科学技術
トップ  > コラム&リポート 科学技術 >  File No.22-47

【22-47】雲を雨に変える 気象制御には自然のサポートが欠かせない

付麗麗(科技日報記者) 2022年09月30日

 先日、重慶市で、高温と干ばつが続いたことにより山林火災が発生した。

 中国気象局は8月23日に高性能航空機1機を派遣し、人工的に雨を降らせて干ばつ対策を行う重慶を支援するとともに、専門家も派遣して人工降雨の作業の指導に当たらせた。

 このニュースを耳にした多くの人は安堵した。「ひとまとまりの雲があれば、人工降雨は必ず成功する。重慶は少し涼しくなるだろう」というわけだ。それでは一体、人工降雨はどのようにして実現するのか。どんな基準を満たせば実施できるのか。

チャンスはすぐに消え失せる 人工降雨ではタイミングを待つことが必要

 気象制御のことを聞いたことのある人は多いだろう。では、空の上のひとまとまりの雲を、地上に降り注ぐ雨の滴にどうやって変えるのだろうか。

 中国気象局気象制御センターの周毓荃首席専門家は、「気象制御は気象災害を回避または軽減するために、雲と降水の物理学の原理を利用して、主に雲の中に触媒を送り込む方法を採用し、ある場所の局地的な天気の動きを人類にとってプラスになる方向へと転換させる科学的措置だ。人工降雨、降ひょう抑制、人工雲消去、人工霧消去などを総称して言う」と説明した。

 周氏によると、人工的に雨を降らせたいと思うなら、まず適切な雲の塊を見つけなければいけない。一般的に言って、雲の厚さが2千メートルを超え、氷晶があまりなく水蒸気を豊富に含む上、雲の塊の外側には絶え間なく十分な水蒸気の補給がある条件があれば、『審査』合格とみなし、人工降雨のポテンシャルがあると認定されるという。

 具体的に言うと、雲には冷たい雲と暖かい雲がある。暖かい雲は中に小さな水滴をたくさん含み、温度は0℃以上、上昇気流に取り込まれて空へ上って降りてこない。冷たい雲の温度は0℃以下で、中にたくさんのキラキラした氷晶と過冷却水滴を含むが、それらは小さくて軽いため、上昇気流に取り込まれ、やはり降りてこない。周氏は、「こういう場合に(雨を降らせるに)は人工的なサポートが必要になる」と述べた。

 周氏によれば、適切なターゲットは常に存在するわけではなく、タイミングを待つ必要がある。作業の条件が成熟すると、作業員が触媒の量、作業の設備、作業のタイミングなどを含む作業プランを打ち出し、航空管制当局に作業する空域を申請する。タイミングが逃げないうちに触媒を雲の中に送り込み、「豆腐ににがりを入れる」ようにして、雲を雨水に「変身」させる。

雲によって触媒も異なる

 周氏は、「冷たい雲と暖かい雲とで降水メカニズムが異なり、必要な触媒の種類も変わってくる。現在よく使用される触媒には冷媒(ドライアイスなど)、結晶材料(ヨウ化銀など)、吸湿剤(食塩、尿素など)などがある」と述べた。

 冷媒と結晶材料は主に冷たい雲に使用される。ドライアイス、液体窒素、ヨウ化銀などは雲に送り込まれると、短時間で大量の人工の氷晶核が作り出される。氷晶核は氷晶に転換し、氷晶は水蒸気を吸収し、凝結して成長するか、過冷却水に出会うと氷晶に変化する。氷晶がある程度の大きさになって、上昇気流が取り込むことができなくなると、下に落ちて雨になる。

 一方、暖かい雲には吸湿剤を使用する。吸湿性のある食塩、塩化カルシウム、尿素、硝酸アンモニウムなどを雲の中に送り込むと、小さな水滴が急速に成長し、直径数十マイクロメートル以上の大きな雲滴になると、この「太りすぎた」雲滴は体重も「激増」して、上昇気流が取り込めず、やがて重力に逆らえなくなって下に落ちるしかなくなり、こうして雨が降るようになる。

 それではどうやって触媒を雲の中に送り込むのか。周氏は、「送り込む時にはさまざまなハイテク設備が大活躍する。まずは航空機で、重なり合った雨を降らせる雲系であれば、作業員は高性能航空機の『新舟60』や『空中国王』などを派遣して任務に当たらせ、雲の中まで直接飛んでいって、種をまくように触媒を雲の中にまく。今回重慶に派遣したのは高性能航空機『新舟60』で、空中での作業の機動性が高く、触媒の作業面積が広く、人工降雨で優れた効果を上げる」と説明した。

 また、ロケットを使う方法がある。強い対流雲にぶつかり、雷がたくさん発生して、航空機の派遣が危険という場合には、作業員が方角をしっかり計算して、作業場所でロケット打上台を利用して触媒を含んだロケット弾を空中に打ち上げる。ロケット弾は予定されたターゲットの雲のところまで行くと、触媒が自動的に点火し、ロケット弾の通り道に沿って燃え続け、触媒を線状にまく。また山間部など特殊な地形の場所では、人工降雨のボイラーがあり、触媒はボイラーで燃焼させると空にゆらゆら立ち上り、やがて雲の中にたどり着く。

 周氏によると、一般的には、触媒を送り込むのに成功してから15-20分後に、人工降雨の効果がはっきりわかるようになるという。

 気象制御で使用する触媒は環境を汚染しないのだろうか。専門家によると、気象制御の作業で使用される触媒は主にドライアイス(固体に酸化炭素)、液体窒素、ヨウ化銀などで氷生成の能力が高く、毎回の作業での使用量は非常に少ない。常用される冷たい雲の触媒について言えば、ドライアイス、液体窒素は気化して二酸化炭素と窒素になるが、どちらも空気の主要な構成要素であり、「生態環境にとって安全な触媒」であり、正しく使用すれば環境を汚染することはないという。


※本稿は、科技日報「化雲為雨需具備条件人工影響天気也得天幫忙」(2022年8月25日付3面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。