供:視覚中国

 5Gネットワークの広い帯域幅、低遅延、高い信頼性といった特性を生かし、音声、ビデオ通話を最低限の重要機能とした「5G新通話」は、より新しく、より幅広い応用シーンを生み出している。そこには、拡張現実(AR)やバーチャル・リアリティ(VR)、遠隔ロボット制御、テレプレゼンス応用及び各種モノのインターネット(IoT)サービスといった新技術、新応用が全て含まれている。

 7月20日、中国情報通信研究院技術・基準研究所と華為(ファーウェイ)が共同でまとめた「5G新通話技術・業務イノベーション研究報告(2022年)」(以下「研究報告」)が発表された。

 4月下旬から、中国の三大通信キャリアである「中国聯通(チャイナ・ユニコム)」、「中国電信(チャイナ・テレコム)」、「中国移動(チャイナ・モバイル)」が相次いで「5G新通話サービス」を打ち出した。しかし、それから3ヶ月が過ぎても、同業務はまだ、消費者の間で大きな反響を得ることはできていない。

 中国工程院の院士である鄔賀銓氏は科技日報の取材に対して、「微信(WeChat)が広く普及し、ショート動画が爆発的に成長したように、ネットワーク建設とユーザーの規模が一定の程度に達してはじめて、キラーアプリケーションが登場するようになるだろう」との見方を示す。

 技術のアップグレードの産物としての「5G新通話」が大規模に応用されるかは、今後も経過を見守らなければならず、各大手通信キャリアの一致した取り組みが必要だ。

さらに幅広い応用シーンを生み出す「5G新通話」

 5G応用シーンは多岐にわたるものの、消費者市場ではユーザーの心を動かせるアプリケーションはまだ出ていない。そのため、3大通信キャリアが、音声通話を5G NR回線を使った音声技術「VoNR」に基づく「5G新通話」アップグレードした際、消費者にさまざまな新しい体験を提供できるため、業界で大きな反響を呼んだ。

 チャイナ・モバイルの市場経営部の首建国ゼネラルマネージャーによると、「5G新通話」は、5Gネットワーク環境に基づいて打ち出された新世代通話商品だ。従来の通話に比べて、「5G新通話」は、よりスピーディーで、クリアで、スマートで、幅広いという点で「新しい」と言える。

 中国情報経済学会の常務副理事長を務める国際通信学会(ITS)の常務理事・呂廷傑氏は、「『5G新通話』は、モバイル通信の革新的応用で、従来の微信といったアプリを使ったビデオ通話と比べると、映像の鮮明度が大幅に向上しているほか、ビデオ通話以外の他にもより多くのアプリ機能を実現している」と説明する。

 5Gネットワークの広い帯域幅、低遅延、高い信頼性といった特性を生かし、「5G新通話」の動画解像度は、480Pの高画質から、720Pの超高画質へとアップグレードできるほか、通話の過程で、スマホの画面を共有したり、画像、動画、ファイルなどを送信したりすることもできる。

 つまり、高品質の音声・ビデオ通話を最低限の重要機能としながら、「5G新通話」は、より新しく、より幅広い応用シーンを生み出している。そこには、ARやVR、遠隔ロボット制御、テレプレゼンス応用、各種IoTサービスといった新技術、新応用が全て含まれている。

 通信キャリアは今、5G新通話の応用を妨げる足枷を取り払おうと必死に取り組んでいる。アプリをダウンロードしたり、SIMカードを入れ替えたりすることなく、サポートできる端末さえあれば、5G料金プランに含まれている長さの通話内で、消費者は中国全土で、従来のビデオ通話業務をベースにして、インタレスト通話、コンテンツ共有、スマートカスタマーサービス、コーリングラインカード、遠隔サポートといったグレードアップした一連の通話サービスや革新的応用を体験することもできる。

 同業務は、「通話」という名になっているものの、提供されるサービスは通話だけに限らず、対象は一般ユーザーだけではないということは、言及しておく必要がある。

「研究報告」は、「5G新通話」の企業ユーザーや一般ユーザーにおける典型的な応用シーンと重要な価値を詳しく説明している。一般ユーザーに可視化、マルチメディア、交互性が強い通話体験を提供し、企業ユーザーにはさらに全面的、開放的で、信頼性が高く、あまねく恩恵のある情報サービスプラットフォームを提供するべく、「5G新通話」では、通話業務における新しいサービススタイルや応用価値が深く発掘されている。

 通信キャリアが、「通話」を切り込みポイントにして、5G応用を拡大させ、サービスを、さらに幅広いヒトとモノ、モノとモノのコミニケションへと拡大させ、個人市場から個人と企業の市場両方を重視し、垂直業界からより大きな市場とビジネスのポテンシャルを発掘することを切に望んでいることは明らかだ。

安全と信頼が最大の競争力

 モバイルインターネットが固有の商業構造にもたらした最大の変化は、インターネット企業がもたらした新業務と新スタイルが通信キャリアに与えた打撃と言えるかもしれない。

 人々は「5G新通話」と微信といったアプリとの関係を見直さざるを得なくなっている。「5G新通話」は、微信といったアプリからシェアを奪い、消費者を通信キャリアの「陣営」へと呼び戻すことができるのだろうか?

「研究報告」は、「通信キャリアの『生命線』とも言える最も基本的な業務としての音声通話は、通信キャリアにとって常にイノベーションの土壌となってきた。そして、着メロ・着ムービー、通話アシスタント、確認のショートメッセージといった価値向上サービスが、基本業務にイノベーション発展の空間を提供し、ユーザーの通話体験のバリエーションを増やしてきた」と分析している。

 にもかかわらず、最初からの通話形態と業務能力はここ20年以上にわたり、大きな変化は見られず、通話業務のイノベーションは、業務の質や応用スタイルのイノベーションをめぐってのみ展開され、通話の基本機能のイノベーションは不十分であるため、消費者と企業ユーザーの音声通話業務能力に対するニーズを通信網内で実現することはできず、ユーザーのインターネットと通信ネットワークが融合する通信ツールへの移行が進んできた。

 2012年にリリースされた微信のビデオ通話機能は、そのソーシャル的属性により、ユーザーの高いロイヤリティを獲得した。微信の「生みの親」である張小龍氏は2021年初めに、「微信でビデオ通話を利用している人の数は、1日当たり3億3000万人」と明かした。

 通信業界の独立型アナリスト・柏松氏は「人々が微信などのアプリを使ってビデオ通話をすることをより好んでいることは否定できない。また、各種会議ソフトも、人々の仕事のニーズをほぼ満たしている」との見方を示す。

 では、「5G新通話」はどこに競争力を見出すことができるのだろう?

 通信キャリアの基本通信業務としての音声通話業務は、キャリアグレード99.999%という業務の信頼性とセキュリティ保障メカニズムが最大の競争力だ。

「研究報告」は、「通信キャリアネットワークオールカバーとユーザーオールカバーを頼りに、新しい通話業務は今後、インターネット企業のプライベート・トラフィック制限を廃止し、本当の意味におけるオープンで、公平なトラフィックプラットフォームを構築し、どんな体系の企業、業者でも、通話プラットフォームをトラフィックの入口として、ユーザーにサービスを提供することができる」としている。

 理論的には、5Gユーザー端末が普及するにつれて、さらに効率よく、便利で、インタラクティブ性に富むことを追求した通信イノベーション発展を妨げる足枷がほぼ取り除かれるようになっている。

 微信を含むアプリがソーシャルエコロジカル、コンテンツ情報エコロジカル、応用サービスエコロジカルを形成するというのは、決して容易なことではない。

 以前、5G時代の重要業務イノベーションと見なされていた新しいサービス「5Gメッセージ」も、業界では「微信への包囲攻撃」と見なされていた。

 2020年、3大通信キャリアは共同で「5Gメッセージ白書」を発表し、5Gメッセージのコアコンセプトを詳しく説明し、エコロジカル建設構想を打ち出している。通信キャリアが連携して行動するというのは非常に珍しく、市場の5Gメッセージに対する期待が一気に高まった。ところが、同業務は現時点でも依然として商業スタイルのハードルを越えることができていない。

 柏松氏は、「『5G新通話』は通信キャリアの従来業務に対する重要なグレードアップで、理論的には明るい見通しを持っている。それは、微信の対抗馬として生まれたわけではないが、微信を含むアプリからユーザーを取り返さなければならない。それは、通信キャリアが考えるべき、ユーザーに習慣を変える理由をどのように与えるかという基本的な問題だ」と指摘する。

産業エコロジカルの再定義がカギ

 2022年には入ってから、通信キャリアと5G関連のサービスは依然として、大量のデータ通信が可能なパケットパックと5G端末に集中しており、ユーザーが喜んで費用を払う新サービスが登場していない。そして、「5G」と聞いて、「通信速度が速い」というのが依然として多くのユーザーのイメージだ。

 企業向けの「5G+インダストリアル・インターネット」が盛り上がりを見せているのに対して、一般ユーザー向けの5G応用は特筆すべき点に欠け、「5G新通話」が5G応用の新局面を切り開くことができるかは、通信キャリアが次にどんな一手を打ってくるかを見守らなければならない。

 呂氏は、「通信キャリアが『5G新通話』を通して、どのように産業エコロジカルを再定義するかがカギとなる。『5G新通話』がキラーアプリケーションとなるためには、個人市場以外に、産業級市場をターゲットにした開拓を展開することも同じくカギとなる」との見方を示す。

 柏松氏は、「『5G新通話』が盛り上がらない状態を打破するためには、通信キャリアがセキュリティ能力やコミニケション範囲といった優位性を活かし、ユーザー体験、能力の向上という面で、引き続きインターネット応用の経験を参考にし、応用シーン、サービスの品質の点で、業界のクライアントのために、信頼性が高く、オープンで、あまねく恩恵のある新通話業務を着実に構築し、めまぐるしく変化する新業務へと発展させ、音声動画通話のために画期的な業務グレードアップをもたらさなければならない」との見方を示す。

 通信キャリアは、『5G新通話』は将来スタート地点で、リリースされるたくさんの新機能は製品の全貌ではないと確信している。「接続+計算力+能力」が構築され、「ヒト、機械、モノ」の境界がさらにぼやけ、商業スタイルのイノベーションが進むにつれて、「5G新通話」製品は今後、持続的にアップデートしていくだろう。

「5G新通話」の登場により、劣勢に立たされている通信キャリアの音声通話業務に新たな希望をもたらしている。現時点では、爆発的な影響力を発揮するには至っていないものの、5G応用を「熟成」させるというのは、深海から魚を釣り上げる過程と同じで、より多くの忍耐力、知恵が必要で、「5G新通話」が本当の意味で5G時代の重要業務イノベーションになるかは、今後の成り行きを見守らなければならない。


※本稿は、科技日報「5G新通話用什麽打働消費者?」(2022年7月27日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。