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【23-20】新エネ産業の発展を促す天津浜海ハイテク区

陳 曦(科技日報記者) 2023年05月11日

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天津力神電池の工場で機械を操作する従業員。(撮影:李然 新華社記者)

 中国の天津浜海ハイテク区では新エネルギー産業が急成長を遂げており、2022年の産業チェーン全体の売上高は前年比34.8%増の358億9500万元(1元=約20円)となった。うち、太陽光発電産業サブチェーンは91%増の201億9300万元、リチウムイオン電池産業サブチェーンは59.3%増の103億4600万元で、産業チェーンの強靱性と競争力が高まり続けている。

 3月15日、天津浜海ハイテク区内にある天津力神電池の動力電池生産ラインに足を運ぶと、ロボットアーム数十台が秩序正しく作業を行っていた。他にも部品を運ぶ複数の搬送ロボットが行き交い、作業員数人がディスプレイを見て、キーパラメータを確認していた。

 同社動力電池製品製造部の趙暁軍副部長は「春節(旧正月)連休中も、われわれは生産を止めなかった。注文がなくなるのを心配したのではなく、製品を期日通りに納品したかったからだ。2022年、われわれのパワーバッテリープレート売上高は76%増だった」と説明した。

 天津浜海ハイテク区は、国家ハイテク区、国家独自イノベーションモデル区として、常に新エネルギー産業の発展を重視し、動力電池、太陽光発電、風力発電という三つの産業チェーンをカバーする、特色ある新エネルギー産業体系を積極的に構築してきた。天津浜海ハイテク区がこのほど発表した「天津浜海ハイテク区における新エネ産業の質の高い発展促進規則」は、企業の誘致・育成、企業の成長、技術イノベーション、人材誘致、応用モデル、エコシステム構築という六つの面から、同ハイテク区内でパワーバッテリーや太陽エネルギー、風力エネルギー、水素燃料電池などの新エネルギー産業を研究開発、生産、応用している企業に対し、資金の支援を行うとしている。

優位性のある3分野を形成

 天津浜海ハイテク区にあるTCL中環新エネルギー科技(以下「TCL中環」)の年間25ギガワット(GW)分の高効率太陽エネルギー超薄型単結晶シリコン生産プロジェクトは、スタートからわずか3カ月で1億個近くを生産し、世界各地に輸出された。

 TCL中環の張雪囡サブチーフエンジニアは「シリコンチップはソーラーパネルの『基盤』のようなものだ。われわれの新プロジェクトで生産されるシリコンチップは、エネルギー変換効率が大幅に向上しており、グリーン電力の増加ニーズを満たすことができる」と胸を張った。

 力神電池も積極的にイノベーションを創出している。2021年に比エネルギーが300Wh/kgに達するパワーバッテリーの車両搭載テストに成功し、その後はエネルギー密度がより高く、低コストで安全性が高い「大円柱」パワーバッテリー研究開発センターと生産ラインの建設を計画している。また、力神浜海新エネルギー産業拠点24ギガワット時(GWh)パワーバッテリープロジェクトも本格的に始動している。

 TCL中環と力神電池は、天津浜海ハイテク区で急速に発展する新エネルギー産業の縮図にすぎない。同区の新エネ産業はここ数年、急成長の勢いを維持しており、産業イノベーション高度化の重要な支えとなっている。

 天津浜海ハイテク区党委員会書記で管理委員会主任の夏青林氏は「新エネ産業の発展のために、ハイテク区は新エネ分野の著名企業やリーディングカンパニーを集め、三つの新エネ分野を形成している。分野は細分化され、産業チェーンが日増しに整備されている」と説明した。

 太陽光発電産業では、TCL中環や中国電子科技集団公司第18研究所をはじめとする企業や研究機関が、結晶シリコンやシリコンチップ、ソーラーモジュール、太陽光発電システムなどで良好な発展の基盤を築いている。

 リチウムイオン電池産業では、力神電池や天津巴莫科技、中電科藍天科技、天津賽徳美新能源科技などの企業が「電池材料-研究開発設計-生産製造-性能検査-電池応用-電池回収」という完全なチェーンを形成している。

 風力発電産業では、天津明陽風電設備などの企業が風力発電ブレード、風力発電ユニット、洋上大出力風力発電ユニット、コア部品の開発・製造で高い実力を示している。

チェーン全体のイノベーション体系を構築

 先端プロジェクトが次々と実施され、優れた新エネ企業がこれまでにないペースで天津浜海ハイテク区に集まるようになったのは、先を見据えた同区の戦略的展開と密接な関係がある。

 夏氏は「2022年にわれわれは新たな機構改革を実施し、新エネルギー産業局を再編して産業チェーンがけん引的役割をさらに果たすようになった。また、専門グループとメンバー機関を統一的に管理し、役割分担が明確で、一致協力する産業チェーンの運営保障体系が構築された」と語った。

 同区は産業マップを拡大し続け、チェーンを連結、補完、強化し、新エネ産業マップや投資誘致マップを制定し、それに沿って投資誘致事業を実施している。力神浜海新エネ産業拠点では、プロジェクトの調印、実施が進んでいる。例として、TCL中環の天津における太陽エネルギーシリコンチップの生産能力は計50ギガワット(GW)を上回った。また、環晟新能源(天津)の年間生産能力3GW高効率シングルド太陽光モジュールスマート工場プロジェクトが完成し、稼働している。国家級風力発電ブレード検査、研究開発拠点1期プロジェクトは基礎工事が完成し、検査も完了した。

 天津浜海ハイテク区は産業の研究を深め、関連政策文書を整理し、新エネ産業の事業構想を図り、理論的基盤の構築に力を入れている。

 2021年、天津新能源産業(人材)連盟が天津浜海ハイテク区で発足し、「研究開発-転化-産業化」のオールイノベーションチェーンが構築された。産業一体化の実施と各種先進的要素のマッチングを加速度的に推進し、人材と新エネルギー産業の質の高い発展が歩調を合わせて推進されている。同区は天津新能源産業(人材)連盟や天津市パワーバッテリー協会といった業界組織を通じ、地元と他地域のリーディングカンパニーのマッチングを進めている。また、地元の大学や政府の職能別部門は、新エネ産業チェーン重点企業の中核部分に関する調査・研究を実施したほか、22年にはオフラインイベントを10回、オンラインイベントを23回開催した。

新エネルギー産業の重要拠点構築へ

 1年以上にわたる周到な準備を経て、天津浜海ハイテク区は、天津市で初めて新エネ産業を対象にした特別政策「天津浜海ハイテク区新エネ産業の質の高い発展促進規則」を打ち出した。同区管理委員会の崔同湘副主任によると、同規則の制定過程で、四つのイノベーションが体現されている。一つ目は、企業に対し「国家スマート太陽光発電テスト事業モデル企業」の申請を行うよう奨励し、太陽光発電のイノベーション応用を模索することで、産業発展を促進する。二つ目は、ハイテク区内企業の分布型風力発電・太陽光発電・エネルギー貯蔵プロジェクト・建設推進を支援し、同区のエネルギー貯蔵産業発展を促進する。三つ目は、ハイテク区内の一定規模(年間売上高2000万元)以上の新エネ企業に対し、区内企業の製品購入を支援し、区内の新エネ産業チェーン、サプライチェーンの協同発展を促進する。四つ目は、各種社会組織の資源的優位性を活用し、製造型、テクノロジー型新エネルギー企業を同区に誘致し、新エネ産業の発展を促進する。

 夏氏は「当区は今後、専門サービス能力を高め、産業の研究を持続的に深化させていく。国家政策の方向性にしっかりと追従し、エキスパート型人材を育成し、産業基盤を生かして、新エネ産業政策を積極的にPR・推進し、新エネ産業発展の雰囲気づくりを積極的に整備していく」と述べた。

 同区は今後、重点プロジェクトに焦点を当て、交渉が進んでいるプロジェクトに対するサービスや関連業務をしっかり行うとともに、パワーバッテリー、再生可能エネルギー、双炭(二酸化炭素排出量ピークアウトとカーボンニュートラル実現)という三つの方向性に的を絞り、力神電池やTCL中環などのリーディングカンパニーを通じて、産業構造を調整し、川上・川下資源を発掘していく。

 また、産業の弱点にも着目し、チェーンの連結・補完に力を注ぎ、パワーバッテリー分野において、ナトリウムイオン電池や全固体電池などの最先端分野の展開を重点的に進めていく。太陽光発電分野では、パネルやインバータ、コネクタなどに重点を置き、ターゲットを絞って注力する。風力発電分野では、ブレード、ユニット検査、発電所の運営・メンテナンスなどの展開に力を入れる。

 夏氏は「今年は新エネ産業クラスターの建設を加速させ、天津、さらには京津冀(北京・天津・河北)の新エネ産業先進地を構築する」と語った。


※本稿は、科技日報「"組合拳"促新能源産業発展」(2023年3月21日付7面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。