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【24-10】中国における水素エネルギーの発展動向

松田侑奈(アジア・太平洋総合研究センターフェロー) 2024年02月02日

 水素エネルギーはその重要性から、中国でも近年、関連政策やファンディングプロジェクトが増えつつある。

 2021年以来発表された水素エネルギー関連政策は、国家級で10件、省級で83件、市や県級で252件に至る。水素エネルギー産業はクラスタ化発展傾向を示しており、京津冀(北京・天津・河北)、長江デルタ、粤港澳(広東・香港・マカオ)エリアにおける大規模企業は300社以上となっている。また、蘇州、仏山、武漢、成都には多くの水素エネルギー企業と研究機関が集まっており、水素エネルギー産業の発展を主導している。

1.中国の水素エネルギー生産量とコスト

 中国は世界最大の水素エネルギー生産国であり、中国石炭工業協会のデータによると、2022年の水素エネルギー生産量は4004万トンに達し、前年比32%増加している。4004万トンという数値は、2021年全世界の水素エネルギー生産量の28%に相当する。

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 企業の数を統計する企査査のデータによると、2022年末現在、中国には水素エネルギー関連企業が2675社存在する。2016年にはわずか168社であったところ、10年もしないうちに15倍の増加となった。

 各地における水素エネルギーの生産コストは、西北部<東北部<華北<西南部<華東<華中<華南の順であるが、近5年のデータを見ると、再生可能水素コストはすべての地域で低下し続けている。中国水素エネルギー連合研究院によると、中国における電解水による水素製造の設備容量は2030年までに100GW以上に拡大される見込みで、アルカリ電解槽の投資コストも2020年の2,000元/KWから2030年には1,500元/KWに低下する予定だとしている。また、再生可能電力コストの削減により、再生可能電力での水素製造コストは13元/kgまで下がる見込みである。

2.中国の水素エネルギーのエコシステム

 中国は水素の生産、貯蔵と輸送、燃料補給と応用において、比較的に優れた水素エネルギーエコシステムを構築している。

 生産量は先ほど触れた通り世界トップである。2022年に300以上の大型再生可能エネルギー水素プロジェクトの立ち上げを表明したが、そのうち72件は現在進行中である。既に完成したプロジェクトによる生産量は20万トン/年以上である。

 電解水による水素製造のコストも着実に低下しており、内モンゴル自治区などでは、太陽光発電や風力発電のコストが低下していることから、電解水による水素製造の高い経済効果が期待されている。

 貯蔵と輸送の面でいえば、中国の水素貯蔵と輸送は、主に20MPa高圧ロングパイプトレーラー高圧ガス輸送モードに基づいており、純粋な水素パイプライン水素と天然ガスパイプラインのドープ水素輸送モードを同時に実行できている。

 燃料補給の面では、50以上の水素補給ステーションが設立され、世界全体の約40%を占め、世界1位となっている。35MPaインテリジェント高速水素補給機と70MPa統合型移動式水素補給ステーションに関する技術で大きな躍進を果たした。

 水素の応用では、国産化機器や設備の競争力が向上されている。水素燃料電池車の数は1万台を超え、世界最大の水素燃料電池商用車の生産及び応用市場となっている。

 産業面では、水素ベースの化学工業が一定規模に成長しており、水素冶金技術の実証プロジェクトも始まっている。なお、発電とコージェネレーションにおける主要技術は検証中である。

3.第14次5カ年計画中の水素エネルギー関連目標

① 水素エネルギーの生産、貯蔵、輸送、燃料補給プロセスにおける2025年までの目標

  1)再生可能エネルギー水素生産量10万~20万トン/年を目指す。
2)気体輸送用水素ボンベ50MPaを突破する。
3)二酸化炭素排出100万~200万トン削減を目指す。

② 水素転換と燃料電池における2025年までの目標

  1)高性能、長寿命の固体高分子形燃料電池技術を研究する。
2)固体酸化物形燃料電池の核心技術を研究する。
3)溶融炭酸塩形燃料電池の積層、出力増幅における主要技術での突破を目指す。
4)100キロワットの溶融炭酸塩形燃料電池の総合設計技術をマスターする。

➂ 水素の応用における2025年までの目標

 2025年までに、国内の燃料電池自動車数5万台を目指す。

 上記は中央政府による目標であるが、中国水素エネルギー連盟によると、各省・地級市が発表した水素エネルギーに関わる第14次5カ年計画の目標の合計は、国家14次5カ年計画の目標をはるかに上回り、順調に進む場合、1)生産額:2025年に1兆元、2035年に1.9兆元、2)燃料自動車生産台数:2025年に11.5万台、2035年に42.5万台、3)水素ステーションの数:2025年に1,168カ所、2035年に2,309カ所になるとした。

4.2023年の水素関連ファンディングプロジェクト

 科学技術部が公開した2023年度の水素エネルギー関連国家重点研究開発計画には、
①水素エネルギーのグリーン生産と大規模移送・貯蔵システム
②水素エネルギーの安全貯蔵と迅速な送配電システム
➂水素エネルギーの便利かつ高効率の発電システム
に関する19のプロジェクトが立ちあがり、3.4億元の支援を受けるようになった。1つのプロジェクトにおける予算は最大500万元である。

5.水素エネルギー関連技術での突破

 近年技術方面の突破は、主に2つで、一つは電解水から水素を製造する技術で、もう一つは水素燃料電池における技術である。一部の性能パラメーターは既に国際先進レベルに達し、大幅のコスト削減を実現でき、外国企業の独占を打ち破った。

 電解水から水素製造技術は、徐々に成熟段階に向かっているが、アルカリ性電解水技術と設備は既に国産化しているだけでなく、大規模の水素製造応用も実現している。国内ではメガワットの水素製造応用も実現したと知られている。

 プロトン交換膜電解水素技術もある程度発展し、以前に比べ、触媒と膜電極のコストが削減された。また、ヘリウム冷凍サイクル設備のコア技術もマスターでき、液体水素貯蔵は国産化を実現している。

6.これからの課題

 コストダウンが続いているとはいえ、水素エネルギー産業チェーンの全体的なコストはまだ高いほうである。また、グリーン水素の大規模調製技術は更なる研究が必要である。高圧水素貯蔵・輸送技術は先進国に比べれば、まだ距離があると言える。

 液体水素貯蔵の国産化は実現したものの、主要部品は依然として輸入に依存しており、燃料電池の主要材料(触媒、プロトン交換膜、カーボンペーパーなど)もほぼ先進国が独占している。膜電極、バイポーラプレート、空気圧縮機、水素循環ポンプは、国際競争力を持つようになるまで、まだ時間がかかる見込みである。

 

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