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【22-38】中国独自設備で広がるグリーンエネルギーの可能性

何 亮(科技日報記者) 2022年09月06日

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中国初の浮体式洋上風力発電プラットフォーム 画像提供:取材先

 中国国務院新聞弁公室が7月27日に開催した記者会見で、中国国家エネルギー局の章建華局長は、「2014年以来、中国のエネルギー消費構造は大きく最適化された。中国の石炭消費の割合は年間平均1.4ポイントのペースで低下し、2014年の65.8%から2021年は56%にまで低下した。歴史的に低下ペースが最も速い時期となった。一方、クリーンエネルギー消費の割合は同期、16.9%から25.5%に上昇し、エネルギー消費の増加量に占める割合は60%以上となっている」と説明した。

 クリーンエネルギーがますます発展しているのは、エネルギー技術革新の能力が増強されているためだ。

洋上風力発電が深海・遠海に向かって前進

 洋上の風を利用して、人々の家に電気を供給する。

 いかにして「風」を掴み、「チャンス」をものにし、海の風をクリーンエネルギーに変換すれば良いのだろう?2021年12月25日、三峡集団が投資して建設された中国初の百万キロワット(MW)級の洋上風力発電、中国初の洋上風力発電フレキシブル直流送電プロジェクト、中国で離岸距離が最も大きい洋上風力発電プロジェクトの3プロジェクトが、全て系統連系を実現し、発電の目標を達成したと発表した。3プロジェクトの発電容量は合わせて280万MWで、約337万世帯の1年間の電気需要を満たすことができる。

 ここ20年あまりで、中国のクリーンエネルギーは、「風力発電」と「太陽光発電」の時代に突入し、洋上風力発電の発展が加速している。中国長江三峡集団有限公司の党組書記を務める鳴山会長はかつて、「陸上の水力資源には限りがあるのに対して、海洋資源は比類ないほど豊富で、洋上風力発電は最も優良な風力発電資源だ」と説明した。

 2020年7月12日、三峡集団の福建福清興化湾二期洋上風力発電所は、「ハイライト」を迎え、中国東方電気集団有限公司と共同で研究開発した10MWの洋上風力発電ユニットの系統連系が完了し、発電が始まり、中国の洋上風力発電ユニットとしては、最大の発電容量記録を更新した。

 東方電気風力発電股份有限公司の党委員会書記を務める賀建華会長は、「系統連系が完了し発電に成功したことは中国が10MW級の大容量洋上風力発電ユニットを独自に研究開発、製造、設置する能力を既に備えていることを示しており、洋上重大設備の国産化が実現し、洋上風力発電大国の代表的製品の重要な成果となっている」と強調する。

 中国東方電気集団有限公司が成熟した10MWプラットフォームをベースに独自に研究開発し、独自の知的財産権を有する13MWの洋上風力発電ユニットが今年2月、順調にラインオフし、当時の時点でラインオフしている単体設備の発電容量とブレード直径がアジア最大の風力発電ユニットとなり、中国初の13MWの風力発電ユニットともなった。

 三峡集団が投資・建設した中国初の浮体式洋上風力発電プラットフォームは現時点で、世界初の耐台風型浮体式洋上風力発電ユニットからなる「三峡引領号」を搭載しており、広東陽江洋上風力発電所で1年以上安定して稼働している。また、さらに大型の風力発電ユニットや浮体式風力発電ユニットの研究開発が急ピッチで進められており、中国の洋上風力発電開発は今、深海・遠海に向かって少しずつ前進している。

独自化が向上する太陽光発電技術

 隆基緑能科技股份有限公司(以下「隆基緑能」)は過去1年余りの間に、太陽電池の変換効率の世界記録を連続10回で更新している。今年6月、同社のシリコンヘテロ接合太陽電池の研究開発の面で再びブレイクスルーを実現し、太陽光発電の変換効率が26.5%を達成し、ビッグサイズ単結晶シリコン太陽電池の効率の世界新記録を更新した。

 変換効率が高いということは、同様の日照条件の下でも、太陽光発電量が大幅に増加するということを意味する。

 10数年前、中国の太陽光発電産業のエネルギー変換効率は約13%だった。

 隆基緑能の李振国総裁は、上海の崇明島で2007年に同社初の太陽光発電モデルプロジェクトを完成させた。当時のエネルギー変換効率とコストに基づいて計算すると、電気代は1kWh(キロワットアワー)当たり4元(1元は約20.1円)だったことをはっきりと覚えているという。しかし、今では、中国の太陽光発電の通常の電気代は1kWh当たり約0.3元にまで下がっている。

 10数年の発展を経て、中国の太陽光産業は技術の面で、並走から、先頭を走るようになるまで発展し、中国のエネルギーのモデル転換に、基盤技術の下支えを提供するようになっている。李総裁は取材に、「十数年前、中国の太陽光産業は、『原材料』、『市場』、『設備』の面でいずれも海外頼みだったが、今では、設備からサプライチェーンに至るまで完全に国産化が実現している」と語った。

 世界の太陽光産業チェーンは今、ほぼ中国に集中していると言える。中国の太陽光産業の多結晶シリコン生産能力は世界全体の約80%を占め、単結晶シリコン生産能力は99%に達し、電池やコンポーネント部分の生産能力は約80%を占めている。

 隆基緑能をはじめとする中国の太陽光発電企業は今、次世代太陽電池の研究開発の面で展開を急ぎ、国家重点研究開発計画関連の特別プロジェクトの申請を積極的に行い、産学研が連携する形で、中国の太陽光発電の独自化の道を進んでいる。


※本稿は、科技日報「自主研発設備譲緑色能源"風光"無限」(2022年8月8日付4面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。