【23-12】リアルへ向かうAI 大きな価値を生み出すスマート技術
劉 艷(科技日報記者) 2023年02月21日
百度研究院、2023年テクノロジー動向予測を発表
百度研究院が1月5日に発表した2023年テクノロジー動向予測は、▽基盤モデルのエコロジカル▽デジタルとリアルの融合▽バーチャルとリアルの共生▽自動運転▽ロボット▽科学的計算▽量子計算▽プライバシー保護コンピューティング▽テクノロジー倫理▽テクノロジーの持続可能な発展-という、カギとなる10分野に的を絞って、技術の発展の脈絡および産業の方向性を示している。
百度の最高技術責任者(CTO)を務める百度研究院の王海峰院長は、「人類のテクノロジー発展史を見渡すと、テクノロジー革命と産業変革を推進するコア技術は通常、高い普遍性を持っている。標準化、自動化、モジュール化された工業大生産の特徴を備えると、インフラとしてのコア技術の価値効果は、より高く、より実用的になり、非常に勢いの強い産業の高度化と社会の進歩を下支えするようになるものだ」との見方を示す。
百度研究院が10大テクノロジー予測を発表するのは今回で4年目だ。これまでの複数の予測は、既に、技術や産業発展の軌跡であり、スマート技術が構築したテクノロジー変革の主要課題は、技術がより高く実用的になり、大規模に応用される価値を示している。
スマート産業研究院(AIR)の張亜勤院長は、「重要なエンパワーメント型技術としての人工知能は、人類社会に既に更なる変化をもたらし、その変化は今後もさらに深みを増していくだろう。それは、2023年百度10大テクノロジー動向予測でも示されている。スマートコンテンツの作成、科学的計算、自動運転、量子計算、持続可能な発展といった分野では、『+AI』が、最も感動的な研究方向の一つとなっている」との見方を示す。
百度研究院は、「2023年のコアテクノロジーの動向は、(1)技術基盤の継続的な強化(2)人工知能の分野の枠を超えた融合がより着実になる(3)スマート化イノベーションがさらに実務的になる―を主な方向性として展開されるだろう」との見方を示す。
王院長は、「産業のスマート化の基盤強化により、産業のスマート化の高度化がさらに加速するだろう。ディープラーニングプラットフォームによりモデルが拡大し、ハードウェア適合、モデルのトレーニング、推論の導入から、シーンへの応用までのAIのオール産業チェーンをカバーするようになっている」と説明する。
中国の産業の実践を見ると、「業界の基盤モデル」は既に、宇宙飛行や金融、エネルギーといった分野で、ニーズに基づいてAIインフラが構築され、「AI+業界」の応用イノベーションが促進されている。業界の基盤モデルは今後、さらに多くの分野をカバーし、少しずつエコシステムが形成されて、数多くの業界のスマート化の高度化にサービスが提供されるようになる見通しだ。
2023年は、強固なスマート化の基盤により、Web3.0やメタバース、自動運転、AIGC、量子テクノロジーといった新たな分野に、新たな産業的チャンスが訪れることになるだろう。
自動運転の分野を見ると、中国の主な都市では商業化が進んでいる。今後は運営範囲と車両数の規模が拡大するという流れになり、自動運転技術が駆使されたスマートカーの市場浸透率も新たな高みに達し、スマートカー産業は「試験運用」から、大きな発展を遂げる段階へと突入すると予測されている。
バーチャルとリアルの共生という分野を見ると、Web3.0技術は今後、マルチセントラリゼーションで、一層オープンで公平、安全な新型ネット空間が構築されると予測されている。
中国工程院の院士で、バーチャル・リアリティ産業連盟の趙沁平名誉理事長は、「未来のデジタル社会は、次世代スマートネットワークやモノのインターネット(IoT)、ブロックチェーンなどをインフラに、マン・マシン・インタラクション、人工知能などをインタラクションプラットフォームに、バーチャルとリアルの共生技術により、客観的物理世界とデジタルバーチャル世界を融合・増強するだろう。バーチャル・リアリティは現在、中国のテクノロジーと産業発展の新たな戦略的方向性となっている。数年の波型、螺旋型の発展期を経て、バーチャル・リアリティ産業は日に日に成熟・理性化している。百度研究院の2023年のテクノロジー動向予測は、バーチャルとリアルの共生を非常に重要な方向性に位置付けている。バーチャル・リアリティ技術と産業発展が加速するシグナルといえるだろう」と分析する。
張院長は、「人工知能は、第4次産業革命において最も重要な基礎技術の一つである。過去の3度の産業革命において、中国は相対的な『傍観者』か『追走者』だったが、今回は、一部の分野における『リーディングプレイヤー』になる可能性を十分に秘めている」と強調した。
※本稿は、科技日報「AI向実而生 智能技術将大規模実現価値」(2023年1月6日付3面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。