科学技術
トップ  > コラム&リポート 科学技術 >  File No.22-66

【22-66】宇宙強国建設に向かって着実に前進 10年で飛躍的発展

孫 菽芸 呉 暁波 付 毅飛(科技日報記者) 2022年12月08日

image

2022年9月30日、北京宇宙飛行制御センター(BACC)が撮影した実験モジュール「問天」が「転位」する画面。「問天」は、コアモジュール「天和」から分離し、平面転位の方式で転位を行った。撮影・郭中正(新華社記者)

 中国有人宇宙飛行プロジェクト・宇宙ステーションシステムのチーフエンジニアを務める航天科技集団第五研究院全体設計部の研究員・楊宏代表は10月16日午前、人民大会堂で中国共産党第20回全国代表大会の報告を聞いた。習近平総書記が報告の中で、「宇宙強国建設加速」を再び強調し、有人宇宙飛行、月・火星探査、衛星測位といった宇宙飛行分野のイノベーションを高く評価したことに気持ちを高ぶらせながら。

 2012年に開かれた中国共産党第18回全国代表大会以来、中国の宇宙飛行事業は、イノベーション・発展の「急行車線」を走り始めた。2013年、習総書記は、「宇宙飛行事業を発展させ、宇宙強国を建設することは、私達が絶えず追い求めている『宇宙飛行の夢』だ」と指摘し、宇宙飛行事業関係者に対して、宇宙強国建設の号令をかけた。

 宇宙技術の発展に向けて、宇宙飛行関係者は、習総書記の配慮と科学的指導を着実に実行へと移し、宇宙強国建設推進を加速させてきた。宇宙ステーション「天宮」の建設が着々と進み、月探査機「嫦娥」が月面を走り、火星探査機「天問」が火星を探査し、衛星測位システム「北斗」が世界中で応用されるなど、中国の「誇り」が広大な宇宙に次々と送り込まれ、宇宙強国建設の新たな楽章を奏でている。

中国人のための「宇宙の家」を建設する夢を追いかけて

 1時間半ごとに、独特な「星」が上空を通過し、宇宙愛好者が競うようにそれを撮影している。その「星」の名前は「天宮」だ。

 中国人のための「宇宙の家」を建設しようと、宇宙飛行関係者は、有人宇宙飛行事業の「3段階」戦略にしっかりと沿って、前進し続けてきた。航天科技集団第五研究院の研究開発チームは、中国の宇宙技術発展における主力層で、ここ10年近くの間、中国の宇宙ステーションの設計、建設から、軌道上での運行までの全ての過程を、独自に成し遂げて来た。

 2013年、有人宇宙船「神舟10号」が「天宮1号」とドッキングし、コンビネーション飛行することにより、中国は有人宇宙船初の応用的飛行を行った。2016年、多目的宇宙船の縮小版帰還モジュールが帰還に成功。新世代多目的宇宙船のキーテクノロジーが検証された。同年、宇宙実験室「天宮2号」と有人宇宙船「神舟11号」の有人飛行任務において、宇宙飛行士の長期的な宇宙滞在が初めて実現した。2017年、無人補給船「天舟1号」の打ち上げとともに、「天宮2号」とのドッキングに成功し、有人宇宙飛行プロジェクトの第2段階が完了。中国は、宇宙ステーション建設に必要なキーテクノロジーを比較的全面的に確立した。

 2021年4月29日、中国の宇宙ステーションの1つ目のモジュール「コアモジュール天和」の打ち上げに成功し、中国の有人宇宙飛行プロジェクトの第3段階が幕を開けた。研究開発チームは、複数の地域でさまざまなレベルで全力を尽くし、有人宇宙飛行プロジェクトの8度の打ち上げ、2度の帰還、6度の船外活動のミッションを無事成功させ、宇宙で軽快な動きを見せるロボットアームといった「神器」が、多くの人を驚嘆させてきた。

 楊氏は、「中国は既に軌道上で宇宙ステーションのキーテクノロジーの検証ミッションを完了させた。そして、宇宙ステーション3つ目のモジュール『夢天』を間もなく打ち上げる計画だ。宇宙ステーションの組み立て、建造ミッションが無事成功するように、丹精を込めて計画、準備、実施を行わなければならない」と話す。

難関を突破し、探査は地球-月系を超えてさらに遠い火星へ

 月を見て物思いにふける人も多いが、「嫦娥」があることによって、宇宙飛行関係者は月を見て、深い思い入れを感じている。

 第五研究院の月探査チームは、「月の表にある『嫦娥3号』と『5号』、裏にある『嫦娥4号』など、全てを当チームが研究開発した」と胸を張る。

 2013年、「嫦娥3号」は月面への軟着陸に成功し、科学観測を展開。中国は初めて、地球外天体で軟着陸に成功させ、直接探査を行うようになった。これにより、中国の月探査プロジェクトの第2段階の目標を全て達成した。2019年、「嫦娥4号」は人類史上初めて月の裏側に軟着陸して、探査を始め、月の裏側と地球との中継通信に成功し、月の裏側に中国の足跡を残した。

 2014年、月探査プロジェクトの第3段階の口火を切った「嫦娥5号」試験機の打ち上げ、帰還に成功し、中国は宇宙機が第2宇宙速度に迫る速度により、高速で地球の大気圏に再突入するためのキーテクノロジーを確立した。2020年、「嫦娥5号」は中国初の地球外天体サンプルリターンを成功させた。それにより、中国の月探査プロジェクトの「周回探査」、「月面への軟着陸と探査」、「サンプルリターン」の3段階全ての計画が無事完了した。

 世界の月探査ミッションの成功率は約50%であるのに対して、中国は「6戦全勝」で、初の月面軟着陸、初の月の裏側への着陸、初の月からのサンプルリターンを成功させた。世界の宇宙飛行史上においてこのようなパーフェクトな成果を収めているのは、中国だけだ。

 38万キロ離れた月のほか、中国の宇宙飛行関係者はその目を4億キロ離れた火星にも向けている。

 2020年7月23日、火星探査機「天問1号」の打ち上げに成功し、9ヶ月以上に及ぶ長い旅を経て火星に着陸成功。中国は世界で2番目に火星への着陸、探査を成功させた国となった。

 第五研究院の「天問1号」のチーフエンジニア・孫沢洲氏は、「1度のミッションで火星の周回、着陸、探査の3大目標を達成したというのは、人類の宇宙飛行史上初めてのことだ」と強調する。

 これにより、中国の宇宙探査の旅路は重要な一歩を踏み出し、地球-月系からさらに遠い火星まで、その範囲を大きく広げた。

さらなる高み、新たな功績を目指す中国の宇宙飛行事業

 2012年12月、中国の衛星測位「北斗」のアジア太平洋地域での運用が始まった。これにより、中国が「北斗」のシステム建設の第2段階の戦略目標を達成した。

 北斗の研究開発チームは、立ち止まることなく前進し続けている。そして、独自の知的財産権を有する衛星間リンクといったコアテクノロジー160件以上を確立し、コアパーツの100%国産化を実現した......。同チームは3年足らずで、世界でサービスを提供するための北斗3号の配置を完了させ、「北斗」は誕生して最先端へ、地域でのサービス提供から世界中でのサービス提供へと、歴史的飛躍を遂げた。

 2020年7月31日、「北斗3号」グローバル衛星測位システムが開通した。これにより、中国が独自の、オープンで互換性のあるグローバル衛星測位システムを完成させた。中国は世界で3番目に独自のグローバル衛星測位システムを有する国になった。

 上記の重要プロジェクトのほか、ここ10年にわたり、中国の宇宙技術は多くの分野で、目を奪わんばかりのさまざまな素晴らしい成果を上げてきた。

 リモートセンシング分野を見ると、高解像度地球観測システムプロジェクトが無事完了し、中国はマルチレベルで、立体的に、複数の角度から、全方位、全天候で地球を観測できる新時代へと突入した。通信分野を見ると、中国は初のハイスループット衛星「中星16号」を打ち上げ、中国の通信衛星はインターネット応用への時代へと突入している。技術試験分野を見ると、人工衛星「実践20号」は、世界最先端の超大型パブリック衛星プラットフォーム技術にベンチマーキングしている。それは、中国の新世代大型対地同期軌道衛星プロジェクト技術が、「追走」から「リード」への飛躍を実現したことを示している。宇宙科学分野を見ると、「実践10号」宇宙微小重力科学実験衛星や硬X線モジュレーション望遠鏡衛星、電磁環境モニター試験衛星「張衡1号」、重力波探査衛星「天琴1号」などが、中国の宇宙科学衛星システムの研究開発技術、探査ペイロード技術、科学応用技術の発展を力強く推進している。

 航天科技集団第五研究院を例にすると、中国共産党第18回全国代表大会が開催されてから2022年9月30日までの10年間、研究開発した宇宙機を計262機打ち上げてきた。同院が創設されて54年の間に、筆頭となって研究開発した宇宙機の65.8%を占める数だ。

 新たなスタート地点に立った今、宇宙飛行関係者は責任の重さを再び感じている。楊氏は「習総書記の宇宙飛行事業に関する重要な論述を真剣に学んで会得し、宇宙ステーションプロジェクトとはテクノロジー強国、宇宙強国を建設するための重要なリーディングプロジェクトであるという奥深い意義を十分に認識し、中国が宇宙飛行テクノロジーをハイレベルに引き上げ、自立自強を実現できるよう新しい貢献をしたい」と述べた。


※本稿は、科技日報「航天強国建設邁出堅実歩伐」(2022年10月21日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。