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【24-23】中国科学院の研究者ら、リチウムイオン電池の安全性を高める新型隔膜を開発

頡満斌(科技日報記者) 2024年03月12日

 中国科学院近代物理研究所はこのほど、同研究所材料センターの研究者が先進エネルギー科学・技術広東省実験室と協力し、重イオン照射技術と化学エッチング工程を利用し、リチウムイオン電池に用いる耐熱ポリエチレンテレフタレート(PET)隔膜の開発に成功したと明らかにした。関連論文は国際的学術誌「ACS Applied Materials & Interfaces」に掲載された。

 同センターの姚会軍研究員は「隔膜はリチウムイオン電池の重要部品の一つとして、正極と負極を隔離して電池のショートを防ぎ、リチウムイオンの自由な行き来に通路を提供する重要な役割を担っている。その性能は電池の安全性に重要な影響を与える。現在は一般的に、ポリオレフィン隔膜に耐熱材料をコーティングするなどの方法によって隔膜の耐熱性能を高め、電池の安全性を高めるようにしている」と説明した。

 研究に参加した東江実験室重イオン微細孔膜重要技術チーム責任者の段敬来氏は「しかし、この方法はポリオレフィン隔膜の熱安定性が悪いことを根本的に変えられない。そのため、耐熱性能を持つ新型リチウムイオン電池の隔膜および工程の開発が、リチウムイオン電池の安全性を高める重要な道筋と手段になっている」と語った。

 研究者は蘭州重イオン研究装置(HIRFL)を利用し、重イオン照射技術と化学エッチング工程を結びつけ、PET隔膜を基材としてPET耐熱性リチウムイオン電池隔膜の開発に成功した。この隔膜は商用ポリオレフィン隔膜と比べ、より均一な孔径の分布と、より優れた電解液の濡れ性を持つだけでなく、優れた耐熱性を見せている。電池テスト結果から、このPET隔膜はリチウムイオン移行数(0.59)がより多く、優れた常温・高温循環性能を持つことが分かった。

 中国科学院近代物理研究所材料センター長を務める劉傑研究員は「この成果は重イオン照射技術を新エネルギー分野に応用し、新型耐熱電池隔膜の開発に新たなアプローチを提供しており、新エネルギー技術のイノベーションや産業高度化の促進などの面で重要な意義を持つ」と説明した。


※本稿は、科技日報「新型隔膜提升锂离子电池安全性」(2024年1月11日付6面)を科技日報の許諾を得て日本語訳/転載したものである。

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近代物理研究所(中国科学院傘下の研究所)

 

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