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【24-03】大規模モデルが今後進む道は?

都 芃(科技日報記者) 2024年01月11日

 先日開催された「第6回世界音声博覧会(WORLD VOICE EXPO)兼2023科大訊飛世界1024開発者フェスティバル」で、科大訊飛(アイフライテック)が大規模AI(人工知能)モデル「訊飛星火(アイフライテックスパーク)」V3.0を発表した。テキスト生成能力や言語理解能力、Q&A能力、論理的思考能力、コーディング能力、数学的能力、マルチモーダル能力が前バージョンよりアップグレードをしている。

業界向けの実際の応用シーンを見つける

 科大訊飛は今回の発表会で「訊飛星火」V3.0のほか、工業や法律、金融など12業界に特化した大規模モデルを一気に発表した。

 大規模モデルの発展にとって、これまで課題となっていたのは、業界に深く入り込むことだ。科大訊飛の劉慶峰董事長は「特定の業界を対象に、ニーズに合った応用シーンを見つけることが、大規模モデルの産業化を促し、商業的価値を実現する重要な基礎となる」と見解を述べた。

 科大訊飛が今回発表した12業界向けの大規模モデルは、多くの業界におけるスマート化の課題に焦点を合わせている。

 劉氏は「業界の特徴とニーズに合った大規模モデルを作るには、本当に業界と応用シーンを知っているリーディングカンパニーと連携しなければならない。業界の大規模モデルは、リーディングカンパニー内部での構築に成功した後で業界全体を活性化するため、連携企業にはオープンな考え方が求められる」と指摘。そして「すべて揃っていて利便性に富み、使いやすいトレーニングツールは、業界特有の内容に対して効率良くトレーニングができる。これは、大規模モデルを業界で応用する上で極めて重要なことだ。カスタムツールを開発し、企業が自分で操作して問題を解決できるようにする必要がある」と述べた。

 業界向けカスタム大規模モデルのコストが依然として高い現状について劉氏は「大規模モデルはまず、典型的な応用シーンを見つけ出し、業界のリーディングカンパニーと共に、共通シーンにおける応用を実現しなければならない。大規模モデルが、業界において一定の汎用性を備えるようになれば、カスタマイズが必要なコンテンツはさらに減り、コストも自然と低減する」と分析した。さらに「大規模モデルが数多くの業界を活性化するためには、多層的対話や能動的対話から、啓発型対話への飛躍を実現する必要がある。大規模モデルは質問に答えるだけでなく、自ら質問できるようになる必要がある」と述べた。

 「訊飛星火」は今回のアップデートでこの点に着目し、個性化AIキャラクター設定機能が追加された。この機能により「訊飛星火」にはベースとなる「性格」が形成され、長期間にわたる安定した記憶力や多様な個性、豊富な感情を備えるようになり、特定の知識学習や対話、記憶学習を組み合わせることで、より個性化したAIキャラクターを作り上げることができる。

方向性を定め、完全な自立エコシステムを構築する

 大規模モデルのトレーニングと応用には、ビデオカードで構築されたコンピューティングプラットフォームが必要不可欠で、計算能力が中国のAI発展で再び注目の的となっている。今回の発表会では「訊飛星火」V3.0のほか、通信機器大手の華為(ファーウェイ)と共同で発表した中国製コンピューティングプラットフォーム「飛星一号」も大きな注目を集めた。劉氏は「訊飛星火V3.0は国産コンピューティングプラットフォーム上でトレーニングを行った大規模モデルだ」と説明した。

 華為の徐直軍輪番董事長は発表会で「あらゆる人、家庭、組織がデジタル世界を心ゆくまで楽しみ、全てのものをつなぐインテリジェントな世界を実現することのが、われわれの使命とビジョンである。全面的なスマート化戦略の牽引の下、われわれは今後も引き続き、計算能力の強固な基盤を築き、最終的に全てのものをつなぎ、全ての意思決定を計算できるようにし、大規模モデルがさまざまな業界を活性化するよう取り組む」と強調。「訊飛星火V3.0は、『飛星一号』上ではトレーニング効率が2倍になり、一層効果的で安定したトレーニングが行えるようになった。今後われわれは、より大規模なパラメータ数を持つ訊飛星火V4.0へのアップグレードに向け、力強いサポートを提供していく」と述べた。

 独自で革新的な計算能力の基盤は、中国の大規模モデル発展の重要な基礎となる。劉氏は「現在使用している国産のコンピューティングプラットフォームには、依然として一定の移動コストが存在しているが、これは必要不可欠なステップだ」と語った。

 科大訊飛は今後、「飛星一号」をベースにして、OpenAIのGPT-4に匹敵するさらに大規模なパラメータを持つ「訊飛星火」V4.0のトレーニングを始める計画だ。劉氏は「当社にとって、これは単なる技術的基準への対応の問題ではない。われわれは独自の技術ロードマップを歩み、独自の産業方向性を持ち、独自の完全なエコシステムを作り上げなければならない」と訴えた。


※本稿は、科技日報「大模型的下一步该怎么走」(2023年11月24日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。